連休の備忘〈こどもの日〉
京都へ帰るのであるが、渋滞だけはなんとしても避けたい。ゆえに時間調整的性格を孕んだぶらぶらを実家近辺にて行なうわけである。朝は徒歩圏内とも言える月照寺へ。歴代松江藩主の菩提寺であるのだが、その廟門の数々に施された彫刻には驚かされた。繊細さと大胆さ、荘厳さに遊び心と多種多様な作風で、どれも劣らず巧みである。
それからフランスよりシェフとして松江に戻ってきた同級生、彼の実家であるケーキ店へ。この春から空きスペースでランチの営業を初めたとのことで、盛況な様子。次に帰省した際は是非とも食べに行きたい。昼前にはこれまた近くの佐陀神社に参拝。なんど見ても見事な佇まい、惚れ惚れする。
一時前に出松江。大山と蒜山の中間に位置する鬼女台にて野掛け。標高ゆえか桜は未だ散り始めである。高原の風景は見慣れないものである。あまりにも雄大な緑には海を連想せざるを得ない。あの辺りが深いとところで、その辺りは浅瀬、という具合。これは大地の果て、その遥か高くに広がる楽園か。宵に明け、そして夜なぞにはどのような光景が現れるのであろうか。
鬼女台への道中で〈日本で最も美しい村〉なる看板が目に入った。どうやら新庄村、出雲街道における宿場町として栄えた村とのこと。虫、蛙に鳥の音、そこに流水と木の葉の揺れる音。人通りは何処へ、村の長閑さはさながら田舎の懐かしき風景である。水路脇の生簀に泳ぐ鯉の彩りも、これまた風流なものだ。
街道筋の桜並木は〈がいせん桜〉という名があるらしく、日露戦争時の戦勝記念で植えられたものらしい。たしかに、宿場町と桜並木というのは珍しい。次は桜の季節、と思わんこともないが、田舎風景はなんといっても夏である。そういう育ちをしたのだから、これは仕方がない性分だ。
そうこうして、多少の渋滞に巻き込まれつつも無事に帰京。よい連休であった。