2024年は自分再構築の年だった
2024年は考えた末、学びの年にした。本業のIT関連事業、副業の宿泊業、そして新事業のペット事業について、自分が今知りたいこと、深く学びたいことを追求した。そんなことやってる暇があればもっと仕事しろ!稼げ!という思いもあって、勉強していると罪悪感みたいなものもあったが、2024年は自分を再構築すべく時間を作っては勉強しようと決めた。
1. 宿泊業のための資格や手続き
(1)総合旅行業務取扱管理者(国家資格)
受験費用:6,500円
難易度:★★★★★
旅行業界唯一の国家資格「旅行業務取扱管理者」には、国内と総合(海外)の2種類ある。今年は国内の方を受験するつもりで、テキストと問題集を購入していた。ところが、7月上旬に世界遺産検定の受験に集中していたら国内の願書受付が締め切られてしまった!総合の方は、国内の1ヶ月遅れなのでいきなり総合を受験することにした。去年の合格率は、なんと7.9%という高すぎる壁。どこまでできるかとにかく証明写真を貼った願書を郵送した。
国内旅行業取扱管理者は1〜3、総合旅行業務取扱管理者は1〜4を受験する。つまり、1〜3は共通科目だ。
1. 旅行業法令(100点満点)
2. 約款(100点満点)
3. 国内旅行実務(100点満点)
4. 海外旅行実務(200点満点)
12/12に合格発表に私の受験番号は見つからなかった。それは受験後の自己採点でわかっていた。合格ラインに達している科目は翌年に限り科目受験免除になるので、その結果を受けて来年の再受験を考えようと思う。
宿泊関連の知識が得られたのは大きかった。モデル宿泊約款や国内旅行実務の宿泊料金など、宿を経営しながら疑問に思っていた以下のことがはっきり理解できた。
MARBLE B&Bの朝食はアメリカンブレックファストじゃなくてコンチネンタルブレックファスト
宿泊施設が旅行業または旅行業者代理業の登録を受けなくても販売可能な旅行プランについて
宿泊契約の申込と成立のタイミング
宿泊客の契約解除権、無断不泊の対応
契約締結の拒否事由
客室の時間外利用の追加料金の目安
たとえば、宿泊業者がサッカー観戦チケットと宿泊のセットプランを販売することは、旅行業の許可が必要ない。花火大会の有料席と宿泊セットプランも問題ない。それならば、来年はセットプランの販売にも力を入れてみようと思えたのは、この資格の勉強をしたからこそ得られた知識だった。
総合旅行業務取扱管理者は、人生で一番勉強したのではないかと思うほど勉強し、過去問は直近6年分何度も繰り返した。国内と海外の観光資源は、先に受験した世界遺産検定が役に立った。力尽きた。
(2)世界遺産検定2級(民間資格)
受験費用:7,300円
難易度:★★★★☆
7月に受験して合格した。一度目は軽い気持ちで受験して不合格だったので、今回は必ず合格したかった。受験料も7,300円と安くはない。2級は日本の全遺産の他、約1,200ある世界遺産のうち主要な300程度が出題される。
これまで世界中を旅して、世界遺産もたくさん訪れてきたので、その学び直しができた。
次は1級を目指したいところだが、公式テキストが上中下の3冊で約1万円、受験料は11,800円、そして出題範囲が約1,200ある世界遺産すべてなので、考えただけでも気が滅入る。受験時間は90分で90問、7割正解すれば合格だ。
分厚いテキスト3冊分勉強したところで、トリビアみたいな問題が出たりするし、覚えた100の知識からひとつも出題されないこともある。2級では世界のル・コルビュジエ建築を勉強したが、たとえば1級になると「以下の日本人建築家でコルビュジエの弟子じゃないのはどれか」という出題になってくるので、日本人建築家について幅広く知っていないと解答できない。2級でさえ勉強しながら「この学習になんの意味があるのだろう?」とモチベーションが途切れそうになることが何度となくあった。いつかは1級を取りたいと思うものの、2級で満足してしまっている。
今年、MARBLE B&Bにスペインのグラナダからのゲストが来て、チェックインする際に「アルハンブラ宮殿のあるところですね」くらいのことが出てこなかった。2級に合格した今なら言える。
世界遺産検定については、MARBLE B&Bのウェブサイトにも記事を書いた。
