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ゆとりのゲーム感想「Super Meet Boy」
【はじめに】
テレビゲームの歴史の中で横スクロールアクションは長く、今でも絶大な人気を誇っている。1985年に発売された「スーパーマリオブラザーズ」を皮切りに多くのフォロワー作品や新たな要素を付け加えたゲームが市場に台頭していった。
マリオフォロワーが多く作られることによりジャンルの成熟も加速し、新しく出てくる2Dアクションゲームは他のと差別化するために複雑になっていった。今では「メトロイドヴァニア」や「ローグライト」と呼ばれるジャンルがジャンル内で特に人気だと思われる。
その一方でファミコン初期に登場したような単純な横スクロールアクションは「2Dプラットフォーマー」と呼ばれるようになり、第一線からは退いたようだ。・・・と書いてはいるのだが、どうにもプラットフォーマーという呼び名には慣れないなぁ。全部のゲーム、言っちゃえばプラットフォーマーみたいなものなんじゃないの?特徴が無いゲームなのに、他のジャンルと住み分けを図るために無理やりジャンルを付けている感が否めない。
調べてみると、
プラットフォーム・ゲーム(英:platform game)は、コンピュータゲームのジャンルの一つ。キャラクターをジャンプさせて足場から足場に跳び移ったり、障害物を跳び越えたりして進むゲームをいう。
やっぱり大体のゲームはプラットフォームゲームやんけ!!
といったツッコミはさておいて、何か違和感があるムズムズとさせるジャンルである。
しかし、今の時代に2Dマリオと類似したゲームを頑張って作っても誰にも見向きもされないので、さらにこのジャンルの中でも独自の色を出したジャンルに細分化されていった。その中の一つが「死にゲー」である。
死にゲーというのは、読んで字の如く、クリアするのに何度も死ぬのが前提となっているゲームとなっている。他にも単純な操作、極力無駄を省いたゲームデザインが特徴である。別に2Dだけに呼ばれるジャンルではなく、「ダークソウルシリーズ」や「SEKIRO」とかの3Dアクションゲームにも呼ばれることが多い。
今回紹介する「Super Meat Boy」もそんな「死にゲー」で「2Dプラットフォーマー」なゲームである。
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【ゲーム概要】
Super Meat Boyは、2010年にTeamMeatより開発、販売された横スクロールアクションゲームである。対応ハードは、Xbox360、Microsoft Windows、OS X、
Linux、PlayStation 4、 PlayStation Vita、Wii U、Nintendo Switchと多岐にわたる。今回私はSwitchでプレイした。
先程説明した「2Dプラットフォーマー」なので、ジャンプで障害物を飛び越え、ゴールを目指す単純な横スクロールアクションになっている。マリオと違い、自分で攻撃する術も無い。横移動、ダッシュ、ジャンプ(壁ジャンプもできる)だけでステージを攻略することとなる。
このゲームの最大の特徴は、
死ぬ!
死ぬ!
死にまくる!!!
落下で死ぬ、トゲに刺さって死ぬ、ミサイルをぶち込まれて死ぬ、レーザーで焼かれて死ぬetc.....酷いのだと塩に触れて死ぬってのもあった。何で!?ミートだから!(肉に塩をかけたら身が引き締まって強くなりそうなものだが、ミート君は塩に触れたら死んでしまうらしい)
スペランカーぐらい貧弱とは言わないが、ゲームキャラの中でもかなり貧弱な方じゃないかしら。
そして、死ぬ時は爆発して辺りに肉片を撒き散らして死ぬ。意図的に作られた理不尽な難易度とギミックに対してプレイヤーができるアクションの少なさが絡みに絡みまくってもう大爆発!!!私もプレイしてて何回か脳が爆発しそうになった。
そんなゲームである。
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あちこちに即死トラップがあるステージを
次々と攻略する必要がある
2010年というと、「I wanna be the Guy(以下アイワナ)」や「vvvvvv」といった死にゲーが流行った時代だと思う。何でこんなに流行ったんだろうな。物珍しかったのか?本作も2008年にリリースされたアイワナのフォロワー作品で、高難易度で理不尽なファミコンのようなゲームだ。
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同じプラットフォームゲーム
