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米国の農業所得は2年連続減少 過去20年平均は上回る

米農務省(USDA)は12月3日、収入から支出を差し引いた2024年の米国の農業純所得は前年比4.1%減の1407億ドルと、2年連続で前年を下回るとの見通しを公表しました。物価変動の影響を除いた実質では6.3%減です。農産物価格の下落により、収入が減少したのが主因で、4年ぶりの低水準となります。ただ、過去20年(2004~23年)平均の1214億ドルは15.9%も上回っているとUSDAは強調しており、米国農家の経済状況はまずまずの水準と言えそうです。

USDAウェブサイトより

農産物の販売収入が0.8%減の5169億ドル、政府からの直接支払いや農業関連収入を加えた総収入が2.3%減の5946億ドルとなりました。肥料や飼料、農薬といった農業資材のコスト削減に努め、総支出は1.7%減の4539億ドルと圧縮したものの、収入の減少を補えませんでした。

農産物の販売収入の内訳は、作物が9.2%減の2462億ドルと落ち込む一方、畜産は8.4%増の2706億ドルと好調でした。

品目別にみると大きくばらついており、中でも主要作物のトウモロコシが20.8%減と、苦境が浮き彫りとなっています。販売量は増加したものの、価格下落が響きました。そのほか、大豆が12.3%減、綿花が26.9%減、小麦が7.0%減と苦戦しています。コメは4.5%増と好調でした。野菜・メロンは6.7%増、フルーツ・ナッツは2.1%減となりました。

USDAウェブサイトより

畜産では、牛乳・乳製品が11.5%増、肉牛が7.2%増、豚が5.7%増、鶏卵が39.4%増と、いずれも前年を上回りました。七面鳥は価格下落と販売量の減少により43.3%の大幅減となりました。

USDAウェブサイトより

連邦政府からの直接支払いは13.6%減の%減の106億ドルとなりました。乳製品と豚に関連した補助金が削減されたのが主因です。直接支払いが総収入に占める割合は前年の2.0%から1.8%に低下しました。

支出面では、飼料が13.2%減、肥料が8.4%減、農薬が10.7%減と、コスト削減に寄与しました。しかし、労働が6.1%増となり、人件費の増加が収益圧迫要因となっています。

USDAウェブサイトより

USDAの発表に関し、米国ファーム・ビューロは「農業所得が2年連続で減少し、農業の不安定さが浮き彫りになった」とコメントし、苦境ぶりを強調しました。その上で、「政府からの支払いが減少し、所得のセーフティーネットが時代遅れになり、農家はますます不安定な財政状況を乗り切るしかない。期限を過ぎた農業法案の議論が続く中、的を射た改革が立法過程でとん挫している」と指摘しました。次期農業法がいまだに成立しないことに不満をにじませています。

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