「機動戦士ガンダム 水星の魔女」7話感想 構造論しか語らないガンダム大好きおじさんが作品を滅ぼす
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まさかの株式会社ガンダム設立の展開がネットを賑わせています。「今の若い人はガンダムというだけで見てくれないらしい。そんな若い人に向けて彼らの感覚に対応しつつガンダムを再定義している。すげえ!」みたいな感想が見られるわけですが、そんなこといってるから若い人がガンダムを見てくれなくなるんだよと思ってしまいます。
ちなみに若い人がガンダムを見てくれないというソースはこちらですね。
水星の魔女のプロデューサーである岡本拓也氏が10代の人達に話しを聞く機会があり、ガンダムについて以下のような感想が寄せられたとのことです。
“ガンダムは僕らの世代に向けたものじゃない”とか、“タイトルにガンダムって付いていたら観ません”
彼らがどういう層なのかわからないのでどこまで真に受けるかは判断しかねるのですがこの部分だけを読む限り彼らの感覚は間違っている部分がある一方で真摯に受け止めなければならない部分もあると思います。
ビルドファイターズシリーズは戦争の要素から離れて明確に子ども向けに作られていて商業的にも成功していますし、SEED、00、オルフェンズとガンダムのシリーズは常に新しい世代のファンを獲得し続けているのでガンダムがその時の若い人に向けられていないということはないでしょう。ただZ世代に絞っていうならそれらの作品も昔の作品でしかないでしょうし、作っている本人はZ世代に向けているつもりでもガンダムというだけで見てくれないのであればGレコも届くことはないのでしょう。そういう視点から見るとタイトルからガンダムを外してGレコにしようとした富野氏の感覚には脱帽です。
(AGEは子ども向けに作られていますし個人的に好きな部分もあるのですが一般的な評価には同意します)
水星の魔女でなくてもこれまでのガンダムもZ世代の視聴に耐えうる作品ではあると思うのですが、Z世代の若者がガンダムを自分たち向けの作品でないと思っている部分に関しては理屈抜きに真摯に向き合う必要があると思います。それでなぜそのように捉えられているかというと最初の部分に戻るのですが、ガンダムを語っている人たちが作品の構造論ばかり語っていてそもそもの作品の対象であるZ世代の若者の価値観に対して向き合っている感想がほとんど見られないからだと考えています。かなり極端な例に感じるかもしれませんが水星の魔女を語っている人のタイムラインを覗いてみるとエロ画像、ミソジニー、リベラル批判が流れていることも珍しくありません。ジェンダーや環境問題にも関心が高いZ世代からすればガンダムを見ている人のタイムラインがそんなのでは興味を失うのも仕方がないでしょう。
宮台真司氏が今の学生の話題の3大タブーが「性愛、政治、本当に自分が好きなこと」であるとよく語ります。水星の魔女が宮台氏の考えに影響を受けたかは知りませんが今のところ作中でキャラクターが性愛も政治も趣味の話も語るシーンはありません。占いのシーンはありましたが公式HPのキャラクター紹介でもアリヤが故郷で身につけたものであってそれが趣味だとは書かれていません。Z世代の若者でも性愛に興味はあるし、投票行動からも政治に対する意識は高く、裏垢・匿名アカウントでしか好きなことを語れなくても自分の好きなことをしっかりと持っています。ではなぜ彼らの生きる世界が生きにくくなっているのか、そんな世の中でどう生きればいいのか、こんな世の中を作ってしまったことに対して大人としてどう向き合うのかを作中で描く必要があると思うのですが今のところそういうメッセージは無いように感じます。本当にZ世代に向けて作品を作るのであれば彼らにとってタブーだから描かないのではなく、彼らの価値観を肯定的に受け止め、大人として真摯に向き合い、それらの大切さを語る必要があるのではないかと思います。それらのことは今後人口が減少していく日本においてコンテンツを存続していくために海外にも発信をしていかなければならないことを考えると、作品を国内にいるガンダム好きおじさんにだけ向けて造るのではなく、グローバルで多様性のある価値観を持って海外の人に向けて創る上でも必要なのではと思います。
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