ブライダル業界特化のVertical SaaS。シリーズAに辿りつき、改めての決意。

副業的起業から始め、中小企業→スタートアップ化をし、今回4回目の資金調達を実施させていただきました。株式会社TAIANは、アツさとあたたかさで溢れる社会を実現するをビジョンに掲げ、現在はブライダル業界に特化したSaaS「Oiwaii(オイワイー)」を中心とした事業を展開しております。
インターン生や業務委託メンバーもいれると40名ほどのスタートアップです。(社員+フルコミットに近いメンバーで25名ほど)
この度のシリーズAの資金調達活動を経て、その時々の考えをまとめておきたく筆を取ることにいたしました。



シリーズAの調達活動

約6億円の出資が決定

今回TAIANは、シリーズAラウンドで6億円の出資をしていただけることとなりました。ファンドの皆様、そしてご担当の皆様に感謝しかありません。

<新規ご参画>
・グロービス・キャピタル・パートナーズ株式会社 工藤さん
・東京海上ホールディングス株式会社 岡本さん
・キャナルベンチャーズ株式会社 七里さん
・エンジェル投資 2名


<3回目のご出資>
・株式会社ジェネシア・ベンチャーズ 水谷さん
・ANRI 中路さん

<2回目のご出資>
・三菱UFJキャピタル株式会社 西尾さん
・静岡キャピタル株式会社 稲葉さん


今回からリードVCとしてご担当いただくGCP工藤さんは、ご出資に向けて約1年もの間、何度も議論と検討を重ねてくださいました。
そして、今までリードVCとして担当してくださっていたジェネシア・ベンチャーズさんは、ファンド全体として私を起業家から経営者へ導いてくださりました。担当の水谷さんは、特に二度目の投資以降ほぼ毎日じゃないか?というくらい連絡をとらせていただき、水谷さんのご支援のおかげで人生が最高潮になったと言っても過言ではないほど。
各VCの皆さんとのやりとりについては、感謝をし始めるとキリがなく、こちらはまた別途書こうと思います。

出資に至るまでの議論

もしこのnoteを読んでくださっているのが、スタートアップの経営者や投資家の方でしたら、まず「ブライダル業界向けのSaaSでどのように戦っていくのか?」と、思ったのではないでしょうか? 
そう、調達活動で我々は以下の論点に向き合うことになりました。

1. 婚礼業界というマーケットについての議論
2. SaaSという業態に対する市場の冷え込み
3. Vertical SaaSとしての戦い方
1.については、これまでの調達活動でも同様の議論がなされており、今回4回目の調達ということで、より深く考えた上での解をお伝えできたと思います。
2.が想像以上のマイナス評価という印象。
3.に関してはディスカッションメインで、活動をしながら習得していきました。

1. 婚礼業界というマーケットについての議論

結婚をする人、結婚式を挙げる人、式場を運営する事業者のそれぞれが微減しているマーケット。毎回のことなのでしょうがないとは思っていますが、今回も風当たりは強かったです。
市場規模は2兆円なので、市場自体は小さくないが、「成長しているか否か」でいうと、否と見られる。
この反応に関しては、正直「またか」という感じでしたので自信を持って答えられました。
・コロナパンデミックを経て、利益構造の変化、人手不足の進行、業務オペレーションの変革が求められることになったブライダル業界にとってDXは急務であり、ニーズが高い。(タイミング)
・日本人口は年々減少傾向、国内市場を想定しているビジネスはどれをとってもそこまで伸びていない、もしくは伸び悩む状況下にある。(社会的要因)
・ブライダル市場成長率は残念ながらマイナスのため、戦略的な起業家の参入が少ない。さらに、特定の年代や経験者以外では業界課題や問題点に気づきにくいという特異性のある領域。(事業の特徴)
・エンジニアを中心とした組織構成で、アジャイルでモダンな開発に強みを持つ我々は、スタートアップならではのスピード感を生かして業界へ参入していける。(組織の強み)
・実際に業界から新星企業として期待をいただいている。(実績とお客様の声)
これらを実数値も踏まえてお伝えすることで、マーケット不安を払拭していただくことができました。

2. SaaSという業態に対する市場の冷え込み

SaaSの上場後の株価の変動も見えてきた中、SaaSの利益率が疑問視され、流行が過ぎてしまったことを痛感しました。
「SaaSかぁ…」という反応をもらい、流行りってなんだよ…と思わなかったとは言えませんが(笑)、調達活動を1ヶ月も続けると意識改革が自分の中で行われ、上場を目指すということ=市場の流行廃りにも向き合うことであるという認識が芽生えました。
PSRではなくPERで語るべきであることも改めてわかり、どのようにその事実と向き合うか、それによる事業計画はどうするか、とこれまでの経営チームでの議論の転換を図りました。

