月と六文銭・第十四章(28)
田口静香の話は続いていた。厚労省での新薬承認を巡る不思議な事件の話に武田は引き込まれ、その先の展開に興味を示していた。
ターゲットの秘密を探り出せなかった高島都は、ネイサン・ウェインスタインとの再度のベッドインに向け、いろいろ準備をしていた。昼間、新しい秘密兵器も届いたことだし…。
~ファラデーの揺り籠~(28)
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廊下を歩きながら、都は服部のスマートウォッチの計測結果を思い出していた。
この子、毎晩している…。行為が好きと言うよりもストレス発散とか、承認欲求だろうと思われる。服部のパートナーは毎晩付き合っていてタフなのね、と感心することしきりだ。
次に都の頭に浮かんだのは、狙撃を依頼しようと考えている日本に配置されている暗号名アルテミスという名のスナイパー。彼のドスィエからは相当な女好きだと読み取れた。常にモデルやレースクィーンを相手にしている。報告書通りにタフな男なら、自分と毎晩するとか、自分が白目を向くほどイかせてくれるんじゃないか?と本題とは違う期待を持ち始めていた。
いままでそれができる男はいなかったし、これからも現れないだろうと思っていた。毎晩してくれるなんて、ある意味、普通の女性は幸せだよね。
私たちの世界ではすべてが戦場だ、ベッドの中も含め。米国はそんなことをさせないだろうし、正式には認めないだろう。モサドは女性エイジェントがセックスを武器にしたことが過去にあったと認めていた。今は公式にはそういうミッションはさせていないと言っているが、国や家族を守るためなら、イスラエル人ではない自分でもセックスを武器に戦うだろうと思った。いや実際に今はそうしている面がある、守るべき家族はいないが…。
このアルテミスと同棲したら、毎晩抱いてくれるだろうか?私に安心感を与えてくれるだろうか?どうしてそこまでドスィエの中でしか知らない男性に妄想が抱けるのか自分でも不思議だった。
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