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契約と心、そして資格

彼とゆっくり会うことができた日のこと。

彼が買ったモナカ系アイスを半ぶずっこ。
正確に言うと半分ではない。私の方が多い。

なので、私は半ぶずっこだから
これは彼のだよと言い、
彼の口に残りのアイスを近づけた。

彼はあーんとされることに少し照れがあり
躊躇している。
あーんが苦手なようだ。慣れてないだけ?
なんだかかわいい。

最後の1口を彼に『あーん』と
食べさせようとすると
私の手を持ち、手ごとパクッ!

ひゃんっ。こんなことは初めて。
手ごと食べられるなんて!
真実の口、ローマ以来だ。
否、正確に言うとあれも食べられてはない。

私はひと様の夫と不倫をしている
超極悪人かもしれないが、
私は嘘つきではない。
だから食べられることはない。

彼は私の指を舐めて、その後一緒に
手を繋ぎながら手洗い場へ。

もうそこで彼のスイッチは入ってしまった。

キスをし始めたらとまらなくなり、
お触りからのまっ裸パターンだ。

場所的に完全に寝転ぶことができず、
そもそも場所的にそーゆーことをいたしては
いけないのだが、
私がソファに腰かけて彼がペロペロ星人、
からのIN。
ソファなので動きにくそうだ。
その後彼がソファに腰かけて
私が彼に覆い被さり騎乗位になるやいなや
おそらく彼はすぐにイッタ。
フィニッシュ。

この日は、場所的に一回戦のみ。
一回戦もまずいだろう。仕事場だし。

その後は、ふたりでずーとまっ裸のまま
くっついていた。

不思議な光景だ。
否、冷静に考えると異様な光景だ。

ま、誰にも見られないからいいが。
職場だぞ。見つかったら解雇だ。

ふたりはまっ裸のままソファに腰かけ
真面目に話を始める。
ことをいたすより、まっ裸でくっつき
話していた時間のが遥かに長いと思われる。

まっ裸でくっつきあうなんてまるで雪山だ。
遭難時のようにくっつく。
私は彼と言う雪山を彷徨っているのかも
しれない。
そして自分を見失い遭難しているのかも
しれない。

そんなことを考えて意識が遠退くなかで、
彼が私の足に触れた。
私は雪山から帰還した。
今という現実を生きているのだ。

互いに相手の足に触れながら、
私は彼の体温を感じ生きる感覚に集中した。

時々見つめ合いキスをして真剣に話をした。

ソファでまっ裸。見た目としては非常に
おかしいが至って真面目な話をしていた。

仕事の話、ビジネスの話、宗教の話、
家族の話等々…

そのなかで、
彼は女心をわかっていない節があること
について(文句を言いながら)話していると、
少々込み入ったミライの話になった。

彼は、私の家庭を壊すことがあっては
いけないと心底思っている。
私には家庭の幸せも維持してほしいと。
そしてミライも幸せでいてほしいと。

これらは前から一貫して同じ意見だ。

それを言われると私は寂しさに襲われる。
悲しくなると伝えた。
彼とは完全に切り離されたように感じ、
悲しくなるのだ。

更にはその言葉には牽制の意味も含まれて
いて、余計悲しくなるとも伝えた。
牽制とは、あなたの家庭の幸せを奪わない
代わりに僕の家庭の幸せを奪うなよ、
という意味も込められているように感じる
と説明した。

