世界の食料消費、インドと東南アジアの影響力が拡大へ OECD・FAOが予測
経済協力開発機構(OECD)と国連食糧農業機関(FAO)は7月2日、2024~33年を対象とした新たな農業見通し①②③を公表しました。今後10年間も世界の農産物消費は新興国や途上国にけん引され増加し続けるとしつつ、中国による爆買いの勢いは弱まり、インドと東南アジアの影響力が強まるとの見方を示しています。世界の農産物需給に地域的な変化が起きることを強調する内容となっています。
今回の農業見通しによると、飼料や燃料を含んだ農産物の総消費は今後10年間、平均で年1.1%増えるということです。この結果、2033年は2060万テラ(テラは1兆)カロリーになるとの予測を示しています。消費増加分のうち94%は中低所得国が占め、南アジアと東南アジアが合計で約40%に達する見通しで、このうち半分、つまり約20%がインドだということです。
中国のシェアは12%と、過去10年間の28%から大きく低下する見通しです。人口の減少や所得の伸びの鈍化のほか、肉食の増加といった食生活の変化も一服するとの見方を示しています。これに対し、人口や所得の増加によってインドと東南アジアが合計で31%に達するとの見通しを示しました。農産物の需要に関し、「今回の見通しでの顕著な変化は、中国の役割の低下と、インドと東南アジアの役割の増加だ」と強調しています。
東南アジアのどの国を具体的に差すのかは示されていませんが、インドネシアやマレーシア、ベトナム、タイ、フィリピンなどが含まれると推測されます。人口増加によってサハラ以南アフリカのシェアも18%に上昇します。中南米・カリブ海諸国も、飼料やバイオ燃料といった農産物以外の需要にけん引され、大きなシェアを占めるということです。
農産物需要の増加分のうち食料は46%と、最も大きなシェアを占めると見込んでいます。飼料向けは約3分の1ですが、高中所得国では食料向けを上回る見通しです。バイオ燃料向けの伸びも拡大するということです。
一方、今後10年間の農産物の生産額は、単位面積当たり収量の増加にけん引され、平均で年1.1%の伸びを見込んでいます。内訳は、畜産が1.3%、水産物が1.1%、作物が1.0%ということです。
生産額の増加分では中低所得国が全体の約80%を占めますが、インドが畜産と作物ともにシェアを伸ばすと予測します。中国は畜産、作物ともにシェアは低下しますが、水産物のシェアは増加する見通しだということです。
一方、農地の拡大に限界があるため、今後の生産の増加は単位面積当たり収量の増加といった生産性向上が鍵を握ると指摘します。北米などは既に高い生産性を実現しているのに対し、サハラ以南アフリカはかなり低く、改善の余地は大きいとの見方を示しています。
OECDとFAOはこうした農業見通しを毎年発表していますが、今回は記念すべき20回目となりました。