マンガとプロダクトプレイスメント第3章 前半
第3章前半:プロダクトプレイスメントって何?
筆者は悩んでいた。
漫画家が稼げるように!と意気込んではみたものの、これといったアイデアが何一つ浮かんでいなかったからだ。
いたずらに過ぎてゆく日々に焦燥感が拭えない。
「逃げちゃだめだ」と自分に言い聞かせつつも、気づけば、現実から逃げるようにアマゾンプライムで「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序」を視聴していた。
(ミサトさんに𠮟られてぇ~)
そんなことを思って観ていると、ふとあるシーンに目がとまった。
(あっ キリンビール・・・)
(おっ エビスビール 獺祭・・・)
作中に実在する商品が出ているではないか
このほかにも、UCCの缶コーヒーやピザハット、ローソン等が作中に登場していた。
クレジットを確認すると協力として当該企業が名を連ねている(キリンとサッポロの名がないのは謎だが)
おそらく、これらの企業は、資金を出資する代わりに広告として作中に自社の商品を出してもらっているのだろう。
そう。この広告手法こそが、本章のタイトルに入っているプロダクトプレイスメントである。
(おもしろい)
そう感じた筆者は、プロダクトプレイスメントについて調べてみた。
まず、プロダクトプレイスメントとはどういったものなのかについて説明しておこう。
日本インタラクティブ広告協会によれば 、プロダクトプレイスメントとは
「コンテンツの中に広告商品を取り込み、より自然に生活者に訴求する手法。例えば、映画やテレビドラマの中で主人公が商品・サービスを使ったり、特定の場所をよく訪れたりすることによって、生活者への印象づけを図る。」
と定義される。
プロダクトプレイスメントはハリウッド映画を中心に活用され、発展してきた手法である。プロダクトプレイスメントが積極的に活用されるようになったのは、1982年公開の「E.T」による成功を受けてからである。「E.T」に登場したリーシーズ・ピーシズ(Reese’s Pieces)というキャンディーの売上が公開後におよそ70%増加し話題になった。
2000年代後半頃から、デジタルビデオレコーダーが急速に普及し、テレビコマーシャルをスキップする視聴者が増加したことや、映画製作費が高騰したことにより、プロダクトプレイスメントはより積極的に活用されるようになっていった。
また、近年では、ネットフリックスやアマゾンプライムに代表されるビデオ・オンデマンド・サービスの利用者の急増による、テレビ視聴者の減少やインターネット広告等を回避するアプリの普及により、消費者にリーチするのがさらに困難になっており、プロダクトプレイスメントの需要はさらに増している。
グローバル市場規模は一貫して増加しており、PQ Mediaによれば 、2019年のグローバル市場規模は205.7億ドルに達し、2024年には328.5億ドルに達する見込みである。
また、Concave Brand Trackingによれば、2019年公開の「スパイダーマン」では、ディータ(Dita)というメガネブランドがおよそ8分20秒、ソニーがおよそ6分20秒、ナイキがおよそ3分30秒露出し、その広告効果は、ディータが約828万ドル、ソニーが約791万ドル、ナイキが約555万ドルと推計されている 。
また、アマゾンプライムのオリジナル作品である「THE BOYS」のシーズン2では、ソニーやスバル、コカ・コーラが製造するフレスカ(FRESCA)という飲料など多数の企業及びブランドが露出しており、各プロダクトプレイスメントを合計した広告効果は4,200万ドルに達すると推計されている 。
日本では2018年公開の映画「天気の子」(監督:新海誠)において、日清どん兵衛・湖池屋のポテトチップス・サントリーのビールなど多数の実在する製品が登場し、話題になった。
このように、
プロダクトプレイスメントは、世界的に重要な 広告手法として根付いており、これから先も、ますます需要が高まることが見込まれている。
では、マンガでプロダクトプレイスメントは行われているのか?
もちろん調べました。
後半へ続く(CV:キートン山田)
参考文献
・Concave Brand Tracking. (2020年10月14日). THE BOYS S2 product placement brands – top 10. 参照日: 2020年12月11日, 参照先: YouTube: https://www.youtube.com/watch?v=Jmgs63avFfs
・Concave Brand Tracking. (2020年4月22日). top 10 product placements in 2019 movies. 参照日: 2020年12月11日, 参照先: YouTube: https://www.youtube.com/watch?v=wBuUrJBLZV8
・一般社団法人 日本インタラクティブ広告協会(JIAA). (2019年7月18日). インターネット広告基礎用語集. 参照日: 2020年12月13日, 参照先: 日経クロストレンド: https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/18/00185/00314/
・平久保仲人、松前景雄. (2002). アメリカの広告業界がわかればマーケティングが見えてくる. 株式会社日本実業出版社