#18 ソク、ロク、ド、テキ、サク、リャク、タク、タク、喰らえ「エイジハッポウ」!!/コトノハーバリウム
まるで印を結んで技を放ったような表題となってしまったが、実際のところは、今回紹介するコトノハは残念ながら忍術でも、必殺技でもない。しかし、デジタル世界に生きる漢字ユーザーとして忘れがちな、でも忘れたくない技の一つであることは確かである。
今日のコトノハは「永字八法」である。これは、漢字を書くときの点や画を八種類の型が「永」の字に含まれる、とした考え方である。
この概念の由来は、後漢の蔡邕(さいよう)という人が石室で神人から授かったものが代々受け継がれたとされているが、信憑性は低いようである。実際のところは唐代の中国で実践された筆法伝授の一つの方法だと見られている。
では、側(ソク)、勒(ロク)、努(ド)、趯(テキ)、策(サク)、掠(リャク)、啄(タク)、磔(タク)からなる八つの要素を順番に紹介していきたい。(なお、それぞれの読み方は日本語読みであり、中国語読みとは全く異なるもののようだ。)
側:点のこと。永の一画目。筆の側方を用いて抉るように書くことから「側」。
勒:横画。永の二画目前半。勒とは馬を制御するための革の紐のことで、手および文字が勝手に動かないようにして書く、ということ。
努:縦画。永の二画目後半。この要素は「弩(ド/石弓の意)」表記されることもある。弓を引いて矢を遠くに飛ばすときのように縦画の中央部を左に反らすことから。
趯:いわゆる「はね」。永の二画目の最後。趯は作りの部分が雉子の尾を表していて、走を合わさって高く躍り上がることを表現している。
策:右ななめに向かう横画。永の三画目前半。朿はとげ、竹冠を加えて、尖っている鞭のこと。鞭でビシッと叩くように書くことから。
掠:左はらい。永の三画目後半。掠は「かすめる」という他に、「梳く(すく/髪の毛を櫛で解くこと)」の意味があるようで、女性の長い髪を梳くようにゆったり、滑らかにはらうこと。
啄:短いはらい。永の四画目。啄はついばむという意味で、キツツキが木を叩く様子を描く。
磔:右はらい。永の最終画。磔には「はりつけ」の他に「身体を引き裂いて内臓を開く」という意味がある(急にホラー)。「掠」とは差をつけて、刀が肉を断ち、骨にも届くような力強さで書くことから。
以上の八つが永字八法と呼ばれる要素群である。無論、永字八法はあくまで点画についてである。漢字やひらがなを書く時は他にも画どうしのバランスや間隔が重要なので、「永」を延々に書くだけで字が完璧になるとは言えないが、意識するとしないでは差が出てくると思われる。
ということで今日は永字八法について紹介した。永字八法の名は聞いたことがあってもその中身は知らなかった人も一定数いると思われる。
「文字は人を映す鏡」ともよく言われる。私は最近デジタルな文字入力に頼りっきりだが、いざ文字を書くとなったときには見られて恥ずかしくない文字を書きたいものである。
ではまた。
これは私がインプットをしてよりよいアウトプットを生成するための燃料です。あなたの活力にできるような文章を生成することに尽力します。