高難易度、豊富なパロディーネタといった共通点も多数
といっても、ファミコンのダメだった所は殆ど排除しているように思える。ロード時間は皆無(逆にこの内容でロード時間あったら普通にキレてる)、リトライする時の時間もほぼ無い、残機無限といったリプレイをする時のストレスは無い。
マリオと同じように各ワールドに分かれていてクリア後のエクストラも含め、7つのワールドがある。一つのステージには大体20ステージぐらいで構成されている(一部例外あり)ので、100以上のステージが用意されていることになる。しかも、やり込み要素としてタイムアタックや隠しアイテムの包帯集め、ステージクリア後の「ダークワールド」という裏面も用意されているので、ボリュームはとてつもなく多い。
が、一つのステージをクリアするのに要する時間は僅か10秒程度。長くても30秒だ。ステージの短さもあるが、プレイヤーの移動速度がバカ早いので、ゴールまでの道筋をパターン化するのは容易だと思う。
ステージでいうと、さらにワープゾーンもある。ワープゾーンは少し特殊で、1-1から1-3のように複数のステージをクリアする必要があり、さらに大体のステージに残機が設定されている。ゲームオーバーになるとワープゾーンの最初からやり直しだ。難易度は通常と同じぐらいの激ムズなので、少し理不尽さを感じてしまうかもしれない。クリアすると、包帯を獲得できたり、プレイアブルキャラを解禁できたりする。
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挿入される 全部分かった人はすごい
私は殆ど分からなかった
各ワールドにはボスが配置されており、ボスを倒すと次のワールドに行ける。ボスと戦うにはそのワールドの一定のステージをクリアすると戦うことができるようになるらしい。言っちゃえば、「クリアするのが厳しいステージはすっ飛ばしてもいいよ」ということなんだろう。作者もこのゲームが常人ならすぐに投げるだろうと見越してたのだ。今となっては、こういうゆとり仕様は今のマリオとかで見かけることは多いのだが、当時としては珍しかったと思う。ただ、どうしてもクリアできないみたいなステージがこのゲームにはたくさんあるので、1個ステージ飛ばしてまた似たようなステージで絶望、みたいな展開は想像に容易いが・・・ボスは任天堂のゲームにありがちな3回攻撃すれば倒せるものが殆ど。といっても自らが攻撃することはできない。なので、ステージの仕掛けを使って自傷させるようにひたすら攻撃を誘って避ける、というのが基本のパターンだ。他には、スーパードンキーコング2のスクリーチレースみたいなレースで相手より先にゴールをすれば勝ち、みたいなのもある。
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世界観はアイコンから見て分かる通り、海外のアニメとか海外の子供向けYouTubeのアニメとかにありそうな記号的でファンシーな感じだが、所詮は肉塊が主人公なので、グロかったり、ブラックジョークが連発してたり、シュールなシーンも多かった。ストーリーも主人公の恋人が博士みたいな悪役にさらわれてしまったので、取り返しに行く!みたいなオールドスタイル。途中でムービーが挟まり、セリフや音声は無いが何となく分かる感じのストーリーだ。まぁ、この世界観に重厚なストーリーはいらないので、こういう軽い感じでいいと思う。というか、このゲームはストーリーというより道中の展開がかなりシュールで面白いので、プレイする時は全然本筋と関係ないムービーを見て楽しんで欲しい。
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↑のムービーは森に住んでいたリス達がミート君のせいで
ほぼ惨殺されてしまった場面
ここまでがゲームの概要。いつも思うけど、長いな。
【プレイしての感想】
そんで、ここからがプレイしての感想。名前は聞いたことがあって、どんなゲームかは知っていたが、特にキッカケが無くやってこなかった。プレイしてみたらその日のうちに表面全てクリアし、タイムアタックも全て終わらした。時間は7時間ぐらい。この手のゲームは好きだし、その日のうちに終わらしたかったのだ。
さて、このゲームをプレイして思ったのはやはり難しいな、っていう感じ。ファミコン程ではないが理不尽さも全体的に感じられた。これは、私がアクションゲームが極端に下手だという訳では無い。ファミコンだとロックマンや魔界村、忍者龍剣伝とかは普通にクリアできる。本作に似たアイワナも10年くらい前にクリアしている。最近だとcelesteもクリアした。だから、全くできないという訳では無い。