彼の方はよかれと思って発言していただけに
少々驚いていた。
なるほど、そういう捉え方もあるのですね。
とビックリしたようだ。

彼とずっと居たいとコッソリ願っている
心の内も伝えてみた。

私は彼と結ばれることを強く願っている。
だから、最近では彼にも正直に願いを
伝えるようになった。

本当に正直者だ。馬鹿がつくほど。
真実の口の中に入り込んだとしても、
無事に帰還できることだけは確信を持てる。

それを踏まえて彼の意見は、
一言で言うと、
『契約と心は別だ。』
ということらしい。

彼にとって結婚は契約関係。
契約を結んだからには果たさないと
いけない。
契約を果たさないと、孫に会わせてもらえる
権利がない。と言う。

子どもの結婚式に出るときに
隣にいるのは妻しかいないだろう。
そこに私がいるのは違和感がある。

子どもたちの結婚、孫の誕生を一緒に
祝えるのは妻だけだ。

子どもたちの母も妻だけだ。

妻に対しては文句もあるが、これが夫婦かと
諦めているらしい。
なぜなら、契約したからには少々のことは
目を瞑るらしい。

従って、
今世のパートナー契約を結んだのは妻だ。
と言う。
一方、私がパートナー契約を結んだのは
夫だ。と言う。

確かに私も、子どもたちの父親は夫だけ。
子どもたちの結婚、孫の誕生を祝うのも夫。
それは然り。
頭ではわかっているけど、そのまま言葉に
されてしまうとどうも納得がいかない。
なぜだろう。
私がほしい言葉は何なんだろうか。

パートナー契約はそれぞれの妻と夫のみ
と言いきる彼だが、
契約は契約として果たしていくもので、
心までも従わせることはできないと、
彼は潔く言い切った。

契約と心はあくまで別の領域。

子孫を繋いでいくために結婚の契約を果たす
ことは必要。

しかし、心だけは自分の物。
自由であってもよいもの。
むしろ、誰にも心の自由は奪えない。と。

それを聞いて、私はまたまた落ち込んだ。

私には契約を結ぶ資格がないということに
気付いてしまった。

あれ~?!(カルテットいえもりさん風に)
心はあなたのものよってところで
先ず喜ぼうよぉ。

心は私と言われても虚しさが残る。
心よりも契約を結ぶ資格がないことについて
落ち込みが大きかった。

結ばれたいのに結ばれる資格がない。
それなら、資格がほしい。
ものすごく資格がほしい。
ほしい。ほしい。ほしい。

大原にユーキャンにTAC、助けてほしい。
入学するぞ!私は本気だ。
本気になったら大原!だ。
先生、資格がほしいです。タプタプタプ
四角い仁鶴に資格をもらいまあるくおさめて
ほしい。

もう手段なんてなんでもいい。
資格がほしい。
喉から手が出るほど彼と結ばれる資格が
ほしい。
ほしい。ほしい。ほしい。

ちょっと待って。ちょまてよ。
大原に資格を取りに行く途中で急ブレーキ。
反対だったらどうなんだ?!急遽Uターン。
反対車線を走り出す。

彼と契約を結ぶ資格があり、
契約を結んで結婚しているのに、
彼の心は誰かのところ。

彼と毎日生活しているのに、
彼の心は誰かのところ。

彼の子どもを産み、孫までいるのに、
彼の心は誰かのところ。

あぁー。それもそれで堪えられなーい。

私は、
契約を結べる側でも満たされない。
心を通わせる側でも満たされない。
どうしたらいいんだ。

こんなことを言い出す彼は、何者なんだ。
まさか彼は、
リージョンオブドゥームのトップか?
悪の軍団長のように感じる。

そう言う私も何者だ。
おそらくジャスティスリーグ側ではない。
どう考えてもリージョンオブドゥーム側。

あぁ、わからない。
我々悪の軍団は何がしたいのか。

そんなときは祈りの基本に戻ろう。
例え彼がリージョンオブドゥームのトップ
だとしても、彼の幸せを祈る。
純粋に、純粋に、純粋に。

愛するとは、彼の状態すべて包み込んで
大事にすること、思うこと。

その際、彼の人形を抱きしめるか、
それとも、彼のこころを抱きしめるか。

愛していればどちらでも満足かもしれない。

私が彼のことを愛していれば、
どちらでも問題ではないように感じる。

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