(3)食品営業許可証(許可証の更新)
更新費用:28,300円
難易度:☆☆☆☆☆
4部屋だけの小さな宿なので、素泊まりにすればこの許可証は必要ないのだが、MARBLE B&B(Bed & Breakfast)なので朝食付きにはこだわっている。朝食を用意するからにはこの食品営業許可証と食品衛生責任者が必要になる。
朝食といっても朝から何か料理するわけではなく、焼きたてのパンを購入してキッチンに用意しておく程度なので、許可証は本来必要ない。ただし、パブリックビューイングなど、みんなで食事しながらサッカー観戦するような企画は許可証がいる。細かくいえば、朝食のパンをおにぎりにして欲しいというリクエストに答える場合は許可証がいるし、バナナの皮を剥いてあげるのも許可証がいる。じゃあ部活の応援とか被災地におにぎりを差し入れてる人たちは許可証を取っているのか、という話しにもなるが、とにかく面倒は避けたいし、今後の可能性を考慮して許可証は更新しておいた。
朝食のコストは約500円。朝食なしの素泊まりプランにすれば、宿泊予約は今よりずっと増えるだろう。ただ、低価格の宿にすれば問題の多いゲストが確実に増える。これはコロナ禍のGO TOトラベルで身をもって知った。低価格に設定してターゲットとしていない客層が宿泊すると、宿は著しく汚れるし、壊れるし、掃除しても臭いが取れないなど、とにかく滞在中やチェックアウト後の問題が多い。低価格にすればするほど、身の危険を感じることも多くなる。
朝食付きの価格で販売することで、予約数は確実に減るが、「お金をもらっても泊めたくない」というゲストはやはり未然に防ぎたいという思いがあるので、今後も素泊まりプランの販売は考えていない。今後も「私自信が泊まりたい朝食付きの宿」を追求する。
(4)食品衛生実務講習会(食品衛生責任者向けの講習)
受験費用:3,000円
難易度:☆☆☆☆☆
食品衛生責任者の実務講習(eラーニング)を受講。市内の文化センターでも開催されたが、自宅で好きな時間に2時間の動画視聴ができるeラーニングを受講。
この講習会を受講することで、アップデートされた最新の衛生事情や法律など、以下の知識を学ぶことができる。
食品衛生責任者、食中毒の発生状況について
病因物質、食中毒予防の3原則について
HACCPに沿った衛生管理、一般的衛生管理について
HACCPに基づく衛生管理、HACCPの考え方を取り入れた衛生管理について
事故発生時の対応、許可・届出、食品表示について
茨城県からの食品衛生に関する情報
この講習会は地元の食品衛生協会から案内が届く。それをスルーしていると飲食店などの営業許可を更新できなくなることもあるようなので、3,000円払って受講しておく。
(5)いばらき観光マイスター
受験費用:無料
難易度:★☆☆☆☆
茨城県が年に一度開催している観光関連の資格で、この資格に合格すると、いばらき観光マイスターがいる宿一覧にも掲載されるとあって、受験することにした。
直近の過去問5年分をプリントし、全問正解できるくらい繰り返した。無料の資格とはいえ、茨城県内の全市町村についてまとめたガイドブックを参考によく勉強した。試験は総合旅行業務取扱管理者試験と同日だったので、その翌日にあたる月曜の予備日に受験した。正直、旅行業の試験ですべて出し切ったので、この試験は受験しなくてもいいかなと思ったが、東京の受験会場から帰宅したその日も遅い時間まで勉強して試験に挑んだ。
試験は簡単な4択で、試験というよりはクイズのようだった。これは確実に合格したと自信を持って試験会場を退室したが、まさかの不合格だった!ちょっと信じられない。
試験会場となった大会議室には数百人の受験者がいたと思う。前日の受験者と合わせてもかなりの人が受験していて、合格者は105名だった。問題用紙は持ち帰り不可なので自己採点もできず、合格ラインも非公開、為す術なし。何時間も勉強したことが無意味にすら思えてしまった。茨城県の観光知識をこれだけ勉強して落とされると、またがんばろうとは思えない。
たとえば、笠間の陶炎祭の読み仮名を選ぶ問題が出題された。正解は陶炎祭と書いて「ひまつり」。茨城県常総市のマスコットキャラクターの問題もあった。正解は「千姫ちゃま」。こんな感じなので、来年の受験はちょっと考えたい。
