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場所を学ぶ

ちくま学芸文庫はエドワード・ウルフ著『場所の現象学』を4/5ほど読み進める、とともに深まる深まる。はじめて文化地理学なる学問領域に触れたのは、もう2年ほど前になるのかしら。いや、そんなに経ってないかな。当時この書籍を読んでりゃあ...と思うばかり。

ヴィトゲンシュタインが、「考えうる限りの科学的疑問がすべて解かれた後も、人間の生に関する問題は全く手つかずのまま残る」(Passmore, 1968, p.472)というのは言いすぎだろうけれども、一般的に科学の問題や手法は生きられた世界の事柄を扱うにはあまり価値を持たないことは明らかである。
p.207 没場所性

科学の言葉を使わず、つまりきわめて現象学的な視点より、〈場所〉に対して真正面からぶつかりに行く様は読んでいて清々するほど。科学と距離を置いた言説がどこまで社会的に効力を持つか、という点は難しいものがあるのだけれど。

私たちの場所の経験、とくに故郷についての経験は、弁証法的なものである。つまり、そこに留まる欲求とそこから逃れようとする欲求のバランスをとることである。両者の欲求の一方があまりに簡単に満たされてしまうと、ノスタルジアや根なし草になったという思いに悩まされるか、その場所に抑圧され束縛されているという感覚を伴うメランコリアにさいなまれるかのどちらかである。
p.112 場所の本質

その分と言ってはなんだが、読み物としての面白さは折り紙付き。具体的固有名詞を用いた各々の例もまた良し。没場所性の項目が個人的には一番満足できた。現代人に対する批判が些か痛烈過ぎないか、とは思うけども。

まあ、気になったら是非です。

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