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月と六文銭・第十六章(16)
武田は根本的な失陥を抱えていた。"好奇心が旺盛過ぎて"自分を危険な状況に陥れる関係にも平気で突入してしまうのだった。
武田は恋人・三枝のぞみに隠れて、田口静香という彼の秘密の仕事での同僚と逢瀬を楽しんでいた。身長は同じくらいだが、スレンダーなのぞみに比べ、田口はメリハリのあるボディに加え、男性を虜にする様々な夜のテクニックを持っていた。
その田口とホテルの部屋の窓辺で情熱的なスタートを切った今夜の逢瀬は、どこへ向かうのか…
~充満激情~
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二人でゆっくりと湯船に浸かりながら、武田は女性の神秘について考えていたら、田口から突っ込まれた。
「哲也さんは女性とのセックスで自分の探求心を満たしたいみたいですよね?」
「いろいろなことを知りたいということですか、それともたくさんの女性を知りたいという意味ですか?」
「いろいろ知りたい、という感じがします。
数だけ、つまり、たくさん知りたいだけなら、何度も同じ女性と会うことはしなくてもいいはずですから。
それよりもその女性の性癖だったり、アソコの感じだったり、オーラルのうまさだったりを知りたいという感じかな」
「静香さんのことを知って、静香さんみたいに特殊な能力を持っている女性が世の中にどれくらいいるのか知りたくなった」
「それは後付けのいいわけでしょ?
アタシと知り合う前からモデルやレースクィーンとはいろいろ楽しんでいましたよね?」
「そうだけど…」
「OLとか人妻とかシングルマザーとか、ストライクゾーンは意外と広めだし…」
「いろいろな女性がいますから…」
「アタシのような体の構造をした女性はあまりいないと思います。
もちろん、アタシだけということはないし、他の女性が気が付いていないとか、知らないこともあると思います。
女性のそういう価値は男性が決める面があると思いますし、名器なんて男性が勝手に決めて喜んでいるものでしょ?」
「そうなんでしょうね。
まぁ、一応、医学的には膣の構造などの根拠を示せるとは思うけど、男性がそれに価値を見出したからこそ、理想の女性器なんてものが出来上がってしまったのでしょうね」
「構造と言われれば、アタシの膣内は通り道の角度、曲がり具合と筋肉の発達の仕方が平均的な女性と違うらしいので、哲也さんだけでなく、多くの男性に喜ばれてきたことは確かです」
「肉体的な特徴もそうだけど、テクニックにも興味が…」
「例えば、私のディープスロートとかですか?」
「そう、静香さんのディープスロートも普通のフェラもそうだし、手によるマッサージも攻めの姿勢の時の腰の振り方とか、膣をリズミカルに締める方法も」
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「もしかして、中国人の房中術に興味があるから、あの中国人留学生を抱きたいのですか?」
田口はリュウショウハンが台湾人なのを知っているのに、なぜか中国人と呼ぶ。武田の知らない何かを知っていて、田口はリュウを台湾人ではなく、中国人と呼んでいるのだろうか?
「え、いや、え、え」
「図星ね!」
「あ、興味はありますよ、房中術。
自分の知らない凄いテクニックがあるかもしれないと思うと知りたくて…」
「もう約束したのですか、あの子と?」
田口の口調が厳しくなった。田口は武田がリュウショウハンと関係を持つことを考えているのを知って、半ば呆れ、半ば怒り、見るからに機嫌が悪くなっていた。
「哲也さん、ミッションで刺されて死ぬのは仕方がないです。
アタシたちはそれを前提に会社と契約しているのですから。
しかし、自分の欲望が抑えられないために罠に嵌ったり、得体のしれない人間と密室に入っていったり、わざわざ殺されてもおかしくない状況を自ら作るなんて、愚かな人間にすることですよ。
アナタはアタシの命の恩人だから、どこまでも守っていこうと思っています。
どうかアタシの忠告を聞いていただけないかしら?
アナタにはずっと生きていて欲しいと思っていますのよ」
「あの子とは約束をしたし、本人は問題ないと思っていますが…」
「どのような繋がりがあり、どのようなことが実行できる人間か知らないのですよね?
