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15 せんべろ古本トリオツアー 武蔵小山編(その2)
洗足の「大鵬堂書店」が開店するまでどこかで時間をつぶそうと、我々は環七から大岡山駅へ抜ける道を歩きはじめた。
昼飲みができそうな大衆酒場……なんて贅沢は言わない。ごく普通の町の中華屋でもあれば、餃子にビールくらいはいけるだろう。ついでに大岡山にある古本屋を先にチェックしてもいい。それからまた大鵬堂書店に戻ればいいのだ。
大岡山へ行くまでもなく、歩きはじめて5分ほどしたところに「鴻元食坊」という四川料理の店があった。つーっと吸い込まれる3人。テーブルに着いてメニューを見ると、小皿料理がどれでも300円だ。いいねいいね。酔っぱらいって、こういうのが好きなんだよね。
腰を落ち着けて飲むなら、小皿料理をたくさん頼んでいろんな味を楽しむところだが、そこまで時間があるわけじゃない。いや、時間の問題とは違うな。まだ本日の行程の半分しかこなしていないのに、ここでガンガン食ってゴンゴン飲んでベロベロに酔うわけにはいかないのだ。
楽しいことだらけの古本ツアーだが、ひとつ気をつけなければならないことがある。それは、古本屋を訪ねるごとに荷物が増えていき、酒を飲むたびに足元がふらついてくるという現実だ。カバンが重くなるのと比例して足取りも重くなる。古本トリオのツアーとは、そういうエクストリームな側面もあるのだ。
四川の小皿料理をつまみに、まずは生ビール。散々歩いて喉が乾いたところに流し込まれる冷たい泡。実にうまい。続いて酎ハイ……は、メニューになかったので、レモンサワー。鶏皮のパリパリ揚げがクセになるうまさで、つい、もうひと皿おかわりしてしまった。こうなりゃ後半のことなんてどうでもいい、レモンサワーをもう一杯! と言いたいところだが、店が昼休みに入るというので会計をすることにした。ふう、危ないところを店に助けてもらったようだ。
その後、沿道にある新古書店をのぞいたり、メロンパンやいか焼きを立ち食いしたり、だらしなく旅を続けて大岡山の駅前に到着した。
大岡山という町には、「金華堂書店」と「タヒラ堂」という時計が止まったようなシブい古書店がふたつも残っている。とくに欲しいと思える本はなかったが、こうしたシブい古本屋を見て歩くだけでもこのツアーには意義がある。
さて、ここからまたいま来た道を引き返して、あの「大鵬堂書店」へ向かう。一人だとシンドイ道のりも、三人(しかもほろ酔い)でバカ話をしながら歩いていけばあっという間だ。
念願叶って訪ねた「大鵬堂書店」は、なんとも奇妙な店だったな。玄関のガラス扉に「立ち読みダメ」「大きいバッグ持参の方お断わり」「マスク、ヘルメット、ぼうし入店禁止」といった注意書きがたくさん貼ってある。ちょっとヤバイ店の匂いがする。ところが、いざ入店してみれば店主は気さくだし、本も安いし、少しも怖い店ではなかった。
結局、数分かけて古本を物色して、買い物を済ませたら再び大岡山へ戻る。
いま、こうしてシラフになって旅の行程を振り返ってみると、同じ道を行ったり来たりの無駄な行動に呆れてしまう。だが、昼から酒を飲みつつ古本屋めぐりをするなんて行為自体がバカのやることなので、無駄が多くても仕方ないのだ。
次回に続く。
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