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犬との暮らし

 ”まのいいりょうし”を屋号に掲げる私たちは 常々”まのいい暮らし”について考えている。



我が家には2020年生まれのオス犬がいる。

ある日、猟師さんが猟犬を連れて山に入ったが、放した犬がなかなか帰ってこないなー、と探しに行くと、別の猟師さんが連れていた猟犬と結婚していたそうな。それでできたのが、うちのセバちゃんだ。縁あって、9ヶ月のときに我が家の一員となった。

セバの父犬は和歌山の熊野犬、母犬は宮崎の日向犬だそうで、生粋の猟犬雑種。猟犬は地域ごとに血を大切に種を守ってるものだそうだ。

うちの夫は罠猟師なので、犬と猟をすることはない。しかし、セバは、こちらは全く頼みも望みもしていないのに、シカや小さいイノシシをハントする。誰に教わったわけでも無いはずなのに、実に見事に仕留める。獲物の急所を的確に狙い、相手を動けなくさせるまでの少ない手数と順序の良さを見た時は、普段は人懐っこくて甘えてくるセバには、実は裏の顔がある、というスパイファミリーみたいなキャラを見た思いだった。

あまりに見事なハンターぶりに「猟犬の血」が How to ハントを教え伝えていることを、まざまざと知らされ、各地で血を大事に守っている事にも納得がいった。てか、血ってそんな事を伝達出来るアイテムなんだ!?と、血のポテンシャルにも驚く。



山の家で犬と暮らすことは、実に実に豊かなことだ。

最も恩恵を感じるのは、毎日の散歩。わたしは、自ら毎日欠かさずウォーキングを習慣化できるほどの強い意思を持ち合わせていない。暑い、寒い、眠い、時間がない、とかいう初歩的な理由で三日坊主以下で終わるタイプだ。それを強制的に毎日歩かせてくれる、お犬様の存在。雨でも雪でも、彼のために出動する。と思いきや、もはや自分が行きたくて積極的に出ている。

というのも、毎日ほぼ同じ道の往復だが、目に入る景色は1日として同じでは無いのだ。歩きだからこそ感じられる、匂いや音や空気の変化。季節の移ろいを五感で味わえる。同じ時間の同じ道、4年目に入ってなお、発見は増えるし感動は深まるし、察知する五感が確実に磨かれていることを実感出来て、もう、うなぎ上りで楽しい。

車で移動するばかりのわたしは、セバとの散歩がなければこの観察の魅力に気付けなかったかもしれない。この魅力は、山暮らしを数倍豊かにしてくれている。

こんなに喜び感動しながらも、セバがいなかったらきっと散歩を続けられる自信は無いんだけど。




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