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もうからない果物屋
12月21日、この日はうちの両親が夜遅くまで仕事が忙しいということで、俺が料理+買い出しへ行くことになった。我が家が行くスーパーは昔から決まっている。市営住宅に囲まれた安ーいスーパーだ。その隣には小さな果物屋さんがあって、とても元気で明るいおばちゃんがほぼ毎日営業している。
うちはおばちゃんと昔からの縁があって、我が家4人兄弟の長男がおばちゃんの長男の同級生。うちの次男がおばちゃんの娘さんの同級生である。次男が幼少期の頃は、イチゴとメロンが食べたいがためだけに娘さんにプロポーズをしたそうだ。なんとも現金なやつである。
そんなこともあって、小さい頃に母親の買い物について行った時はいつも「たいちゃんたいちゃん!」とかわいがってもらった。イチゴやミカンをよくお手頃価格で母に買わせてくれたため、俺もおばちゃんが大好きだった。しかし、中学生になってからは母と一緒に買い物に行くことはなかったので、それからこの果物屋さんに行くこともなかった。
先日、いつものスーパーでの買い物を終えたとき、ちょうどおばちゃんが1人でいたので声をかけてみた。「お久しぶりです!光(長男)と元気(次男)の弟のたいとですー!」と挨拶をしたところ、「ええ~!たいちゃ~ん!」と大はしゃぎして、同時に大量のミカンを袋に詰めてこちらに手渡してきた。驚いたのはこっちの方である。本当に間髪入れずにミカンたちを手に持たされた。一瞬の出来事だった。
「こんなにミカン頂いていいんですか!?」と聞いてもガン無視されて、「あら~!こんなに大人になって~!私も歳をとるはずだわ~!」とおばちゃんトークを展開していた。
ただ声をかけて挨拶をしただけなのに、こんなに喜んでくれて自分まで幸せな気持ちになった。ただ無料でミカンだけをもらって帰るのも申し訳なかったので、「せめて柿でも買わせてください」と伝えると、わざわざ店の奥から大きくておいしそうな柿を4つ袋に詰めてくれた。「はい、これで200円ね~。」と言っていたが、我々が話している真下では『柿1つ100円』と書いてある。計算がおかしい(笑)
そう思ったのもつかの間、俺の手のひらにある4枚の100玉から2枚だけ取った。そのうち、他のお客さんたちがわらわらと集まってきて、「またね~!元気でね~!」と半ば無理やりバイバイされた。
帰宅してから料理を済ませ、両親と夕食を食べた際にこの話をしたら
「儲からん果物屋さんやね~」と笑っていた。