お弁当箱の中に広がる世界
さて、今回は私がお弁当箱の中で表現する世界観について、15年のお弁当変遷をたどりながら見ていきたいと思います。
最初は、知人主催のセミナーやマルシェに誘われて、お作りしていました。
この頃は、基本的に動物性不使用で玄米使用のマクロビ的お弁当でした。
野菜がメインだと色が偏りがちに。
「ばえる」という言葉がまだない頃。野菜だけのお弁当でも、フタを開けた瞬間に「わっ!」とトキメクようなお弁当を作りたい!
maorobiの模索が始まりました。
そして、少しずつ知り合い以外からもご注文をいただくようになりました。
大人女子向けのハイセンスなマルシェにご縁をいただき、写真のようなスクエア容器に詰めた時もありました。
こんな風に枠のあるお弁当箱は、メニューを考える時に完成形をイメージしやすいです。
ただ、私は枠のないお弁当箱に、自由に詰めるのが好きです。
写真のようなフラットな形だと、テーブルに並べた時にお弁当というよりも、ワンプレートランチを食べている感覚になれて気に入っていました。
キッシュやマフィン、デザートも何でも入れて楽しみました。
プラのお弁当箱は、汁もれしないし、かさばらないし、お値段も手頃で便利なのですが、食べたらすぐゴミになってしまう。
一方、天然素材のお弁当箱はコストが高かったり、何かを敷かないと汁もれしたり…と、お弁当箱選びは今も常にベストを探しています。
でもやっぱり、天然素材のお弁当箱は、自然界の今を切り取って詰め込んだような世界を作ることができます。
こちらは1個1個のおかずをプチフールのように、組み立てて完成するフィンガーフード。
自家農場の野菜をメインに使用するため、大根、蕪、白菜など同じ時期に同じような野菜ばかりが採れることもあります。
しかもこれらは単体だとあまりばえない野菜…。
ばえない野菜は、スープにしてムース仕立てにしたり、あえてスイーツに混ぜ込んだり。そうすることで見違えるような1品になりました。
お弁当の中をただの不規則なおかずの集まりではなく、全てがメインになれるようにスポットを当てたい!と思う工夫が、フィンガーフードへと膨らみました。
また、お弁当箱を飛び出してケータリングのご依頼もいただけるようになり、日常的な「お弁当」から非日常的な「パーティーフード」の要素も少しずつ取り入れていくようになりました。
使用する動物性食材の幅も、少しずつ広がって行きました。
そしてこの頃、華やかなお弁当を極める一方で、並行して続けていたことがあります。
それは、1人のお客様からのご依頼で、治病の回復食として毎日のように本人とご家族にお弁当をお届けするということでした。
かれこれ、3年ほど続けさせていただいたかと思います。
最初は厳格なマクロビ食をご希望でしたが、どんどんと食事制限も緩やかになり、心身共に元気を取り戻していかれました。
お客様の体調を考えたり、調理法や味付けに偏りがないよう毎日違ったメニューを考えるというアレンジ力が、一番身についた時でもありました。
今でも近くに行く際は、お弁当を通じてやり取りさせていただいています。本当に良い経験をさせていただきました。
旬の食材を使用した見た目も鮮やかなmaorobi弁当の世界観が固まってきた頃、ギャラリーで初の2人展(「土のフジワラ」藤原有二氏と共同)を開催。
また、雑貨店やショールームなどから、コラボイベント等のお声かけをいただけるようになりました。
季節毎にイメージを変え、お弁当の詰め方lessonも開催させていただきました。
そして、コロナ禍の2020年にmaorobi laboオープン!
2019年ごろからレンタル利用していたシェアキッチンがやめることになり、そのまま使わせていただくことになりました。
お弁当やテイクアウトは、一般家庭の日常の選択肢としてありだ!と一気に常識が変化した時。今までの経験を生かして、世の中のお役に立てる時がきた!とワクワクしかありませんでした。
学校が全校休校になった時、お困りのご家庭のお力になれれば!と親子弁当を販売します。
この時のバガスのお弁当箱は、水分を含みやすく、すぐにふにゃふにゃになってしまったので同じ紙でもクラフトの丸いお弁当箱に変更しました。
イベントのみの出店から、店舗営業になったことで、毎月の季節素材を以前よりメニューに取り入れやすくなりました。
そして4年目を迎えた現在のお弁当です。
「日本の四季の美しさをお弁当箱の中で表現したい。」
その思いは変わりませんが、より深くより美しくより繊細に「日本の美」を表現していきたいと思うようになりました。
40代になって、和菓子を習い、茶道を始め、着付けに通い和食の勉強を始めました。
すると、季節は春夏秋冬だけではないことに気付きました。
例えば竹細工は6月から使用できる夏のものだとか、古くからある紋様や、季節の花にも、和のものには使用時期などに奥行きの深いルールがあることも知りました。
日本を見る視点や、四季を感じる感度が、年を重ねるごとに幾重にも深まっていくのを感じています。
二十四節気。
様々なお弁当遍歴を経て、2023年より、二十四節気の流れにそってお弁当のメニューを考えるようになりました。
四季を更にそれぞれ6つに分けたのが二十四節気。一つの節気は2週間ほどなので、バタバタ気忙しく日々を送っていたら、一瞬で過ぎ去ってしまいそうです。
移り変わる季節が重なりあうグラデーション。
お弁当箱の中で表現していきたいと思っています。
次回は、二十四節気のそれぞれのお弁当を、使用した食材やメニュー名など具体例を交えてご紹介していきたいと思います。
お楽しみに!