2. IT系の資格など
(1)ITパスポート(国家資格)
受験費用:7,500円
難易度:★★★★☆
20年以上に渡ってIT業界でやってきたので、資格というものは必要がなかった。大学時代の外注、アルバイト、WEB制作会社、フリーランスを経て有限会社を設立したのは2004年。ただひたすらこの業界で実務経験を積んできたので、自身もプライドもあった。
ところが、履歴書や20年分のポートフォリオを提出しても、まったく役に立たないという経験をした。渾身のポートフォリオなど見てももらえなかった。昨今の日本の就活事情では、資格も数字も持っていないとそこから先には進めないと知った。これは衝撃的で痛恨の経験だった。
日本の就職活動って一体何を見ているのだろう。資格とTOEICの点数でふるいにかけられ人間しか、人として見てくれない。まず人を見るアメリカなど海外とはまるで違う。
正直くだらないなと思いながらも起業して20周年の節目だったこともあり、ITパスポートを取得した。今さら資格なんて何の意味があるのだろうと思ったが、ストラテジ系(経営全般)」「マネジメント系(IT管理)」「テクノロジ系(IT技術)」の3科目は、すべて自分がやってきたことそのものだったので、学び直す意味ではとても有意義だった。
(2)リスキリング宣言
費用:無料
難易度:☆☆☆☆☆
「いばらきリスキリングプロジェクト」という「スキル向上を繰り返す」「学び直す」というリスキリングに取り組む企業を募集していることを知って、ちょうとITパスポートを取得した年だったこともあり登録した。
(3)D&I検定
費用:8,800円 無料
難易度:★☆☆☆☆
ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)とは、ダイバーシティ(多様性)とインクルージョン(受容性)を合わせた言葉で、多様な人材を受け入れ、活かすことを指している。ITパスポートの試験でもダイバーシティやアンコンシャス・バイアスといった言葉には接していたので、その延長で受験することにした。
D&I検定は2023年8月から始まった新しい教育プログラムで、当初は企業単位で受験する検定だったようだ。個人受験ができるようになったのは2024年になってから。受験料は8,800円(税込)だが、茨城県を通して受験することで無料となる。
D&I検定3級とD&I検定3級(茨城県版)の内容は同様なので、12月現在茨城県版で受講し、満点合格。
3. 動物系の資格など
(1)ペットシッター士(民間資格)
費用:71,500円
難易度:★☆☆☆☆
猫2匹と暮らすようになり、ペットシッターさんが不足している事実に気付いた。信頼しておまかせできるペットシッターさんが身近にいないので、時々友人に無理を言ってお願いしたり、東京に住む弟に来てもらったりした。都市部には選べるほどのペットシッターさんがいるが、田舎にはそういったサービスが極めて少ない。少ないというより、ないに等しい。
私のように困っている方は恐らくたくさんいるのだろう。それならば、私が信頼されるキャットシッターになろうと、ペットシッター士の資格を取得した。ビジネスを始める上で必要な契約事項、気を付けることなど、実務的なことも学ぶことができた。
日本の少子化は大きな問題になっているが、ペットの数は増加している。そして、ここ数年は犬よりも猫の飼育数が上回っている。しかし、環境の変化が大きなストレスになる猫にとって、いざというときに役に立つ訪問型キャットシッターサービスが極めて少ない。現在、本業のIT事業と副業の宿屋もあるので、さらに新ビジネスをやるべきかは随分悩んだ。この地域で困っている方たちの役に立てるかどうかも、やってみなければわからない。やってみないとわからないことは一度やってみる。やりたいことはやる。やりたくないことはやらない。やってダメならやめる。
しかし、この認定資格を取得したからといってすぐキャットシッターができるわけではない。1年間の動物飼養記録を作成し、県の動物愛護センターに資格認定証と一緒に届け出て、動物取扱責任者の登録をしなければならない。その上で、第一種動物取扱業の登録をして、ようやく開業できる。
