旅の大イビキ
最悪の気持ちのまま旅に出た。
きっと彼のほうをみて笑えない。
作り笑顔はできても疲れ笑顔になる。
こんなの嫌だ。
ワタシがメッセージ上で大騒ぎの乱を
起こしたため、
(あ、二度目。これデジャブ)
確実に今夜はふたりのことについて
話し合うことになる。
寝不足覚悟だ。
開いたあとのパラシュートは
どこにどう着地するのか。
検討もつかない。
カレと車内で合流し、
そうこうしているうちに列車が動き出す。
とうとう旅が始まった。
後戻りはできない。
始まったからには全てを味わいつくそう。
人生に無駄なものはない。
全てが経験。
カレとどのタイミングで、
どのように出会い、
どう関わるのか。
全てを決めて生まれてきている。
人は生まれる前に、
自分の人生のストーリーを決めてから
生まれてくる。
生まれたあとはそれを忘れて
生きているけれど。
この世で起こることは
全て想定されていること。
全てに学びがあるのだ。
私はカレのことを味わい尽くしたい。
カレにも私を味わい尽くしてもらいたい。
さぁ、最悪な気持ちは一度横に置いて、
この旅を味わいつくそう。
この旅では色々なところをめぐった。
おそらく普段のカレなら決してそこまで
アクティブにはならないであろうが、
今回は多くの場所を訪れる計画をたてた。
こんなに多くをまわれるのか?!
と驚かれるほど詰め込んだが、
見事なほどに全てをまわりきった。
あんなに詰め込んだのに全くもって
ゆったりとした旅時間となった。
不思議だ。
まるで、日中が24時間あるかのごとく。
こんな感覚は生まれて初めてだ。
本当に36時間あったように感じるほど。
不思議だ。
夢のような時間だった。
最初は最悪だと言っておきながらも
カレとの旅を心底満喫できた。
カレも最初は最悪な行き先だと言って
おきながらも満喫してくれたようだ。
我々は旅を楽しみ尽くした。
この旅に悔いなし。
さぁて。夜はツインルームにて話し合い。
初めてのお泊まりでドキドキで
ラブラブするはずが、話し合い。
ワタシが大騒ぎの乱をおこしたせいだ。
したがって、
今後のふたりについて話すこことなった。
カレは、人の気持ちは自由だとは言え、
この世にはルールも存在する。
ルールに沿って生きないといけない
ところもある、と言う。
ルールとは、
其々の家庭は家庭として守り続けること。
ふたりの関係は、
家庭を守り続けた上で成り立つ関係だと。
わかっている。わかったつもりではいる。
なのに、改めて言われると辛い。
わかっているけど、、、
さてはわかっていないな、ワタシ。
カレの言い分は、
ワタシがその関係で苦しむならば
我々の関係を続けることはできない。
と主張する。
ワタシには綺麗事のように聞こえた。
ワタシが綺麗事だと感じた理由は、
続けることができない理由を
ワタシが苦しむ。と、ワタシに主体性が
あること。
カレに主体性がある意見でないことに
違和感を感じた。
カレが続けたいと一言言ってくれるだけで
心持ちは変わったはずだ。
心を整理してやっとわかった。
だからワタシは苦しいのだ。
この苦しみは、
カレのことが好きすぎるから。
そしてカレからワタシへの具体的な
気持ちが聞けないから。
ワタシはカレに、
苦しくなるのがいけないなら、
もう二度と好きと言えないほどに
斬ってほしいと伝えた。
あなたのことを嫌いになるほどに
ワタシのことを斬りつける言葉をかけて
ほしいと伝えた。
上弦の鬼が昇華するように、
斬りまくりワタシを昇華させてほしい。
その言葉を聞いたカレは、
自分の方がグサグサに斬られています。
と、言ってきた。
いやいやいや、
斬られたいのは私のほうだ。
カレが斬られてどーする。
カレは私に斬りに斬られて、
その首は五条辺りの河原に晒されている。
と言う。
そんなの嫌だ。
それなら、ワタシも斬りに斬られて、
カレの隣で晒し首。
晒し首になってもカレの隣で一緒がいい。
ちょこんとカレの隣に置いてほしい。
