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全てを手放せば幸せはやってくるか (実験の始まり前編)

“2020年はあなたにとって1番運気が下がる年なのよ。別居はいいけど、籍を抜くのは運気が上向き始める次の年の方がいいわね。”

 と言われたのは2019年のコトだった。そこまで待てるものか、と届出用紙は用意してあった。それは某フリマサイトで300円で売られていた。

そんな2020年が始まってすぐ、オットが倒れて入院した。2週間で退院したと思ったら、次に父が倒れた。

これが運気の低迷する年というものか…

と思った。

年若い上司は気の毒がってくれて、度重なる休みも快くOKしてくれたばかりか、アラフィー女の体調の心配もしてくれた。

警察からの電話、病院からの呼び出し、救急車、ICU、初めて聞く名詞の数々に書類の山。

食欲も無く、SNSを見る余裕もなく、音楽すら聴けなかった。緊張とストレスで目蓋がぴくぴくした。

日常がハードな非日常になっているせいで、職場に戻るとまるでパラレルワールドから生還してきたヒトのようなギャップを感じた。外では轟々と風が吹き荒ぶ雪嵐に翻弄されているのに、ここでは以前と変わらぬ粛々とした空気が流れ、いつもの役割が求められる。

デスクのPCを立ち上げながら数分かけてその違和感を消化した後は、嵐に巻き込まれる前の自分を取り戻せる場所があること、仕事中は非日常な日常を忘れていられることがありがたかった。

病人と病院の対応に追われながらも、自分が倒れた側になるよりはマシだと思った。自分の意思で身体が動くことの幸せを感じた。

こう言っては何だけど、若い頃、宿も決めずにひとり旅をしていた時のような、ヒリヒリ・ハラハラするような感覚を思い出していた。

ひたすら自分がやるべきことを考え、1つずつ片付けて行く。リアル人生ゲーム、だと思った。

中編に続く

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こやまちか
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