月と六文銭・第十六章(15)
武田は根本的な失陥を抱えていた。"好奇心が旺盛過ぎて"自分を危険な状況に陥れる関係にも平気で突入してしまうのだった。
そして、今回の理由は、恋人の三枝のぞみよりも更に年下の留学生リュウショウハンだった。羽田空港で偶然に出会い、パパ活でのサポートを依頼され、数度の食事を経て、"大人の関係"に進むことになっていた。
~充満激情~
57
武田は明晰な頭脳と異常に高速かつ正確な計算力を武器に、転職したどの職場でもプロパー社員が追いつけないような業績を叩き出していた。ビジネス・パーソンとしては成功していたと言える。
武田には三枝のぞみという自分よりも大幅に年が若い恋人がいる。そののぞみに隠れて、田口静香という彼の秘密の仕事での同僚と逢瀬を楽しんでいた。身長は同じくらいなのに、スレンダーなのぞみと違って、田口は胸が大きく、あからさまには言えない特別な体の特徴を持っていた。
二人でのぞみを騙している形になっていたことを武田も田口も気にしていたが、吸い寄せられる磁石のように二人は互いを求めあってしまうのだ。
そして、武田はその夜、その田口静香と過ごすことになっていた。
昼過ぎに武田はラインで田口とその日の待合せ時間と場所を調整していた。
st🐈(田口静香):仕事後一度着替えに戻りますので、20時前後になりそうです
tt(武田哲也):麻布十番のルナ・ピエーナ・ミランを予約しました
st🐈:わぉ、なかなか予約取れないのに、取れたのですか、ルナ・ピエーナ?!
tt:はい、ツテを使ってね
st🐈:オーナーの娘と仲良しだったりして?
tt:あたり!
st🐈:うわ、やらしい!
オーナーは知っているのかしら?
tt:いやいや、そういう仲ではないですよ!
st🐈:どうだか。
だいたい哲也さん、あっちこっち手を出し過ぎ!
そのうち刺されて死ぬから、そろそろやめた方がいいですよ
のぞみさんという女性がいるんだから💦
tt:はい。
静香さんにご迷惑を掛けてはいけないので、気をつけます
st🐈:私は構いませんよ、誰と励もうと(笑)
tt:いやいや、励んでないですよ
st🐈:どうだか。
今夜は私とは是非励んでくださいね(うふ)
tt:着替えに戻るなら、インナーをオーバデゥに?
st🐈:そのつもりですが
tt:では、今夜、静香様の「タクシード」姿を拝見致したく
st🐈:承知いたしました!
赤で準備致します。
tt:提案ですが、中は赤でキャミは黒か、
中は黒にしてキャミが赤の組合せはどうでしょうか?
st🐈:いいと思いますが、コーディネートしたいので、
外に着るワンピースと合う方で準備しますね!
