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とりとめなき16

『みずうみ』を帰りのバスで読了(二三日前)。作品は勿論のこと、解説がまた素晴らしいのなんの。

一体、川端氏の作家的進展、長い作品系列による作家の自己実現は、ある短い標語のようなもので捉えるには困難である。

氏の姿は定着したと思うと、また忽ち崩れて、別の方向に美しい渦を作る。その渦もまたひとときであり、また違う方向に逃げ水のように消えたと思うと、意外なところに、意外な姿をみせる。

それはバレーの踊り子が舞台のいろいろな場所に現われては、また消えて行き、次の瞬間にまた新たな旋律に誘われて、別の方向から踊りでるのにも似ている。

川端康成『みずうみ』
新潮文庫/解説 より

中村真一郎氏のものである。「貴方の本、是非とも買わせて下さい」という気持ちになって、調べてみれば、お馴染みの〈講談社文芸文庫〉の中にもいくつかお名前がみえる。店だの市だので目に付いたら直ぐに掻っ攫ってやるのだ...!!!!

100円

さて、こちらの『みずうみ』ですが、購入したのはなんとも珍しい場所で。島根県は斐川、"日本三大美人の湯"とも称される湯の川温泉の、〈四季荘〉という所でして。サウナが有名な温泉施設なのですけれども、その一角に草臥れた古本コーナーがあったのです。

郷土史関連やらなんやら、多少なりとも拘りを持って並べられたのであろう書棚のなかで、一番に目に留まったのがこの本でした。当時、川端康成というと『古都』くらいしか読んでいなかったのですが。それだけのこと。

"解説"のあれこれに戻る(戻ったというのか)。その日、「さて明日は何を持っていこうか」なんて本棚を覗いていて、手に取ったのが漱石の『門』で。

裏表紙に踊る、解説の抜粋文に目を通すと、そこには"辻邦生"の名があった。解説の部分を開いて、目を通したりなんてしていたら、三部作の終章ということが分かったから、それで『みずうみ』を持っていくことにして、なんて流れだったのだけど。

解説に焦点を合わすのもいいものだな、なんて。いつになくフワフワだ...

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