オーストラリアとニュージーランドがGMバナナを世界で初承認 パナマ病に抵抗性
オーストラリア・ニュージーランド食品規制機関(FSANZ)は2月16日、「パナマ病」への抵抗性を高めた遺伝子組み換え(GM)バナナについて、「既存のバナナと同等の安全性と栄養価がある」として、食品としての流通を承認したと両国政府に通知しました①。GMバナナの承認は世界で初めてです。
パナマ病は、世界中のバナナ生産に深刻な被害を及ぼしているとされ、このGMバナナへの期待が高まりそうです。ただ、開発した豪州のクイーンズランド工科大学(QUT)は「現時点では商業化の計画はない」としており、GM食品の安全性への懸念が指摘される中、社会的に受け入れられるかどうか、慎重に見極める構えのようです。
両国政府は、FSANZの決定から60日以内に承認するかどうかを最終的に決めることになっています。この間に再検討を求めることがなければ、それぞれの国の法令を改正し、このGMバナナの販売や消費を認めることになります。FSANZとともに、豪州の遺伝子技術規制局(OGTR)もこのGMバナナの商業生産を承認しました。
パナマ病は、土壌に存在するカビの一種を根から吸収することで作物を枯死させる病気で、過去にパナマを中心に広がったことから、こうした名称がつけられました。最近でも、世界で最も多く生産されているキャベンディッシュ種を含め、バナナ生産に深刻な影響を与えています。アジアや南米のほか、豪州にも広がってきましたが、パナマ病に抵抗性のある品種など、病害対策はこれまでは何も存在しなかったということです。
このGMバナナはキャベンディッシュ種で、QUTのジェームズ・デール教授らが豪州政府の資金支援を受け、20年以上前から開発を続けてきました。パナマ病に抵抗性を持つ野生のバナナを東南アジアで見つけ、その遺伝子をキャベンディッシュ種に導入することで、パナマ病への抵抗性を持たせたということです。2012年から試験栽培を行い、当局に承認を申請していました。
デール教授は、パナマ病について「非常に大きな問題だ。世界で多くのキャベンディッシュ農園を荒廃させ、世界中のキャベンディッシュバナナの輸出業界を麻痺させる恐れがある」とコメントしています。このGMバナナについて、他国での導入も期待しているようです。豪州のバナナ生産は、QUTがある北東部のクイーンズランド州が95%を占め、97%がキャベンディッシュ種ということです。
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