月と六文銭・第十四章(32)
田口静香の話は続いていた。厚労省での新薬承認を巡る不思議な事件の話に武田は引き込まれ、その先の展開に興味を示していた。
田口扮するビジネスウーマン高島都はターゲット・元軍人で現製薬会社営業担当のネイサン・ウェインスタインとのベッドインで彼の好きな行為を逆手にとって、夜の主導権を握ろうと…。
~ファラデーの揺り籠~(32)
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仕方がないわ、という顔をして、都は意を決して口を被せていった。
ところが、都が飲み込めるよりも速いスピードで奥までネイサンがペニスを押し込んできた。
やったぁ、チャンス!
都はウウッと喉を詰まらせ、涙目になって、手でネイサンの太腿を押し返して、口からペニスを吐き出した。ゴホゴホと激しい咳をしながら、上目遣いに今夜のパートナーに訴えた。
「いや!そんな激しくしないで!苦しいわ」
クスンクスンと都が泣き始めてしまった。
「ミヤコ、ごめんよ。あまりにも気持ちが良いもんだから」
「私、そんなに経験ないのよ!そんな風に入れられたら、息ができないわ」
本格的に泣き出した都の隣にネイサンが来て、慰めた。
「ごめんなさい」
都はウン、ウンと頷き、ネイサンの肩に顔を乗せて少し泣いた。
「シャワー、一緒に入らなかったのを悪いと思ったから頑張ったのに、あんなに奥に突っ込むなんてひどいわ。私を苦しめたいの?私への罰なの?」
う、まずい、女性が感情的になっている。もうどうにもならないぞ。ネイサンは息を整え、都を抱え上げ、体を拭き、涙を拭き、ベッドへ連れて行った。
「ごめんなさい、落ち着くまでゆっくりしよう」
都はまたウン、ウンと頷き、枕を腹の前に抱え、ネイサンがバスルームを片付けるのを眺めていた。
後でチームメイトのデイヴィッドから「オスカー、あげるよ」と言われるほど監視カメラにはリアリティのある演技と映ったようだ。
ネイサンが戻ってきて、都の横に腰掛けた。
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