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陽炎
じんわりくたびれて 途切れがちに捲れ上がったゴムの踵を
切り刻む乾いて黒ずんだ砂利道から 舞い上がる紅い砂埃
深く呼吸して閉じた目蓋の奥へ 紛れ込んだ薄ら笑いの影法師
木陰から零れ落ちる蝉の声で 額拭う手の甲に滲んだ紅い汗
染まる灯りを浮かせて夕暮れの橙が 沈む夜の静寂へと咽び泣く
粗い隙間を縫って響く木霊に混じる 微かな羽音の朽ちる果てに
削り落とされた脳髄が 痺れたままの背筋へと伝う指先の爪で
絡みつく漆黒の情炎に抱きすくめられ その側へと気が付けば
見上げる闇夜に紅い月ひとつ
(晩夏の夕刻、小城にて)
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