ある男の美
同じ本を読むのに色々な読み方がある。
気になるところ、気にも留まらないところ、全て読んだはずなのに
それぞれの人がそれぞれ違う。
人との付き合い方、山の登り方もそのように様々。
ある男は1つのことに関して全部何もかも徹底的にやらないと気が済まなかった。
大抵の人は、ある山にあるルートで1回登ったらその山に登ったと思うが、
男はそう思わない。
今ある全てのルートで登り、それ以外の自分ルート1、2、3、、と
それで山を埋め尽くすのだ。
どんな季節でも未到の地にどんどん踏み込むのだ、恐れもせずに。
男は言う。それがこの山を登るってことだろう?
この山を知るということだろう?
1回登ったからって全部知ったような口を聞くな。
こんなものだから、男はある日は滑落事故で死ぬ。
走馬灯に映るアニメキャラが「あんた、バカァ?」と
これ見ながら死ぬの最高じゃね?と思いながら。
これが全部味わい尽くし、舐めまわし、楽しみきるってことだろ?
好きになるってこういうことだろ?
あの子の全てに向き合ったように、自身も全て向き合って自分というものを知り
愛したかったのだ。愛されたかったのだ。