公共図書館の“除籍”という業務について考える
初めてこのnoteに本格的に何かを考える記事を書いてみることにする。
今回は、表題通り図書館の業務の一つである“除籍”について考えることにする。以前下記のツイートをしていたのも理由のひとつである。
司書課程を受講した経験がある人や実際に図書館で働いている方々はご存知のことと思われるが、改めて除籍の定義を以下に引用する。
図書館の資料の中で内容が古くなったもの,破損・汚損・紛失したもの,あるいは重複しているもの等を不用資料と認定して書架から除去し,その記録を目録や図書登録原簿から抹殺する事務的処理を除籍という。(今 2013: p. 93)
端的に書くなら、「ある評価基準から不用と判断したものをコレクション(蔵書)から取り除く業務」になる。
この業務には、資料の価値を判断する能力が必要とされ、この能力は司書が専門職員であることを証左するもののひとつであると私は考えている。
なぜ、この業務について考えることになったか。それは、筆者が集中的に当たっている業務のひとつがこの“除籍”で、1年近く悩まされている現状にある。
発端は、昨夏に筆者自身の担当資料が2類全般から3類全般に変更されたことにある。
以前から目に余るほど状態の悪い資料やあまりに年度が古い各種ガイド本については利用状況なども加味したうえで上司に除籍申請を出していた。しかし、昨春の1度目の緊急事態宣言以降貸出冊数が減った影響から、開架書架に資料が収まらなくなり、闇雲に閉架に資料を移した結果、閉架書架に資料が収まらない状況になってしまった。
特に、筆者が移った3類は、自分が赴任する前から適切な管理がされていなかったようで、閉架から資料があぶれているのは勿論、開架書架にも10年以上前の某法律解説書が置かれている有様であった。
書架の前に収まりきらない資料を並べているのを見る度に、資料管理の業務を全うしているとは到底言えない現状を認識し忸怩たる思いに駆られる。(尤も、筆者の担当類の資料に限った話ではないのだが。)
だから、こんなツイートも書き殴ってしまう。
話を戻す。ここでは公共図書館の所謂分館における“不用”と判断した上での“除籍”についての筆者の考えを提示しつつ、同僚との雑談やネット上で見かけた“除籍”論をまとめてみたいと思う。
まず初めに、筆者は、当たり前のことではあるものの資料が該当する分類によって判断基準は変化するという認識がある。筆者自身の経験として2類の各時代や各人物の研究書、3類の文化論に関係する資料、9類の小説・エッセイ・詩歌などその著者にしか書けないものについては除籍を検討する際には慎重な判断が必要であると考える。一方、上記でも例に挙げた3類の法律の解説書や4類の医学関連の解説書については常に新しいものを提供すべきであり、敢えて極論を書いてしまえば前者については法改正されてしまったものは出版からあまり年月を経ていなくても除籍を検討すべきだと考えている。
また、除籍を行う上では図書館の捉え方についても考える必要があると考えている。端的に書いてしまえば、“勤務館だけの単独の書庫と捉えるか、勤務館を含め自治体すべての図書館を共同の書庫と捉えるか”ということで、筆者の考えは後者寄りである。上述したとおり、判断が難しい資料について除籍を検討する際は他館に所蔵がある場合については利用傾向と比較し、勤務館に残すか否かを判断しなければいつまでも書架に対して適切な蔵書構築ができないことが理由である。
次に、除籍について他館から赴任した経験豊富な先輩職員の方々に雑談交じりで“除籍”に対する考えを伺った。すると、「本来は新刊を入れた分だけ除籍をしないと回らない」、「〔上述の閉架書架の現状を踏まえ〕他館に所蔵があるなら除籍していくことを考えないといつまでも終わらないよ」というご意見を戴いた。勤務館の傾向としては、このご時世でもイベント重視の節があり、テクニカルサービスについて話せる人が赴任当初はいなかったので意見を交わせることがありがたかった。
最後に、ネットで見かけた“除籍”に関するツイートについて考えてみる。
これもまた難しい問題である。機械的に蔵書構築をするならこのようなこともさもありなんとは思う一方、個人的には上述したような判断の難しい資料でそのようなことはあってはならないと考える。
貸出回数0の資料については、最近でも次のような活用法があった。
私論としては、対象が専門書の場合類似した題材の図書の利用が比較的多い同自治体内の他の図書館に移管するのが理想的ではあると思うものの、現実的には図書館ごとに指定管理会社が異なる自治体では必要以上の館同士の連携に消極的な上、処理が煩わしく館の上層部がやりたがらないことは想像に難くない実現させるには相当なパワーが必要であることが窺える。
参考資料
今まど子編著.図書館学基礎資料.第11版,樹村房,2013年,138p.