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京大生の本棚 part1~湊かなえさん「カケラ」~
テスト前あるある、他の活動へのモチベーションが上がる。
ということで、しばらく凍結していたnoteを復活させたいと思います。
我ながら私は多趣味なほうですが、その中でも歴が長い物の一つに「読書」があります。
のべーっとYouTubeを見ていたら、おすすめの小説を紹介されているYouTuberさんを見つけて、これまたのべーっとショートを見ていました。
そして、面白そうな作品を見つけました。それが今回ご紹介する作品です。
湊かなえさんの「カケラ」。
「イヤミス」として有名な湊さんの作品ですが、この作品はミステリーというよりも、「考えさせられる小説」というのが近いです。文章中に難しい言葉が出てくるわけでもないのに、考えずにはいられません。
ここから本格的な感想に入るため、どうしてもネタバレに掠ってしまうと思います。「自分で読んでからにしたい!」と言う方は、ここで閉じて下さいね。
1.インタビュー形式の文章
物語は、田舎町で一人の女子高生が大量のドーナツに囲まれて自殺したというちょっと都市伝説のような(物語上では)本当の話について、美人美容整形医師を相手に様々な登場人物たちが喋り倒す形式で書かれています。
これは湊さんご本人もインタビューでおっしゃっているのですが、インタビューの相手が徐々に本人に近づいていくように構成されています。
最初の女性は、自殺した少女の母親の同級生。少女の自殺については「噂話」という程度で認識しています。
次の女性は、自殺した少女の同級生。
次に出てくるのは親子です。父親は少女の母親の同級生で、息子は少女の同級生。
その次は、少女の中学時代の担任。
その次は、少女の高校時代の担任。
関係者のオオトリを飾るのは、少女の母…というように、じわじわと確信に近づいていきます。
2.キースイーツ(?)
この小説には、あちらこちらに「ドーナツ🍩」が出てきます。思い出の象徴として。あるいは、この小説そのものがドーナツのような構造をしていると言えるかもしれません。命をたった少女本人が何を思っていたかは、最後の最後までわからないのです。
こういうのを「不在の在」というらしいのですが、まさにそれです。本人をなかなか登場させず、周りの人の話を記す。でもそれによってますます本人の存在感が際立つ…。有吉佐和子の「悪女について」と似たような技法だと思います。直近だと、「推しの子」のアイのようなものでしょうか。
3.飯テロ
すみませんちょっとふざけました。でもそうなのです。
これ、前述の通り美人医師が周りの人の話を聞いて、それを文面に起こしている(医師本人が相手の話にどう相槌を打っているかは記されていない)形なのですが、
高級そうな中華料理屋さんでご飯を食べながら話している、というケースがちょこちょこ出てきます。
またこれが美味しそうなのです。
酢豚、胡麻団子、小籠包、天津飯…。
名前を聞くだけでお目目がキラキラしてきます。味の描写も出てくるので、深夜に読んではいけませんね。
この小説を読んでからずっと、「美味しい中華を食べにいきたい…」と思い続けています。試験が終わったら是非とも行きたい。
4.「美しさ」=「幸せ」なのか?
最後は、これで締めましょう。
「美しさ」「幸せ」とどちらにもカッコを付けた意味は、読んだらお分かりいただけると思います。
多様性の時代、美しさの定義もまさに「200色」くらいになりつつありますが、「痩せ型」「二重瞼でぱっちりした目」「高く通った鼻筋」というステレオタイプな美人像が完全に無くなったかと言えばそうではないでしょう。
では、「痩せていて、目がぱっちりしていて(以下略)」となることは、本当に幸せなのか?美しいとはどういうことなのか?
相手のためを思っているようで、実は相手に押し付けて不幸を招いているのではないか?
私は他人の外見に対してとやかく言わないようにかなり心がけていますが、無意識のうちに傷つけているかもしれない。自分自身も縛られているかもしれない。
…などなど、読み終わってから考察がつきません。現実逃避に時々パラパラと見返しています。
人間というのは「美」というものへの執着から逃げることができない生き物なのかもしれません。
その証拠に、1000年も前の平安時代にも「髪が豊かで長い」「色が白い」など、「美人の条件」のようなものが存在したのですから。もはや遺伝子レベルと言ってもいい。
どんな美の基準を持っている人でも、この小説を読んで共感も反感も何も持たない人はいないでしょう。是非ご一読を!
この本を読んだ感想が冷めないうちにと思って一気に書き上げたため、文が乱れているかと思いますが、ご容赦ください。
最後までお読みくださり、ありがとうございました!