干瓢(かんぴょう)について物申す 第1話
さて、今回からは干瓢(かんぴょう)*1 に関するリサーチ結果について報告したい。
干瓢(かんぴょう)? それいるの??
モテる男、プロダクトプレイスメント、リスクマネジメント、プロジェクトマネージメントなど、色々な連載を試みてきた筆者たちが、
「なぜ干瓢についてリサーチするのか?」
それはスーパーマーケットで勤務する友人から発せられた「干瓢って要ると思う??」という言葉を聞いてからだ。友人の話を掘り下げて聞くと、その昔、会社の偉い人達が、クソ真面目に干瓢が足りる足りないで大騒ぎしたことがあるらしい。
この話を聞いた関西出身の筆者は「干瓢!?いらんいらん!他になんぼでも食べるもんあるやん。切り干し大根でも置いといたらええわ。」と腹を抱えて笑いながらそう答えた。関西人には干瓢にそれほど馴染みもなく、また、思い入れなんてこれっぽっちもないのだ。なければないでいい。何も困らない。
一方、関東には『干瓢巻き』という謎のお寿司が存在する。これは関西には存在しないお寿司だ。これをふと思い出した我々は、
(もしかすると、関東の方々にとって干瓢は欠かせない食べ物なのか?なぜ関東では干瓢が食べられているのか?)と考えた。
しかし、関東出身のメンバーに尋ねるも、腹落ちする答えは返ってこない。
干瓢は昔から食べてるから食べるといった理由なのか?そうではなく栄養素に何か意味があって食べているのか?
こんな疑問に突き動かされ、筆者らはリサーチを開始した。
干瓢(かんぴょう)と文化
まず我々は干瓢巻きに着目し文化の観点から分析しようと試みた。
・干瓢は関東の食文化と結び付いている
・それゆえ干瓢を使った料理が出されている
・したがって干瓢の需要が生まれている
という仮説だ。
リサーチ方法は次のとおりだ。
某料理のレシピサイトにて、
①干瓢を使った料理をアップロードしている方に、「なぜ干瓢を使っているのか?」という質問を行い回答内容を分析する。また、干瓢を使った料理をアップロードしている方のコメントを見る
②干瓢巻きを販売している飲食店のWEBサイトから最近の干瓢巻きの使われ方のトレンドを探る。
①のうち質問に対する回答は1つのみであったが、その他のコメントを含めて得られた回答は概ね次のとおりであった。
・祖母が料理に干瓢を使っていたため今でも使っている。
・家庭の中でイベントがあるときに干瓢を使用した料理を作る
・干瓢を購入する機会は少なくなっている。
・皆が、干瓢以外の好きな食材を使用する結果、干瓢を家庭料理で使用する機会は少なくなってきている
また、②から得られた内容は次のようなものであった。
・回転寿司屋から、干瓢まきが無くなってきている。
・江戸前寿司の中に巻きずしの一環として干瓢が入っている。
食文化が家庭、外食産業の双方から成り立っているものであるとすれば、次のことが言えよう。
・家庭
干瓢を使った料理は減っている。
自分の両親や祖父母から干瓢料理を受け継いでいるものの、干瓢を使った料理自体は減っている。
・外食産業
流行を取り入れる回転寿司においては一部店舗から干瓢巻きが消えている。
これに対し、江戸前寿司のような伝統的な寿司屋においては引き続き巻き寿司の1つとして干瓢巻きが存在している。
食文化における干瓢(かんぴょう)の今後
以上から、家庭における干瓢料理は減少傾向にあり、また、外食においても干瓢巻きは伝統的な寿司屋に存在するのみである。このように、食文化は家庭と外食産業どちらにおいても存在しているものの、家庭における食文化に関しては核家族化により継承者が次第に減少していくであろうこと、外食産業においても伝統的な寿司屋において販売されているが干瓢巻きをオーダーする者が少なくなっていくことが想像され次第にその姿を消す可能性がある。
このような理由から、文化における干瓢巻きの存在意義は、次第に薄まっている、あるいは、薄まっていくと我々は考えた。
次回は、栄養素としての干瓢の必要性について分析結果を報告する。
干瓢好きの皆さま、乞うご期待!!
※1 干瓢とは、ユウガオの果実を紐状に剥いて、乾燥させた食品である。かんぴょう巻きやちらし寿司、昆布巻きの紐として使われるのが一般的である。栃木県の特産物として有名?であり、国内収穫量の99%以上を栃木県が占めている。なお、国内収穫量は2018年時点で257トンであり、ピーク時(1978年)の収穫量5080トンのおよそ5%まで落ち込んでいる。