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卒業(レースクィーン・中井翼編)1

プロローグ

 レースクィーンの中井翼なかい・つばさと武田はレースコースで知り合ったが、彼女は初めからパパ活目的だった。レースクィーンをしながら、撮影のモデルやイベントコンパニオンをしていたが、生活が安定しないため、板垣陽子いたがき・ようこに頼んで武田を紹介してもらったのだ。
 武田は当時シータマ(志村珠江しむら・たまえ)とオンオフしていたので、中井とはベタベタ付き合うつもりはなく、レースのない時だけ限定で援助することにしていた。レースがあればチームから日給は出る。イベントがあれば、イベント会社から日給は出る。ちょっと売れれば雑誌の取材やメディアへの露出は増える。そこからは自力で頑張れという意味だった。


 スポーツ大好きでアクティブな中井はサッカーの試合、野球の試合などに武田を誘った。武田もそういう機会が少なかったから一緒に出掛け、楽しんだ。
 中井がステディなパートナーがいなかったのは、ほとんどの相手に対して、満足できなかったからだ。ほとんどの相手は「俺はお前を胸で選んだ」と中井のGカップバストが付き合う理由と言って、胸はよくいじられるが正直なところセックスは下手でうんざりしていた。

「田舎に帰って見合いでもしようかと思ってるの」

 そんな寂しいことを時々言う女性だった。武田はどうしてこの子の良さを分かってくれる男性がいないのか不思議に思っていた。よく気が付くし、礼儀正しい。派手な見た目の割には仕事もきっちりで、普通の会社務めをしても問題はないレベルだった。もしかしたら派手な見た目がすべての問題の根本原因だったのかもしれない。
 スペックだけ並べると身長157とレースクィーンにしては小さい。バスト88、ウェスト62、ヒップ88とダンベル型の体型で日本人にしてはグラマー。運動神経は良く、胸が大きくなり始める前は高跳びの選手をしていた。身長が伸びなくなってから胸と尻が大きくなったとは本人の弁。
 レースチームのコスチュームも想像通りパンパンで4人のチームクィーンが一緒に写真を撮る際はひし形に並び、中井が前で少し屈んで胸の谷間を強調するのがお約束だった。
 初めてのドライブデートで中井にシートベルトを締めた時に、あまりにも胸の谷間深くにベルトが食い込むので、さすがの武田も苦笑いしてしまった。

中井のGカップ

「翼ちゃん、本当に大きいね」
「え、形ですよ」
「公式には88あるんでしょ?」
「ごめんなさい、実際には91あるんだけど、チームのほかの子が82とか84だから88にしているんです」
「過少申告か」
「女の子同士って難しいんです」
「シータマが監督とオーナーとドライバーとチームの子が微妙なバランスで成り立っているから、誰かがこれを崩すとかなり大変だって言ってたね」
「珠江さんはいいけど、後の二人が結構メディア露出に拘って、やっぱり芸能界に行きたいらしく、コネ作りの為にチーム内で付き合っていて」
「え、本当?」
「セイラさんは監督、ミーさんは橋本君と付き合っていて、でアタシはオーナーに口説かれていて、オーナーと fxck しなかったら来年の更新はしないみたいに言われて。
 セクハラですよね、これ?」
「立派なセクハラだ。
 しかし、畑野さん、奥さんとラブラブなのに、翼ちゃんを口説いているんだ」
「そうなんです、どう思います?
 因みに、奥さんってお金持ちのお嬢さんでオーナーが遊んで暮らせるのは奥さんの実家が太いからなのに、調子に乗ってアタシ達レースクィーンを口説いたり、あ、別のチームのも、取材に来る雑誌の記者とワンナイしたり、ホント、もっと真面目な世界かと思ったのに」
「お金が集まるところに人は群がり、力を誇示し、媚を売る」
「アタシには性を売り買いしているように見えて、ちょっと嫌だな。
 しかも、誹謗中傷って言うの、チーム・スピリットのヒビキさんから『翼ちゃんってパパ活してるの?』って言われたんですよ、先日」
「してるの?」
「いや、それは…
 なんか、アタシがドライバーや監督とってないからって、『外でやっているの?』とか、『パパがいて、愛人してるの?』みたいに言われて、びっくりした。
 真面目にレースクィーンしてるだけなのに。
 まぁ、確かにパパ活のところ突っ込まれるとちょっと痛いけど、アタシは彼氏いるからね」
「これってパパ活なんだ?」
「ごめんなさい、哲也さんならガチで来ないと思ったから」
「ガチね」

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八反満
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