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マンマン堂の創作落語『寿限松』
今回のnoteはまたしてもシールとは無関係。
近ごろ良くない意味で話題になっている一般社団法人落語協会。そこが主催した『第19回 2022年度 新作落語台本・脚本募集』に応募して落選したマンマン堂の落語作品「寿限松(じゅげまつ)」を紹介いたします。
前知識として、古典落語『寿限無』を知らない方はさっとで良いので予習を…
何となく知っているという方はそのままどうぞ!
↓ ↓ ↓
『寿限松』本題
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というわけでマンマン堂の創作落語は、落語の中で落語作品をマッシュアップするメタ的内容でした。実はこれは人生2作目の落語なのですが、処女作もメタ。メタ好きね〜♡
主役の禄七と久八は、マンマン堂が落語を書くときに、熊さん八っつぁんの代わりに登場させるレギュラー人物。名前は数字の6、7、8、9から。久八の妹がおかず(数)なので、何かしらの意味があったのかも知れないけど忘れました。
昭和・平成生まれの新古典を「擬古典(ぎこてん)落語」と呼んだりするそうなのですが、この作品もジャンルとしては「新作落語」よりも「擬古典落語」の仲間に入れてほしいところ。
もともと書いたのは何年も前で、たまたま今回の台本募集に気づいて引っ張り出して読み直したらめちゃくちゃ完成度高くて頁数もぴったり。すぐに送れるデータもできてて、しかも〆切一週間前とかだったので「これは運命だな…受賞する以外の未来はない」と勘違いして応募しました。
何がダメだったんだろう?と考えようとしたけれど、そもそも審査員やってるのが旧態依然とした老(以下自粛)
募集要項の審査員欄に柳家喬太郎師匠の名前があったので「師匠に読んでもらえるの!?」とワクワクしてたけど、審査員一同集まりました的な写真に写っていなくて本当に応募作品を読んでくれたのか謎。
喬太郎師匠がアレンジして演ってくれたら客席ドッカンドッカン沸かせると思うんだけどなぁ〜
新作落語と正方形シール
新作落語と正方形シールはどちらも元となるネタが存在していて、その上にあって初めて成り立つもの。ある種の二次創作であることが存在価値の要であり、そのフォーマットから不用意に切り離せないという点で似ているな、と思っています。
必要以上に意外性や時代性を取り入れると二次創作としての文脈から外れてしまい、面白味がなくなってしまう。かといって文脈から外に飛び出ないのも全く面白くない。
(※基準はただの主観なので線引きは人それぞれです)
それまでの文脈を丁寧に汲みつつ、どれだけ飛躍できるか(※飛躍≠突飛)。
年々そういった表現に惹かれるようになっているのは、歳を重ねるに連れ、時間の流れや出来事の積み重ねを実感するようになっているからでしょうかね。寄る年波に上手くライディングしたい…。
【新作】古典芸能【オススメ】
歌舞伎など古典芸能の新作/創作にも同じルールが当てはまると思っていて、この条件で傑作と感じるのは、
◎歌舞伎『鰯賣戀曳網』三島由紀夫作
◎狂言『鏡冠者』いとうせいこう脚本
の2作品。
どちらも歌舞伎や狂言のフォーマットを利用しつつ意外性のある新たな作品を生み出している。
歌舞伎では中村吉右衛門丈の手がけた『閻魔と政頼』(2007)も素晴らしかった記憶があります。相手役を務めた中村富十郎丈の豪快なおおらかさも全開で楽しかった。名優たちよ、ありがとう…。
新作落語だと桂枝雀師匠の『山のあなた』と『夢たまご』が突出しているように感じます。入りが現代なのに、アッという間に異世界へ突入。落語の場合は作品の舞台が現代に設定されていても演者によって古典のように聞こえるのが不思議ですね。
そして新作落語といえば柳家喬太郎師匠!
「健康保険の現状」をテーマにした『健保寄席』(2021)のオマケで作品作りについて話しているのが興味深い。映像内一本目の噺がどっちつかずの凡作になってしまっている理由がわかる(失礼)
自分の中で喬太郎といえば「コロッケそば」!本題ではなくマクラだけど、何度見ても抱腹絶倒!日頃の観察眼と想像力、会場を巻き込む構成力、万人に伝える表現力。
本題の「時そば」も、古典だか新作だかわからないお茶目な演出で傑作ポン!!
最後に
ここまで新作落語の話をしておいて何ですが、一番好きな現役の噺家は古典落語一筋の古今亭文菊師匠です!この方の落語は会場の空気が江戸になる(江戸に行ったことないけど明らかに時間の流れが変わる)…!
文菊落語の大きな魅力であるあったかい空気感は映像だといまいち伝わらないので、機会を作ってぜひ生で観てくださいな!!
蛇足:どうでもいいけど文菊師匠は生年月日が自分とほぼ一緒。どうでもいい~~~んん!!!