金曜夜には君と映画を
昨日公開の映画『ピンク・クラウド』を鑑賞した。〈月1映画絶対観る会(会員2名)〉3度目の開催である。個人的に痛快作であった。
上記記事の如く憂鬱且つ惨憺たる日常を描いた文学作品 一それも全て〈家庭〉が舞台である一 を直近で数冊読んだ私にとって、本作はエンターテイメントとでも言えよう。救いはいくらでもあるではないか。
本作、『ピンク・クラウド』は突如発生した毒性の雲 一触れると10秒で死に至る一 の影響で、室内から出られなくなった人々を描く。徐々に狂ってゆく人々、同じ空間内に閉じ込められた人物等の軋轢、先が見えない不安等々、文豪らもニッコリの様相を呈してゆく。
面白い事実がひとつありましてね。かなりストレートなロックダウン風刺かと思いきや、本作が書かれたのは2017年、そして撮影されたのは2019年なんです。何の因果かその翌年から作中にリンクする現実世界になったという...
一向に開発されない防護マスク・防護服や、序盤以降明らかに描かれない雲での死亡シーン、何故か強調されるピンクジュース、そしてラストシーンなど考察要素諸々は一旦無視で。
現実を考えさせられる、と言うよりは作中世界に無意識のうちに自分を置いてしまう、そんな作品だった。様々な境遇に置かれた人物らが登場するが、そのどれもが悲惨だ。そのひとつひとつに自分を置いてみる。
凡そ100分の間そんな状態に置かれた後、劇場外の地上に出たときの開放感たるや、言葉にし難いものがあった。言うまでもないが助演男優賞は閉塞感あるミニシアターの劇場である。
VRゴーグル登場前後からのラストシーンまでの流れは芸術点が限界突破をしていた。とち狂ったママンと謎の信仰に目覚めつつあるパパ。ここまでくるともう笑えてしまう。
性の本能の強靭さであったり、適応と生存の相関性など、生物としての人間観察も楽しい。そうそう、私は映画館派過激派ですが、本作は家の中での鑑賞もオススメでございます。自宅ならではの臨場感があるかもしれません。