happy we'll be beyond the sea
今月の〈観る会〉のことも書いておかねばならん。作品は五十嵐耕平が監督を務める日仏合作映画の『SUPER HAPPY FOREVER(2024)』である。上映の一時間ほど前、会話の中で「SUPER─」を初めて口にし、なんとも乾燥無味なその題名を意識した。上映後はこの横文字の月並み具合がなんとも言えぬ後味となって、頭の中で反芻されるのであるから面白い。
偶然の連なりを淡々と描くのは、物語の解体ないし日常即ち"いま"への回帰ではなかろうか。映し出される映像は力感なく、劇より情調の連なりを生み出している。偶然の解体によって物語を紡いだのがタランティーノの『パルプ・フィクション(1994)』であるとすれば、その逆のアプローチを試みたのが本作であろう。
喪失が埋まることはないし、宮田(演じたのは『悪は存在しない』のコンサル)はただ可哀想であるし、もちろん幽霊も表れない。そのうえ舞台となる風景は抜けっぱなしときた。引き算というかなんというか、映像が志向のみによって成立しているかのような印象である。素材有りきの感が全くない。なんだか悔しいまである。
概して、心地好く開けた作品である。そう出会える類のものではない。大変良かった。恋だのなんだのは、私にゃ語れない。