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母と愛の話
母は、色々忘れ始めている。
私のことも 弟のことも
母は、不器用になっていく
ボタンを留めることも 服を着替えることも 料理を作ることも
どんどん できなくなっていく
母は、軽くなっていく
握った手が細く軽く
支えた肩が薄く柔く
母は、寝ることが多くなっていく
0時に寝て 4時に起きて 8時に寝て 12時に起きて
生まれたての赤ちゃんのように 喉が渇いたと夜泣きする
でも、父のことは忘れない
父には怒る
父を夜中に起こす
「こんな色の服私は着ない」と、なぜか今まで着ていた服を突き返す
たぶん人は、年をとると
一番愛している人に 一番心を許して 一番わがままを言う。
自分の腹から、分身のように生まれた子供たちのことは忘れてしまうのに
元は他人の父を覚えている。
そんな母を見ていると
愛について考える
人について考える
人は生まれて
一つづつおぼえて わがまま言って 愛を知る
そして
一つづつ忘れて わがまま言って 愛が残る
愛とは一体何だろう
愛という言葉では伝えきれない 不思議なつながりが人にはある
それを父と母は 人生の最後の時を使って 私に伝えてくれる
だから私は考えるのだ 人と愛の不思議を