ノースマン 導かれし傍観者の
境内に雪が残るなか、その寒紅梅は輝きを放つ。大寒波などあろうとも季節の移り変わりは少しづつ始まっている。ましてや人間界の出来事など意に介さない。彼らは彼らの営みを紡ぐのみ。
ある男たちの映画を観た。雄大という言葉が綺麗に嵌め込まれた寒冷地の風景が印象的だった。男たちには信じているものがある。言うなれば生き方を貫く信条の如きもの。
男たちは生存や生活よりも信条に重きを置く。例え約束された未来があったとて、信条に背くことは出来ない。ただ、満足気に往生を遂げる。
彼らは野蛮だ。彼らによって多くの血が流れる。無論、彼らを突き動かすのは命よりも崇高な信条であるから、罪悪感の類の一切を見せない。
信条とは信仰と同義である。全体重を以てして縋ることによって自らの行為の一切を信仰に委ねる。傍から見て如何に常軌を逸しているとて、彼らには彼らの常軌がある。
劇場のシートに腰掛けて愚鈍な復讐劇を眺める自身が、人類のあれこれをは眺めながらも、無関心を貫き自らの時間を刻む植物に重なる。
構図はあらぬ方向に拡がり、今度は馬鹿馬鹿しく思えた男たちに自らの姿が重なる。ああ、そうだよな。我が人生と云う名の喜劇、然と見届けるがよい。ウィスキーでもないと観てらんないかも知らんがね。愉しんでくれたまえ。