月と六文銭・第十四章(72)
工作員・田口静香は厚生労働省での新薬承認にまつわる自殺や怪死事件を追い、時には生保営業社員の高島都に扮し、米大手製薬会社の営業社員・ネイサン・ウェインスタインに迫っていた。
田口はターゲットであるウェインスタイン本人に罠を仕掛けるつもりで会う約束をした。
再び高島都として彼と会い、夕食を楽しんだ後、彼の部屋で久しぶりにメイクラブするつもりで一緒に部屋に向かった。ところが、部屋に入った瞬間、彼の「力」に捕らわれてしまい…。
~ファラデーの揺り籠~(72)
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高島の両腕は肩の高さのまま後ろに引っ張られるように動き、胸を張る形になった。そこでウェインスタインは高島を見下ろし、フンと鼻を鳴らした瞬間、ブラウスのボタンがすべてはじけ、前が開いた状態になった。
「いや!
やめて!
どうしてこんなことをするの?」
「ミヤコ、嘘を言わないで、答えて」
「うん、言うわ、こんなことをやめて、お願い」
ウェインスタインはまたフンと鼻を鳴らした瞬間、高島の頭が反り、乳房の間の胸骨がはっきり見える体勢になった。
「い、痛いわ」
両腕は何かに固定されているかのように、全く動かせない高島は胸元を隠したいのに、どうにもならない状態だった。
「いやぁ、やめて、ネイサン、どうしたの?
どうしてアタシにこんなことをするの?」
「ミヤコ、ヴィンセントの事故に関係があるんでしょ?」
「ないわ!
アタシがヴィンセントがダンディでかっこいいと思っているのを知っているでしょ?
どうして私がヴィンセントの事故に関係があるって思ったの?」
「君は僕とヴィンセントがあのドイツ系アメリカ人を殺したのを知っているからだ」
「え?
ネイサンも関わっていたの?」
ウェインスタインは高島をみつめ、冷笑を浮かべ、オートバイのハンドルを握る感じで両手を捻った。
ギャア~!
「やめて、痛いわ!
お願いやめて!
ネイサン、お願い、痛い…」
ウェインスタインは更に両手を捻った。
ギャア~!
ハァ、ハァ、ハァ
痛みに耐える高島の息が荒くなっていた。
「お願い、どうしてアタシにこんなことをするの?
もう、やめて!」
「ミヤコ、いや、ジェーン、それともシーと呼ぼうか?
あのドイツ系アメリカ人は君をシーと呼んでいたね」
「え、なんのこと?」
「ミヤコ、もういいんだ、嘘をつかなくても」
「アタシ、嘘なんて!」
ウェインスタインは両手を高く上げた。高島はベッドに座っている状態から立ち上がらされた。
高島は自分の体がウェインスタインの意思で勝手に動くことが信じられず、目がパチパチしていた。視線をウェインスタインに戻した瞬間、目の前が真っ暗になった。
ウェインスタインは高島に近づいて、腹に右の拳をややアッパー気味に叩き込んだ。その瞬間、高島は全身が硬い壁にぶつかったような衝撃を受け、胃から先程食べたものが押し上げられた気がした。
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「やめて、ネイサン、お願い、こんなことはやめて!
怖いよ~」
高島は頭を垂れていて、涙を流し、鼻水が垂れ、口からは胃の内容物が溢れ出ていた。
「ミヤコ、口の中のものを吐き出さないと、息ができなくなるよ」
グボッ、ゲホ、ゲホ、ゲホ、ゲホ
ウェインスタインは高島に向けて、次は左の拳をちょうど鳩尾に叩き込んだ。
高島は顔をしかめたすぐ後に、口から先程食べた鉄板焼きの一部が吹き出た。消化が始まっていたようで、すえるような匂いが部屋に広がった。
ウグ、ウゥゥ
「ミヤコ、正直に答えてくれ、君はヴィンセントの事故に関与したよね?」
高島は必死に首を横に振ったが、ウェインスタインがまた近づいたので、恐怖で顔を歪め、目を逸らした。
ウェインスタインは高島の顎を掴み、顔を自分の方に向かせ、恐怖で細かく揺れている高島の目の中を覗いた。
「目は心の窓、だっけ?
怖いのか?
これまで君は幾人も人を殺してきたんじゃないのか?
自分の番になったら、彼らの気持ちが分かったという訳か」
普段の高島ならば首を巧みに動かして、顎を掴んでいる手を噛むところだが、体は動かない、首にも顎にも力が入らないとあっては、ほとんど反撃ができない。
「気を付けないと、その吐いたもので窒息しちゃうかもしれないよ」
息を吸い込もうと必死になればなるほど、食べ物が邪魔して、咳が出るだけだった。
「もう一度聞く。
君はヴィンセント・オイダンの殺害に関与したか?」
高島は必死に首を横に振り、目で許しを懇願した。
「君はもっと賢い女性だと思っていたのに、残念だ」
高島の目は大きく見開き、恐怖に揺れていた。
ウェインスタインは再度右の拳を高島の腹に叩き込んだ。今度は遠慮しなかったのか、胃が潰れるような感覚に高島は目が飛び出そうな痛みを感じた。
それが高島の腹を押し、高島は胃の内容物を吐き出し、次に胃液を吐き、最後に血を吐いた。
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「ミヤコ、これに耐えられるとは相当鍛えてきたということだと思う。
君は本当は誰?
何をしている人だ?」
高島は首を振って必死に何かを言おうとしたが、胃液で喉が焼け、声が出なかった。
「僕はこれまで女性を殴ることはなかった。
敵の女性兵士でも女性としての尊厳を傷つける行動はしたことがなかった」
高島は自分の体をコントロールできない状況に驚愕し、恐怖していて、諦めが頭をよぎった。
ウェインスタインは部屋の玄関に行き、立ててある靴ベラを持ってきた。ウェインスタインが手で壁を押すような仕草をして、高島の体がバタッと後ろに倒れ、ベッドの上で大の字となった。
ウェインスタインが高島のスカートを腰のところまでめくり、ショーツのクロッチ部に指を入れ、横にずらした。
高島はウェインスタインを睨みつけたかったが、頭が天井を見え上げるよう固定されていて、まっすぐ真上の天井の模様しか見えていなかった。
「ミヤコ、男性としては最低の行動かもしれないが、君が強情を張るから、これで少し君の考えを変えてもらいたいな」
そう言ってウェインスタインは高島の女陰に靴ベラの柄の部分を当て、一気に押し込んだ。
ギャア~!
ウェインスタインは高島の女陰に刺さっている靴ベラをゆっくり引き、また一気に押し込む行為を三回繰り返した。その度に高島は叫び声を上げ、息を荒げ、涙も鼻水も流した。
「ミヤコ、僕の質問に答えてくれるかな?」
ウェインスタインはまた一気に靴ベラを押し込み、高島はまた叫び声を上げた。
「体の中には鍛えられない箇所というのが幾つかあるんだ。
喉、腋の下、鼠径部、爪の下、足の裏。
性別で言えば、男性はペニスや睾丸が代表的だ。
女性なら、膣だ」
ウェインスタインは高島の女陰に刺さった靴ベラをぐりぐり回して、高島を苦しめた。
グゥ~
「そろそろ答えてほしいな」
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高島は必死に首を縦に振って同意した。それを見て、ウェインスタインは靴ベラをゆっくりと高島の女陰から抜き、丁寧に拭いてから玄関に戻した。
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