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読書ノート 『シャーロック・ホームズの凱旋』
名探偵から迷探偵へ、スランプに悩み、世間からのバッシングを受けて塞ぎこむホームズ。事件を解決できない探偵が挑む謎は「自身のスランプ」だった。
事件に興味がなくだらだらとしているホームズ。なんとしても復帰してほしいワトソン。見守るハドソン夫人。
舞台はロンドンによく似た街、ヴィクトリア朝京都。
第一章 ジェイムズ・モリアーティの彷徨
類は友をよぶ。スランプに陥った人たちが集まってくる。盛大なキズの舐め合いがはじまる。
第二章 アイリーン・アドラーの挑戦
新たにあらわれた探偵アドラーが、まったくやる気のないホームズへ勝負を挑む。その胸のうちには秘めた思いがあった。
第三章 レイチェル・マスグレーヴの失踪
全てのはじまりとなる運命の分岐点。12年前に起きた失踪事件の真相とは。
第四章 メアリ・モースタンの決意
それぞれの思いが交錯する。ひとりホームズは最後の謎へと挑む。
第五章 シャーロック・ホームズの凱旋
ホームズを追いかけたワトソン。名コンビは謎を解くことができるのか。
エピローグ
「ワトソンなくして、ホームズなし」結末はこれしか語れない。
オマージュのような、パスティーシュのような。原作を読んだことがなくても楽しめるようになっているのは、さすがの森見先生です。
森見先生の作品ということで、推理小説ではなくファンタジー小説になっているのでご注意を。
- 学び -
スランプの正体ってなんでしょうね。過去に囚われた意識と言われればそう思うし、才能そのものが勘違いだったと言われたら、そう思うかもしれません。
ストイックで頑固な人間ほどスランプに落ちやすいと言われます。まさにシャーロック・ホームズの性格にあてはまります。
自分の能力を大きく超える何かと対峙したとき、挫折し無力感に支配される。これは成長の壁。どれほど苦しんだか、どうやってのり越えたか、正面から壊したか、時間をかけて迂回したかで変わってくるものです。
多大なストレスを感じている状況は、未来の分岐点といってもよい。分岐点は立ち止まって考えるほうがいいです。
焦ってはいけない。解釈を間違えたらいけない。他者に決められて、選ばされた未来で満足してはいけないのです。
じぶんの人生は、じぶんだけが描く物語。
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「天から与えられた才能はどこへ消えた?」
舞台はヴィクトリア朝京都。
洛中洛外に名を轟かせた名探偵ホームズが……まさかの大スランプ!?
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この手記は脱出不可能の迷宮と化した舞台裏からの報告書である。
いつの間にか迷いこんだその舞台裏において、私たちはかつて経験したことのない「非探偵小説的な冒険」を強いられることになったわけだが、世の人々がその冒険について知ることはなかった。スランプに陥ってからというもの、シャーロック・ホームズは世間的には死んだも同然であり、それはこの私、ジョン・H・ワトソンにしても同様だったからである。
シャーロック・ホームズの沈黙は、ジョン・H・ワトソンの沈黙でもあった。
-----(本文より)