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名店のフルコースも自宅で簡単に再現!OPEN MEALSが挑む“食のデジタル化” 【前編】
おいしいものを食べたい。
私たち人類は、“食”への欲望をエネルギーに進化してきたといっても過言ではありません。
さて、時は流れ21世紀。
食べることは多くの先進国では当たり前になりました。
「生きるため」よりも「より豊かに」「より価値のある」食生活を求めるようになったのではないでしょうか。
ある意味、食の進化は終着点に到達した…と言いたいところですが、どうもそうではない様子。
電通アートディレクター/OPEN MEALSファウンダーの榊良祐さんは、食べ物のデータを転送して3Dプリンター出力し、どこでも同じモノを食べられるしくみづくりに取り組み、世界中から注目を集めています。
食のデータを転送して、3Dプリンターで出力…。
なんだか「本当に食べられるの?」というところからの疑問が尽きません。
詳しくお話を聞いてみましょう!
■4原色を“味”に置き換えてみた
そもそも、本業は広告代理店のアートディレクターだという榊さん。なぜ“食”の転送に興味を持ったのでしょうか。
「広告をはじめ、カラー印刷では基本的な色としてCMYK(シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック)の4色を使います。この4色でさまざまな色を表現するんですよ」
ふむふむ。たしかに、印刷物をよ~く見ると青やピンクの小さなドットが見えますよね。
「それを、味にも置き換えられないかな?って」
その発想、さすがアートディレクターというかなんというか。
「自宅にあったインクジェットのカートリッジにしょうゆやお酢を詰めかえて、印刷してみたんです。紙も大豆からできた食べられるものを使って、実際に食べてみた。するとやっぱり、使ったインク(調味料)の割合によって味が違うんですよ」
ちなみに、味の4原色(原味?)は、SSSB(スイート・サワー・ソルティ・ビター)。この4つの組み合わせから、OPEN MEALSはスタートしました。
さらに、印刷データは他の人と共有したり、別のところへ転送できることにも着目。それと同様に、味のデータがあれば他の場所でも同じ味を再現できることに気づき、食のデータ化と転送というアイデアを本格的に考えるようになったのだとか。
■レシピをシェアし、料理を楽しめるようになる時代
ところで、プリントされる食べ物は何でできているのでしょうか?
「現段階では、海藻など自然由来の素材を使ったゲルで作っています。そのゲルに各カートリッジから味や香り、色、食感、栄養素といったさまざまな要素を加えるんです。見た目のデザインは自由自在で、実物に近づけたり、全く違う見た目にしたりもできます」
3Dフードプリンターの研究者である大学教授や、味覚のデータ化に取り組む人々と協力しながら、“おでん”や“寿司”などさまざまな料理の再現に挑戦してきたOPEN MEALS。
その集大成のひとつともいうべき「SUSHI TELEPORTATION(スシ・テレポーテーション)」プロジェクトは、2018年にアメリカ・オースティンで開催されたメディアイベント・SXSWで大きな反響を呼びました。
「料理のデータが自在にやりとりできるようになり、3Dプリンターがさらに一般化すれば、一般の人がネット上にレシピをアップしたり、三ツ星レストランの料理を自宅でプリントしたりといったことも可能になるでしょう」
将来的には、有名シェフの味を再現するスペシャルカートリッジが発売されたり、神レシピをアップする“食Tuber”なんて職業も生まれるかもしれませんね、と未来予想をする榊さん。
料理上手じゃなくても美味しい料理が食べられるようになるのは、すっごくうれしいぞ…!
(まとめ)
そもそも3Dとはいえ、食べるためのものをプリンターに通して大丈夫なのか?という初歩的な疑問から始まった今回の企画。しかし食べ物の3Dプリントについて研究している人は意外にも多く、OPEN MEALSでもすでにサイバー和菓子で実現しているというから驚きでした。
榊さんによれば、食感や味、香り、栄養、そして食べる環境など、多くの要素が複雑に絡み合いながらつくられる“料理の味”の研究は、まだまだ白地の多い世界。
食データの研究が進んだ“フード・シンギュラリティ”後の世界では、食はどのように受け入れられ、私たちの生活にどのような変化が訪れているのでしょうか。後編では、第5次食革命の未来予想図に迫ります!
漫画=こうや豆腐(@toufu_0141)
取材・文=藤堂真衣(@mai_todo)
編集=中嶋駿
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