「機動戦士ガンダム 水星の魔女」11話・12話感想 アムロとスレッタの比較の間違い 作品を通して本当に向き合うべきもの
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11話が放送されてから年末年始で期間もあったのになかなか記事を書き始めず、最終回から1週間経ってハサウェイTV版の1話が始まってやっと書き始めています。こうなるとストーリーも連続したものになっていますしセットで上げてしまえという感じです。それにしても水星の魔女は前期・後期の2クール構成なんですね。作品を見る前に全部で何話放送するとか調べないのですっかり51話やると思っていました。
11話では学園を追い出されたボブのバイト風景とスレッタのぼっち飯からあっさりミオリネとの和解とネタも交えつつこれまでの通り問題は2話以上引きずらないという構成でした。これまでほとんどミオリネが葛藤している描写がなかったのでここでいきなり本音を語られても響くものはなかったというのが率直な感想です。この回で一番の見どころは各所でネタにされている通りミオリネがスレッタのおっぱいに顔を埋めたことではないでしょうか。
12話では多くの人がショックを受けた前期最終回となったようですが、全体的な感想としては戦闘が長すぎたように感じます。戦闘描写にしても早く動いて迫力があるように見えるだけであまり意味のあるものようには感じませんでした。キャラクターに関しても後期に向けての個々の展開はあったものの、相変わらず心理描写が乏しいまま終わったという印象です。
スレッタが敵兵を叩き潰したシーンを劇場版ククルス・ドアンのアムロのシーンと比べる人が多いですが、それまでどういう人生を歩んでいたかある程度わかっていてまだ戦士になりきれないアムロとプロローグ以降なにやっていたかわからないスレッタでは演出の深さが違います。母親の進めば2つの言葉が人殺しさえ決断させる悪魔の言葉に変わる演出も、プロスペラとの関係がもう少し深掘りされていれば意味のあるものになるのですが、それもほとんど描写されてなかったため表面上のものにしかなっていません。
驚いたことにスレッタのこのシーンにはショックを受けた人が多いようで、何も知らずこれが初めてのガンダムだった人にはご愁傷さまといいたいところですが、人が死なない、ゆるふわな学園モノで、百合アニメを期待していた人は作中でも戦争が起こっていることは言及されていたのになにも予想してなかったのでしょうか。
私がTwitterでフォローしている人は700人ほどいて水星の魔女の感想が目立つ程度に流れてくるのですが、どれも個々の台詞や演出に言及したものばかりでこれまでの展開で作品の核となる要素の一つであるZ世代に対するメッセージやそれが伝わっているかということを考えている人がいないのが残念でなりません。その程度の人間しかフォローしてないと言われれば返す言葉もないのですが、フォローしている人たちがRTするクリエイターの人たちのタイムラインを辿ってもそこへの言及が少ないので、クリエイター人たちもそこには関心が薄いということなのでしょうか。
現実世界に目を向ければ日本のジェンダーへの意識はまだ薄く、生活においても都市部のインフラや平和は地方への負担の押し付けで成立しているもののそれは非常に脆弱なもので見せかけでしかない。世界に目を向ければ今でも戦争が起こっていて少年兵が親や隣人を殺しているし、環境破壊は着実に進んでいる。それらのことに関心が高いZ世代い向けた作品なのに大人たちは個々の演出論しか語ってないあたりが水星の魔女で描かれている大人と子供の対比そのものですね。ただこれは視聴者だけが悪いということではなく、これまでも書いてきたことのおさらいになりますが、Z世代への作品作りが綺麗な作画、印象に残りやすいだけの台詞やシーン、伏線を張らず2話で解決してしまう物事、感情や思いをなんでも口で説明してしまう脚本等Z世代の消費傾向に対応するにとどまっていることにも問題があると考えます。本当にZ世代に何かを伝えようと思うなら彼らの20年後、30年後を考えてそこに向けた作品作りを行うべきです。
いろいろと批判もしてきた水星の魔女ですが最近新しいアニメをほとんど見ていなかったので新鮮な気持ちで見ることができました。それと同時にアニメを見る際にも世代間の感性の違いや現実で起こっている物事と切り離して考えることができなくなっていることを感じます。その中で少なからず対立も起こっており、この時代の流れにやや息苦しさも感じますが社会の問題への関心が高まっているとポジティブに考えたいと思います。連載の最初で勝手に考えた展開はまったく当たらなかったわけですが、後期の勝手な予想も気が向いたらやるかもしれません。4月からの後期が楽しみです。
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