Crystal Snow #3

10年前。
私はソウルにいた。

服飾の高等専門学校を卒業し
就職したブランドの会社が
新入社員を海外支社で勉強させる方針だったからだ。
面接時にその話は聞いていたから
長期にわたって
日本を離れる覚悟はしていたつもりだったけれど
現実はなかなかそう
簡単にはいかないもので。

ある程度、日本語が通じるとはいえ
やはり
仕事の話になると
専門用語が増えるなど
言葉が通じない事も多々あり
悔しい思いをしたり
不安になる事の連続に
心が疲弊して行く。


あの頃
私の折れそうな気持ちを支えてくれたのは
一緒にソウル支社に出向したハルという男性社員だった。
同い年、同期入社、ということもあってか
すぐに仲良くなり
勤務時間以外も
2人で過ごすことが増えて行った。


当たり前のように手を繋ぎ

当たり前のようにキスをして

当たり前のように並んで朝を迎える。


ハルと過ごす事で
孤独や不安は
愛情という名前の皮をかぶって
なりを潜めていた。
そんな関係が不毛な事は
自分でもよくわかっていたけれど
今、ハルを手放してしまえば
皮をかぶっておとなしくしていたはずの感情に押し潰されて
デザイナーになる夢を諦めてしまいそうだった。


どちらかといえば
物静かで
余計な事は喋らず
たくさんの人と時間を共有するより
落ち着いて読書をする方が好きなハルは
私と何度、肌を重ねても
好きだとか
愛してるとかを言わない。
だから
ハルもきっと
愛なんかじゃなくて
寂しさを埋める為に私といるんだ、と
私は
勝手に思い込んでいた。



今更
後悔しても遅いし
『あの時あぁしていれば』を
何度繰り返しても
きっと結末は変わらない。
けれど
もっとハルの気持ちをきちんと聞いていたら
違う結末になっていたのかな...

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