見出し画像

米国の次期農業法の策定が難航 500超の農業団体が年内成立を要請

米国のファーム・ビューロー(AFBF)など500超の農業団体が7月22日、次期農業法の年内成立を求める共同書簡を民主、共和両党の有力8議員に提出しました。本来なら、次期農業法は現行法が失効した2023年9月末までに策定されるべきものですが、両党の対立で調整が難航しています。これだけ多くの農業団体が書簡に名を連ねたことで、米農業界が危機感を募らせていることが浮き彫りとなりました。
 
書簡に名を連ねたのは、米最大の農業団体であるAFBFのほか、小規模農家が多いナショナル・ファーマーズ・ユニオン、両団体傘下の各州の団体、トウモロコシや大豆、小麦、綿花、豚肉、乳製品など農畜産物ごとの団体とそれらの傘下の各州の団体などです。米国にはこんなに農業団体があるのかと驚かされます。米国で事業展開するドイツのバイエルやBASFといった企業も加わっています。
 
2018年に制定された農業法は2023年9月末に失効しましたが、両党の合意により、暫定措置として2024年9月末まで1年間延長されました。9月末までに新農業法が成立しなければ、もう1年延長される公算が大きくなっています。
 
2018年農業法は6年前に策定され、その後に新型コロナウイルスの拡大やロシアのウクライナ侵攻など農業に大きな影響を及ぼす出来事が相次いだため、同法は時代遅れとなり、状況の変化に対応した新法が不可欠だと農業界は一貫して主張しています。米国ではこれまで、ほぼ5年ごとに新たな農業法が制定されてきました。
 
共同書簡は「何百万もの米国人は、食料や繊維、燃料を生産し、家族や世界中の人々を養うため、農業法の規定に毎日依存している」と、農業法の重要性を強調しています。その上で、「議会が今年、超党派の農業法案の制定で結束できなければ、(2025年1月からの)119議会で立法作業が新たに始まることになる」として、作業が振り出しに戻るとの懸念を表明しました。またゼロからのスタートとなれば、いつ成立するかますます分からなくなってしまいます。
 
2024年11月5日には大統領選のほか、上下両院の議員選挙も行われるため、議長や委員長らも一新されるとみられます。このため、共同書簡は「119議会の最初の数カ月は、新指導部や委員会の設置など重要な任務があるため、早期に新農業法を成立させるのは不可能ではないかとわれわれは懸念している」と指摘した上で、「われわれは、今議会で超党派の農業法が成立するよう強く要請する」と訴えました。
 
AFBFのデュバル会長は声明で、「500超の団体が団結し、1つの声を発信することは、新農業法成立の緊急性と重要性を示している」と指摘しました。その上で、「現行農業法が成立して以降、われわれはパンデミックや歴史的な物価高、世界的な不安、サプライチェーンの問題を経験した」として、現行法の延長でしのぐのでなく、状況の変化を反映させた新法の必要性を強調しています。
 
農業法に基づく予算では、低所得者向けの食品購入補助事業の割合が多くを占めているため、この事業の扱いがいつも焦点となります。大きな政府を志向する民主党は拡充を求め、小さな政府を志向する共和党は圧縮を求めるため、調整はいつも難航します。今回も同じ構図となっています。

いいなと思ったら応援しよう!