キャットシッターという留守中の猫のお世話をする仕事は極めて特殊で、そこには飼い主との間に信頼関係がなければ、家の鍵を預けることもできないし、大事なペット=家族を任せることはできない。法律が改正され、第一種動物取扱業の登録も簡単ではなくなっている。命を守る仕事は、誰にでも簡単にできてはいけない仕事なのだと思う。
(2)愛玩動物飼養管理士(民間資格)
受験費用:32,000円(合格者の登録別途8,000円)
難易度:★★★☆☆
ペット業界で最も歴史があり、受験者数も多い資格だが、資料請求から受験まで1年がかりだった。その点でいえば、前述のペットシッター士は短期間で受験できる。とはいえ、やはり業界のスタンダードともいえる愛玩動物飼養管理士も受験することにした。
11月に受験し、5日後に合格発表があった。合格率80%とはいえ、発表まではため息ばかりの日々だった。
世界各国の動物愛護の取り組み、日本の動物愛護についても知ることができた。動物の体のしくみはもちろん、歴史や医療、倫理、法律、福祉なども幅広く学習できた。キャットシッターを始めるにあたって、これらを学習できたことは恐らく役立つことが多々あるかと思う。
(3)動物取扱責任者
費用:0円
難易度:☆☆☆☆☆
認定資格を取得し、1年間の飼養記録が揃ったので、茨城県動物指導センターで動物取扱責任者の登録をした。この飼養記録を開始するときに、一度電話をかけて「今日から記録します」と宣言する。そこから1年の間にペット関連資格を2つ取得した。
(4)第一種動物取扱業
費用:15,000円
難易度:★☆☆☆☆
動物取扱責任者と同時に、第一種種動物取扱業の登録をした。第一種動物取扱業の業種は、販売、保管、貸出し、訓練、 展示、競りあっせん、譲受飼養の7種類の区分がある。キャットシッターは「保管」にあたる。
12/2に申請した結果が12/10に届いた。これでようやくキャットシッター開業となる。開業まで2つの資格取得に加えて、猫の飼養記録1年分が揃うまで、約1年かかった。
3. その他資格・講座
(1)認知症サポーター講座
費用:無料
難易度:☆☆☆☆☆
付き合いのある身近な方たちが皆高齢者で、わかりやすく認知症が進んでいるのを目にしている。同じことを繰り返し話すのをイライラして聞いている。人の話しも年々上の空で聞いていない。しかし、自分もいずれはそうなるし、同じ話を繰り返したり、今日食べたものが思い出せなかったりする。
認知症についての基本的な知識を身につけておこうと、市役所の介護長寿化に電話をして、今年度の講座の日程を確認して受講した。市内の病院から先生が来てくださって講義してくれたり、市の職員さんが認知症の高齢者を装い、それにどう対処するかといった実技もあった。参加者の中には、講師の話を遮って自分の言いたいことを言いたいタイミングで話し続ける方がいて、ああ、この人は認知症なのだなと思ったりもした。
認知症についてじっくり考えるいい機会だった。
2024年のおわりに
若い頃には気付かなかった「自分が学びたいことを学べる贅沢さ」を実感している。視力も弱ってテキストの文字が見づらくなってきたが、眼科を転々として遠近両用メガネに変えてからはテキストもくっきり、はっきり、何時間勉強しても疲れなくなった。新しいメガネを手に入れてからは「まだ勉強できる!」と思ってうれしかった。
年と共に脳の衰えも実感する。若い頃はスポンジのように新しい知識をぐんぐん吸収していたが、今はテキストの同じ箇所を何度も何度も読み込んでようやく頭に入っていくという感じ。特に最も困難だった総合旅行業務取扱管理者試験は、知識を定着させるためにテキストを何度も読み込み、ノートを書きまくり、フリクションのインクがなくなっては替え、新しいノートを買い足し、夢中で勉強に没頭した。人生で一番勉強したかもしれない。
すべて独学だったので、自宅学習に煮詰まるとコメダに出かけた。コメダには大変お世話になったのでコメダ株を買い、売却し、その利益でまたコーヒーチケットを買った。12月に株主優待券が届いたのでまたコメダに行こう。
いつしか勉強することが習慣化し、「今日は勉強してないな」と思うと、なんとなく「歯みがきしてないな」という感覚に似た気持ち悪さがあった。
何の役にも立たないかもしれない勉強の日々は、私の財産だ。