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心のカビと文学

   頭が痛い。頭の右側の後部に、鈍い痛みがある。こういう時は大抵胃の調子も悪い。抜けないガスが、腸の中をゆっくりと這って移動するのがわかる。心はずっと重たい湿気をまとっており、黒いカビのようなものが表面にびっしりと広がっている。

   洗うことの出来ない繊細な臓器は、既に手の施しようがないほどに汚染されていた。脳の毛細血管にプツプツと細かい気泡のようなものが現れ始める。それは急速に増え始め、太い血管も全てが膨らみ、とたんに頭全体が強く弾けた。弾けた頭からは大量の胞子が部屋中に広がって、床に散らばってゆく。大量の胞子。手で抱えることが不可能なほど、大量の胞子。
身体の方は微動だにせず、椅子の上に座っている。ノートパソコンのキーボードの上に両手をのせている。背筋は真っ直ぐしているようで、少し歪んでいる。

   しばらくすると、胞子がいくつかの集合体を作って文字を作り始めた。それらはゆっくりとパソコンの画面に入り込んで、文章を形成していく。500文字程の文章ができたところで、身体は席を立って床の上で寝っ転んだ。残ったフワフワの胞子が背中を優しく支える。布団のような触り心地の胞子は、そのまま身体全体を包み込んでいった。フワフワは心地よく、すごく安心のできるものだった。そして、私は眠った。静かに、ぐっすりと眠った。

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