Crystal Snow #1




──4月。
この季節になると
つい、空を見上げてしまう。

北海道は、まだ随分と寒くて。
ようやく雪はとけたものの
中旬までは粉雪が降る。

強めの風が吹いては舞い上がり
陽射しを受けてキラキラと光るそれは
アスファルトに落ちて
一瞬で消えてしまう。

今年も私はまた
その様を
ただじっと見上げていた。

『ママぁー!
早く行こうよー!』
9才になったばかりの娘が
大きく手を振りながら私を呼ぶ。
『あ、ごめんね、今行くよー!』
2才の息子を乗せたベビーカーを押しながら
小走りで近づくと
『ママは鈍臭いんだから、あんま上ばっか見て歩くと転ぶぞ』と
夫が笑った。

どこから見ても
幸せそうな家族の姿──

『ちょっと〜!鈍臭いって酷くない?』
私が不貞腐れたような顔で文句を言えば
夫も、子供たちも笑い出す。

温かな空気。
私の居場所。

私は今、幸せなんだ。

自分に言い聞かせるように小さく呟いて
また、視線を宙に向けた。

舞い上がる雪が光るたびに
あなたの笑顔を思いだす。

私は今、幸せだから。
だから、思い出してはいけない。
あなたを傷つけてまで
手に入れた幸せだから。
思い出す権利なんかない。
許されるわけもない。

わかっているけれど
最後にあなたの悲しそうな笑顔を見た日と同じ
この季節になると
あなたを思い出そうとして
無意識に上を向いてしまう。

まるで
あなたはそこにいるようで。
それ程までに鮮明に思い出せるのに
あれからもう
10年が経とうとしている。

ふいに、
すぐそばのカフェのドアが開き
隙間から漏れ聞こえる曲に娘が声をあげた。
『ママ、これBTSの曲だよ!
今度ね、体育の授業でコレ踊るんだよ!』
楽しそうにピョンピョン跳ねる姿に
『お♪ママにも見せてね!』と返す。

アップテンポの曲に合わせて
メンバーが軽快に踊るこの曲は
世界的に大ヒットして
去年はどこに行っても耳にした。

『よかった...』

私の消え入りそうな声に
娘が不思議そうな顔をしたので
慌てて『好きな曲でよかったね!』と笑いかけ
そっと頭を撫でる。

そう。
よかった。
ジンくん...あなたが
あなたが追いかけていた夢が叶って
今こうして、
BTSとして世界中で愛されて
本当に
本当に、よかったよ...

─────────

#BTS #バンタン #防弾少年団 #妄想 #妄想小説 #妄想彼氏 #JIN #ジン #ソクジン #ジンで妄想

いいなと思ったら応援しよう!