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牟呼栗多
先週末は木、金と一泊二日で北陸へ。戻った土日は此方の親戚らと妻との顔合わせ等々。やっと落ち着いたのが昨夜のことであった。疲労とお酒の等価交換をせっせと営みながら、それだけでは味気がないから二本ほど映画を観ることに。
先ずは溝口健二の『雨月物語』を。描かれるのは小泉八雲が惚れ込んだ日本的怪異そのものであろう。京マチ子の演じる死霊像も、泉鏡花『高野聖』などとも重なる「女性の恐さ観」が垣間見えて面白い。幽玄に迫る作品であった。そう、上田秋成も読まなくては。
二本目は荻上直子監督の『川っペりムコリッタ』で、作品のテイストが個人的に大の好みであった。遠藤周作は生活と人生は似て非なるものだと言ったそうだが、この手の生活と人生とを重ねて見せられることには滅法弱い。それぞれの「生」のかたちと「死」との距離感。光の織り成す美しいカットと画面の湿度はまさに夏であり、その季節こそが生と死のあわいであるのだ。
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今日の富士は綺麗である。新幹線の小窓より覗くのは久方ぶりか。