にしても、難しい!ステージによっては100回ぐらい死んでる。たかだか15秒で終わるステージをだ。しかも、ステージをクリアするとそのステージのリプレイが見れるんだが、クリアした時のだけでなく、それまでの失敗したものも全てリプレイで見せてくれる。これが中々面白くて、大量のミート君がボチャボチャボチャ!!と音を立てながら死んでいき、唯一1人だけゴールにたどり着く、というデスゲームみたいな映像になる。このリプレイのシステム良いな。他にも導入してくれないかなぁ。
この難しさは確かに一つの魅力でもあると思うし、ひたすらに高難易度が好きな人はたまらないだろう。かく言う自分もこういうのは好きなのだ。ただ、これは2D死にゲーの中では何とも言えない絶妙な立ち位置だと思う。アイワナ程難しくないし、celesteのように難しいけどギリギリクリアできる程でも無い。つまり、難易度の面では最凶級でもないし、クリアした時の達成感よりもストレスが貯まりやすいゲームだ。
何よりこのゲームをプレイして1番印象に残ったのはアイワナである。どういうことかって?実はこのゲーム、リスペクト元のアイワナとコラボしているのだ。アイワナの主人公であるキッド君がプレイアブルキャラとして存在するのだが、それを解禁するために必要なのが、キッド君を操作してアイワナのステージをクリアすることだった。このアイワナステージ、3つしかないのだが、おそらく4時間は平気でかかっている。たかだか3つのステージに本作は押しつぶされてしまったのだ。もちろん、やっている時は絶望したし、何度か休憩を挟んでいたのだが、クリアした時はめちゃくちゃ嬉しかった。これが死にゲーの魅力である。何度も叩きのめされて、知らぬ間に自分の指がそのステージをクリアする専用の指に改造されていく。そして、完全にステージを熟知して何とかクリア。たまらない快感である。
そして、ミートボーイに戻る。うーん・・・微妙。確かに難しいのだが、まだクリアできる難易度。しかし、アイワナと同じく何度もプレイしていくうちにパターンを構築してそのパターン通りにプレイヤーを走らせるだけ。アイワナと同じぐらいストレスが貯まるのに、クリアしても快感はほんの少し。つまらないゲームでは無いのだが、アクションの気持ちよさがまるで感じられないのだ。
操作感覚は良好。ファミコンよりもっさり過ぎず、敏感すぎずと言った感じ。細かい操作を要求されるから当たり前か。走るスピードもとてつもなく速いので、死ぬ要素が無い序盤は気持ちいいアクションが体感できた。この操作感覚で2Dソニックやりてぇ〜と思いながら何度も勢いよくトゲに飛び込んで死んだ。
音楽はゲーム音楽らしからぬハードロックだったりハードコアだったり。何故かメガドラ臭がしたのは私だけだろうか。全体のクオリティは高い。カッコイイのもあるし、終盤ではらしくない壮大なものもあった。死んだ時も曲が1回1回止まらないのも良い。私はワールド5の裏面とワールド7のステージBGMが好きだった。
うーん、ここまで書いていて思ったのは、何だかソニックに似てるなぁ・・・ソニックも2Dアクションとして初期の段階から完成されていて、面白い。スピードを活かしたギミックや操作感はマリオやカービィには無い魅力だと思う。ただ、他人には勧めずらい。結局、早い段階で動きのパターン化を強いられていることに気づき、何度も繰り返し同じ動きをすることが最適の攻略法だと誰でも理解してしまう。そうなると、気持ちよさなんかは微塵に感じられないし、実際にプレイするより動画とかで上手い人の動きを見ていた方が楽しい。アクションゲームって難しいよなぁ。
【まとめ】
プレイしている時はそこそこ楽しめたのに、クリアすると何も残らなかったことに気づいて自分でも驚いている。celesteと比べてアドリブも効かないし、アイワナ程インパクトは薄い。何とも他人には勧められないタイトルである。「死にゲー」が好きな人やcelesteぐらいなら余裕でクリア出来る程の達人なら気持ちよさを感じながらプレイ出来る丁度いいバランスだと思ってもらえるのかも。もしくは、普段からアクションはそんなにやってない人だと達成感を感じられるのかなぁ。まぁ、ここまで酷評しながらも裏面のタイムアタックをしているんだから何だかんだ完成度は高いのか、自分がよほどの死にゲー狂いなのかはまだ分からないままだ。セールで600円くらいで安いので、気になった方や腕に自信のある方はやって欲しい。
(定期的にセールをやっているのでセール時に買うのが吉)