と、ここにきてカレが主張する綺麗事を
越える自分の本音が出た。
綺麗事を塗り替えるほどの本音。
あぁワタシは、カレと離れられない。
離れたくないんだ。
晒し首になってまでも。
それを伝えると、、カレは笑う。
晒し首を笑うな!!という顔で睨んでみた。
なんなら自分も隣で晒し首だぞ。
ふたり一緒に晒し首を望む、
そんなワタシが愛おしいというカレ。
ふたりはおでこどうしをくっつけあう。
スリスリスリ。
河原で首だけがスリスリしているのか。
恐ろしい光景だ。
まだまだ夜中の話し合いは続く。
眠さのせいでしっかりと記憶できていない
部分もあるが、話し合いの中でカレは
ワタシの思考を単純だと罵った。
1か0かしかないのは単純だと。
これは相当深く斬られたと同等の傷。
痛手とともにショックを受けた。
しかし、カレの言う通り。
好きか嫌いかしかないなんて単純だ。
そうだ、単細胞のバカだワタシは。
続けるか別れるか。それも単純だ。
いや、答えはきっとシンプルなんだよ。
ただでさえ我々は複雑恋愛カテゴリーに
属する。
答えだけでもシンプルにしないと。
混乱する。
我々の話し合いは混乱するのみ。
隣同士の晒し首になることが決まっただけで
続けるか別れるかも決まらない。
終わりのこない話し合いが続く途中、
お手洗いへ立つカレ。
ワタシはいてもたってもいられない。
なぜかと言うと…?!
カレの用を足す姿すらみたいほど、
それほどまで好きだと。
トイレ前で待ち伏せし、
トイレから出たてホヤホヤのカレに伝えた。
それを伝えると、、やはりまたカレは笑う。
笑われてしまっている。
そりゃそうだ。
ワタシはヘンタイだ。
トイレを覗こうとしていた🕶️
手鏡なんて小細工なしにダイレクトに。
直視! 目視!注視!なんなら凝視だ!
そんなワタシをまたまた愛おしいと言う。
ほんまか?
ついにふたりはキスをした。
トロントロンだ。
しかし、
まだまだ終りのこない話し合いが続く。
その途中、いったん水分をとるカレ。
ここでもまた
ワタシはいてもたってもいられない。
はい、なぜかと言うと、、
ワタシも飲みたいとカレに伝えた。
カレの飲んだペットボトルを渡される。
ううん。違う。
カレの口を指差す。ココ!ここからと。
それを伝えるとカレは驚く。
驚きつつも初めての行為を行ってくれた。
カレの口からワタシの口へ移し注がれる水。
何度か試みてやっと成功。
カレは何杯ひとりでゴックンしたことか。
そのせいで?!
カレは夜中にトイレに起きることに。
(いや、年齢的なものか?)
タプンタプンだ。
そんなこんなでパラシュートの着地位置は
曖昧なまま沼地に降り立つこととなった。
もう丑三つ時をこえている。
そろそろ眠りにつかないと。
旅2日目に備えないと。
寝不足は確定。あとはどれだけ睡眠を
確保できるかにかかっている。
しかし、ふたりが一緒にひとつのベッドに
いると、身体が反応してしまう。
いたずらをするかのようにワタシは
カレのピンとなったしっぽをモゾモゾ。
カレはワタシをペロペロ。
ワタシのからだを全てわかり尽くしている。
その結果、ワタシはイキハテ。
次はワタシがカレをペロペロ。
ワタシもまた、
カレのからだを全てわかり尽くしている。
その結果、彼もお口の中でイキハテ。
ふたりはようやく眠りにつこうとした。
すったもんだの末、
ふたりの答えは定まらないまま、
話し合いは沼地に着地してしまった。
ワタシはどうもこうも眠れないと思い、
導眠タブレットを飲んで寝た。うとうと。
そして、いつの間にか熟睡し、
朝方トイレで目覚めたカレに気付かれた。
大イビキをかく女だと!!!
しまったーーーー!!!
聞かれてしまったーーーー!!!
イビキテープをし忘れた。
大失態だ。
朝起きたときは別々のベッドで寝ていた。
ガーン…
きっと大イビキに嫌気がさしたのだ。
いや、ワタシに嫌気がさしたのか。
寝不足のまま、カレと大イビキ女は
2日目をむかえた。