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就業時間中にコンビニのカウンターから眺める景色は美しい

 就業時間中、隣の席の先輩と一緒に会社を出て近くのコンビニへと向かった。高齢化が進みすぎて老人ホームのようになったオフィスの中、ずっと椅子に座り続けてパソコンを睨んでいると目が目としての機能を失っていったからだ。これはサボりとは少し違う。目に異常をきたして病気になってから休職をするよりも、隙間時間に先輩とパワハラ上司への愚痴を吐きながらコンビニのカウンターでアイスを食べて心を休めるほうがよっぽど効率がいいと考えたからである。いわゆる今巷で話題の「タイパ」とよばれるものだ。

   会社に戻るときに上司と鉢合わせる時の言い訳を考えながら、はちみつレモンアイスを齧った。「美味しい」かつ「気持ち健康的」なこのアイスを食べるといつもより心が晴れるような気がする。

   窓の外を見ると小学生たちが帰路に就いていた。「小学生たちは気楽でいいなあ」と口から言葉がこぼれたが、よくよく考えると自分が当時小学生だった時はすでに「幼稚園児たちは気楽でいいなあ」と考えていたことを思い出した。キャッキャッとはしゃぐ彼らも彼らなりの苦労があるはずだ。いつなん時も他人へのリスペクトを忘れてはいけない。そんなことを頭のなかで巡らせているうちにアイスは少し溶けて、目の前にある住宅街の一角は暖かい陽の光に包まれていた。

   仕事の事を忘れて眺めていた景色は、まるで映画のワンシーンのように非日常的で美しく感じるものだった。

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