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この冬、風が吹くわが街

北京市内で旧友と久しぶりに会った。二人とも日本留学組で、その当時、ぼくは進学から中退し、朝から晩まで働き詰めだった。魚店で働き、漁師と一緒に海へ出ることもあった。不思議なことにそのような情景は今の北京で懐かしく思っているから、当時の知多半島などを長安街の街並みに重なってみた気もする。実に妙な感覚だ。

旧友が同じ頃、日本からアメリカに移住し、生物学を専攻していたことから大手製薬会社に就職した。今年は定年を迎えたという。ご家族はすでに都内で一軒家を買い、春先から再び日本に戻り、余生を過ごしたいと考えているらしい。

二人は昼食事の後、雍和宮の近くを通ると「命名」と書かれた看板がたくさん目に入った。赤い地に金色の字がとても目立ち、参拝者の心を考えたものであろう。ただ、そうではないようなものも混じっている。

雍和宮なのに、なぜか五台山の名前が飛ぶ

人はこの世に生を受けるとき、名前と命は同じように大切だから、お気持ちはよくわかる。北京に戻ると心の微妙な変化に時々気づく。

話すスピードもその一つだ。例えば、同じインタビューでも日本語で答える時は、普段よりも速く話す。特に東京では、口の中に感じる空気が追いかけてくるかのようだから、一言も聞き漏らすまいとしている。逆に、北京と比較すると、同じ空気でもゆっくり話すように促されている感覚だ。

急いで話すと言葉が詰まってしまう。 そのためなのか、北京では東京よりゆっくり話す。これはたぶん西安でも京都よりゆっくり話すのと同じだ。

この数日間、翻訳作業などを終えて、北京でゆったりとした時間を過ごしたい。とても寒いが、天気がいい。旧友だけではなく、新しい友人にもたくさん出会いたい。

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