58
オーバデゥには有名デザイナーのカール・ラガーフェルドがデザインした「タキシード」と名付けられたシリーズがある。そのシリーズにはトライアングル・プランジ・ブラという胸の谷間をきれいに魅せるデザインのブラジャーがあり、ボトムのイタリアン・ショーツは後ろが総レースでこれまたセクシーなデザインなのだ。ガーターベルトはセンター部分が革、両サイドがレースというおしゃれなデザインのものがセットされていて、3つ合わせてタキシードと呼ばれる3ピースとなる。
武田は似合うと思って赤と黒の2セットとそれぞれマッチするキャミソールを添えて、田口にプレゼントしていた。それを今夜は着てきて欲しいと思ったのだ。
ホテルに到着した田口は、毎回お約束のコートの前を開ける行為を今回も忘れず、黒のレースドレスと深めの胸の谷間を武田に見せた。レースドレスの中は黒のキャミソールはなく、いきなり真っ赤な「タキシード」だった。
「ごめんなさい、この方がすっきりした感じだったので、キャミは省略して、ルージュのタキシードにマドモアゼル・ナチューレの黒のレースドレスを組み合わせました」
田口はそのままコートを脱ぎ、武田にそれを渡し、ヒールを脱ぎながら部屋の奥へと進んだ。爪先立って窓辺まで行くと振り向いて、そのまま腰を掛けた。
「もちろん中はご希望の赤です」
田口はレースドレスの前を持ち上げ、脚を広げ、レース越しに見えていた真っ赤なショーツを彼にはっきりと見せた。武田は部屋の入り口から田口がドレスの前の持ち上がるのを眺め、もう一度彼女の顔を見つめた。
「ねぇ、哲也さん、待てないの。
舐めて!」
武田は吸い寄せられるように田口の前に跪いた。
59
田口はタキシードのイタリアン・ショーツの前をずらして整ったヘアとその奥に普段は隠れている真珠を見せた。
武田は、ハイとも否とも返事せず、田口の両脚を持ち上げてM字にして真珠に口をつけた。
以前一緒にスパに行った時、服を脱いで準備する間、セラピストが数分部屋を出て行ったが、その時も田口は我慢できず、武田にクンニを求め、2分もしないで達したことがあった。
その時は指を入れて膣の内側も少し刺激したが、今回は急ぐ必要がなかったので、内側に指を入れることもなく、舌で彼女の真珠を丁寧に舐め上げた。
田口は認めたくなかったが、あのスパの時よりも早く快感曲線が盛り上がり、あっという間に頂点を突破した。
「ふぅ、すごく良かったわ」
田口は息を整えながらタキシードのショーツを脱ぎ、軽く畳んでベッドサイドテーブルに置いた。
「私の負けだから、太い注射、受けるわ」
そう言いながら田口は武田の前に戻り、窓に手を突いて尻を突き出した。
「そのまま、きて!」
時々だったが、田口は乱暴に攻めて欲しい時があった。
武田にしてみたら、フェラチオもなく、手で握ることも摩ることもなく、ましてや今夜はまだキスもしていないのに、そのまま後ろから入れてとは…。
武田は突き入れるというよりは突き上げる感じに田口を攻めた。田口は腰を下から押し上げられ、顔も胸も冷たい窓に押しつけられていたが、快感に抗えず、汗をかきながら達した。息も荒く、窓には彼女の吐息が白く映っていた。
60
武田が離れると田口は腹に力を入れ、膣内から外に彼の精液を追い出した。
ベッドの縁に座っていた武田の目の前で田口の膣から精液が垂れ、床に落ちていった。
「初めてですか?」
「あぁ、静香さんのこういう姿は初めてだ」
「昼間、メッセージのやり取りをしていた時から、早く哲也さんのぶっとい注射が欲しくて、欲しくて」
田口は尻に手を添えて広げ、最後にもう一度腹に力を入れたのか、音と共に最後の精液を押し出した。
窓辺に座り直した田口は紅潮していて顔がやや赤みがかっていた。
「今のは、外から見えたかも」
田口はニコッとしながら少し外へと顔を向け、返事をした。
「この辺りのホテルなら、同じような光景があっちこっちの窓で見られますよ。
何せ不倫やパパ活のメッカですからね。
まぁ、アタシだって分からなければ、目撃されても何も困らないわ」
「それはそうだが…」
武田は別の日に会社の総務の女性が六本木のホテルの窓辺で後ろから攻められていたのを目撃していたが、それは田口には関係がない話だったので、しなかった。
「ごめんなさい、自分の欲望を優先してしまって。
今夜は待てなくなっていて、一刻も早く、欲しかったの」
田口の顔が紅潮していたのは激しい運動のせいだけではないようだった。
「とても情熱的だったね。
静香さんでもあんなに興奮して大胆になることがあるんだとびっくりしています」
「恥ずかしいわ。
排卵日なのかしらね、アタシ」
排卵日前後に性感が高まって、情熱的になったりする女性もいるだろう。しかし、田口がそういうタイプとは今まで想像だにしなかったために、田口が顔を赤らめたことに戸惑いを感じていた。