3.Vertical SaaSとしての戦い方

この議論は本当に為になりました。複数回打ち合わせした方々からは、「Verticalとして、TAIANはこう戦うべきでは?」という意見を海外事例、日本の他社事例を出し、毎度真剣にディスカッションいただけました。
建築、美容、運輸、不動産、工事業者、ジム…様々な業界向けのVertical SaaSの先輩方から直接お話を聞かせていただいたり、記事を読み分析しました。詳しくは記載はできませんが、今までの実績と、我々のアセット、ケイパビリティをいかして最も良い事業展開の方法はどれなのか?という経営議論に発展することができました。
資金調達活動中も、他の企業活動を止めずにやることを決めていたので、準備期間中に組織化を進め、睡眠時間を削り(笑)、上記の議論を日夜することで、経営チームとして強くなるプロセスを踏めました。
役割分担
・CEO:投資家コミュニケーションアレンジ、社内外のリソース調整・調達
・CTO:調達設計、資金調達定例の実施、投資家とのMTG
・コンサル(友人経営者):財務、調達設計、資金調達定例の実施、投資家紹介
・COO:事業にフルコミット、事業計画精査、2・3回目投資家面談
・コーポレート(2名):DD対応
special thanks DDでの顧客ヒアリングに答えてくださったお客様方、顧問税理士、顧問弁護士の先生たち
ログを見ると100〜150時間*3名の時間を使い、半年をかけた調達活動でした。スタートアップを経営するとは何なのか?を全員で半ば強制的に考えさせられる機会があったことで、一段と責任を感じる一方で次のステージに向けてワクワクしています。
市場規模が大きくて、美味しい市場でスタートアップをすることが正解なのであれば、世の中には同じものばかり溢れてしまうし、イノベーションは起きないはず。「我々だからこその存在証明をしたい」と強く思うようになりました。
恵まれた経営チームとメンバーに改めて感謝をしています。

活動を通して評価いただいたポイント

<将来性や世界観>
・ブライダル領域Vertical SaaSとしての可能性
・「お祝い予算」というユニークな切り口に対する可能性
<実績>
・少人数×短期間での売上進捗
・組織づくり(エンジニア採用の強みと、業界へ向き合うという文化醸成)
・営業管理〜コーポレートにおける内部統制
経営チームの将来性に賭けてもらっていたといっても過言ではないシード期の調達活動とは異なり、実績とIPOに向けての不確実性の排除の議論。
新しいフェーズの企業活動に足を踏み入れたと日々感じました。

ユニコーンを目指す決意

今回、経営チームとしても、個人としても何度も考えたのが、我々はなんの会社なのか?どんな会社になりたいのか?という原点に立ち戻る問い。
自分たちはどこまでいけるのか?ではなく、「何がしたくて、どこまで行きたいのか?」が大事であるということに今更ながら辿り着きました。
Compsを意識し始め、上場後の未来を考え、日本社会をどうしたいのか、改めて考えました。
ユニコーンにどれだけ近づけられるか?という思考から、ユニコーンにならなければいけない、そのために何をするか?というボトムアップ思考からの転換をはかる必要性を切に感じました。
これまでの起業家が見逃していたかもしれない、私たちだからこそ見えている市場に対してゼロからスタートしたTAIAN。このシリーズAというターニングポイントでようやくゴールとする目標を見出し、飛躍するエンジンが完成したような気がします。

シリーズAの調達活動を経て変革できた、自分の経営者マインド

今回の調達活動を経て、計画的起業家に対する勝ち負けというコンプレックス意識を払拭することができたことが大きな成長かもしれません。
私は30歳を過ぎてから結果的に起業をすることになったので、起業ありきの人生を歩んできている周りの経営者・起業家とキャリアの歩み方が違います。
今まで自分の中にあったのは、以下のようなモヤモヤ。
・これほどまでに面白い“経営”というものに対して自分のキャリアは遠回りしてしまっていたという変えられない過去
・戦略的に事業選定をしなかったことによる投資家との市場規模(TAM・SAM・SOM)議論
正確に言うと、計画的起業家でないことに対しての言い訳ができない状況になることができたのかもしれません。このマインドに至るまで、投資家の皆さんや社内の仲間、お客様をはじめとしたステークホルダーが自分を導いてくれました。
この勝ち負け意識が払拭されたからこそ、圧倒的に自分の足りなさに気づき、新たな壁にぶち当たっています。大きな大きな壁に体当たりしているのが久しぶりで、頭が痛くも高揚感があるなんとも不思議な気持ちです。
改めて、今回の調達活動前後で、投資家だけでなくたくさんの経営者や、業界で活躍している方、採用候補者…さまざまな方々にとにかく会いに会いました。
単に起業家、経営者といっても、本当にさまざま。
どこまで見据えているビジョンを持った会社なのか?自分の野心はどこまでなのか?を問い直しました。
この問いの先に一つの答えに辿り着きました。
社会に大きく還元できたと感じること=自分の人生の満足度である。
社会に大きく還元できた状態=自らが起こしたイノベーションによって幸せになる人が増えている状態です。
「現状に満足できない・してはいけない」という自分の価値観を、会社体としての経済活動として大きく昇華させる、そのための経営であると考えるようになりました。
シリーズAは、経営活動のスタートラインにようやく立てた状態だと思っています。これからのTAIANにご期待いただけるよう、個人として、会社として成長していきます。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。

株式会社TAIAN 代表取締役CEO 村田磨理子


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