危険だと思いませんか?
それが分からない人間ではないですよね?
アナタはリスクを計測し、それに打ち勝つ戦略を立てられるから超一流のファンドマネージャーになれたんだと思っていたけど?
そして、自分ではコントロールできないリスクは負わないできたからこそ、その存在自体を知られることなく過ごしてきたはずなのに…」
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田口のマシンガントークが始まったら、止むまで待つしかない。
辛いのは、田口が間違ったことを言っていない点だった。つまり、武田にとっては耳の痛い話ばかりなのに、耳を塞ぐこともできず、反論もできず、聞き続けるしかないのだ。
「ねぇ、哲也さん、パパ活をしたいなら、普通の女子大生やOLを探したらいいじゃないですか?
別にパパ活をしなくても、レースクィーンやモデルなんて今まで幾らでも抱いてきたんでしょ?
可愛い恋人ののぞみさんだっているわけだし、性欲を発散したいならアタシがいくらでも相手をします。
そもそも、たかが二十歳を少し超えた程度の女性がどの程度の房中術を駆使できるのか、分からないじゃないですか。
今回のあの子のことはよく考えてください」
武田は痛いところを突かれ続け、口を開くこともできなかった。
「この場で答えられないということは、ここまでアタシが言っても、あの子と会おうと思っているのですね?」
「ごめんなさい。
サポートすると約束したので」
「ならば、二人きりにならないこと、或いはアタシの見えるところでお付き合いしてください」
「それは監視機器を設置した部屋でしろということですか?」
「そうです。
できますか、アタシが見ている状況でその子とセックス?
他人に見られていると意外と勃たないものですよ」
「でしょうね…」
「あの子を、アタシに隠れて抱いたら、鉄拳制裁です」
「静香さんに隠れてしたとしても、やっぱり分かるんですよね?」
「アタシの第六感、侮らないでください。
哲也さんが私に隠れて他の女性と何かした場合、だいたい分かっちゃいますからね」
「…」
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「先週のことだって、すぐにピンときましたよ。
白状しないならチオペンタールを持ってきていますので、準備しましょうか?」
「いや、使わなくても白状しますので」
「本当?
今日、あのリュウという留学生と会いましたよね?」
武田は田口に敵う訳がなく、素直に話すこととした。
「赤坂見附のオイスターバーで食事をしました。
パパ活の手当を渡しました、一万円」
「レストランだから、いやらしいことはできなかったと思いますが、彼女は必死だから、他の客から見えない角度で胸を見せたり、アソコを見せたりしませんでしたか?」
「さすがですね…
トイレでブラウスを脱いできて、カーディガンの前を広げてブラジャー姿を見せてくれました」
「彼女の小ぶりな胸を見せられて、それですっかり信用しというわけですか?
それで、大人の関係も了承したのですか?」
「いや、それはその前に交渉が済んでいた話で…」
「呆れたわ。
じゃあ、彼女にしてみたら、もう哲也さんと密室で会う関係を構築できていることになりますよね?
しかも、アタシが注意してくださいと忠告していたにもかかわらず」
「それは申し訳ない」
「断る気はないのですね?」
「約束をした以上、今更やめますは、ちょっと…」
「仕方のない人ですね…。
今からでも遅くないので、本当に本当に注意して行動してください」
「はい」
「あの子と会う時は私が指定したホテルの指定した部屋で会うことにしてください」
「…」
「アタシが隣の部屋にいて、何かあったら飛び込んで行きますので」
「ずっと監視しているということですよね?
それはさすがにちょっと…」
「録音、録画をしない代わりに、監視機器を常時稼動して、アタシに部屋の中の状況が分かるようにしておいてください」
「…」
「いいですか?」
こうなると逆らえないし、田口が心から心配してくれているのが良く分かっているだけに、リュウといろいろ約束したのは軽率な行動だったと武田は反省した。
しかし、その反面、これまで自分が約束したことを必ず守ってきた人間としては、簡単に反故にするわけにもいかず、自分の命が掛かっても約束を守りたいと思っていた。愚かなのか、馬鹿正直なのか。
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