とみさわ昭仁

プロコレクター、ライター、ゲームシナリオ、マンガ原作、マニタ書房など、いろいろやってる…

とみさわ昭仁

プロコレクター、ライター、ゲームシナリオ、マンガ原作、マニタ書房など、いろいろやってるとみさわ昭仁のnoteです。

マガジン

  • フード病

    お酒以外の食べ物に関するエッセイです。毎週土曜日更新で、全60回の予定。

  • ゆりかごから酒場まで

    ぼくが酒と関わりその魅力に没入していく人生を時系列に従って振り返ったエッセイです。

  • 酒の顔

    酒というものを代表する様々な顔についてのエッセイです。

  • マニタ酒房

    ライターとみさわ昭仁による酒エッセイ2021年度版です。酒にまつわる様々なことを楽しんだりボヤいたりします。毎週土曜に更新する予定ですが、酔っ払って休むことも多いだろうことは容易に予想されます。

  • 酔ってるス

    このマガジンは、とみさわ昭仁が2014年12月22日から2015年11月30日にかけてウェブサイト「it-tells」に連載した酒エッセイ「酔ってるス」を再掲したものです。本日(2020年2月2日)より、毎週日曜と木曜に1本ずつアップしていきます。再録の許可をくださった関係各位には、厚くお礼申し上げます。

最近の記事

58 私の愛さなかったスッパイ

 いよいよコイツの話をするときがやってきた。まだ夏が終わらぬうちに語っておかなければならないアイツのこと。年に数えるほどしか食べないソイツのことを、ぼくはココに書かねばならない。  指示代名詞の多いふわふわした文章をこれ以上続けるわけにもいかないので、はっきり書こう。コイツ、アイツ、ソイツとは「冷やし中華」のことである。  ご存知のように冷やし中華の二大特徴といえば「冷たい」と「酸っぱい」だ。これはどちらもぼくが忌み嫌ってきたもので、まったく食欲をそそらない。自分から進んで食

    • 57 理想を求めて焼きそばロード

       麺類と呼ばれるものは、つけ麺を除いてだいたいみんな好きだ。マグマ舌なので熱い汁に浸った麺類が優先になるが、スパげッティも食べるし、ざるそばも食べる。夏は冷やしたぬきそばや、冷やし中華もよく食べる。  そして焼きそばも例外ではない。  とくに好きなのは、夏祭りの夜店でテキ屋のおっちゃんが作っているようなジャンク焼きそばだ。油をドバッと流した鉄板に少量の豚肉と適当に刻んだキャベツ。デカボトルのソースでビタビタに焼いて、青のりと紅生姜。揚げ玉まで乗っていたら贅沢の極み。そういうの

      • 56 少食の呪い

         何が「食べ放題」だったら嬉しいだろうか、ということはときどき考えてみる。  ぼくの好物のひとつであるケンタッキーフライドチキンは2つで十分ですよだし、回転寿司はいつも4皿食べたら〆に鉄火巻きを頼む。ステーキは 150 グラムもあればもうたくさん。ラーメンでいちばん好きな永福町大勝軒なんて、デフォルトがすでに食べ放題と言っていいような分量だ。つまり、少食の人間にとって食べ放題なんてサービスは何ひとつ嬉しいことではないのだ。  そもそも食べ放題の店に行って「どれだけ食えば元が取

        • 55 負けたのは兆徳だけ

           昔から炒飯を作るのは好きだった。食べるのも嫌いではないけど、大好きというほどでもない(熱くないからね)。あくまでも、作ることが好きだった。フライパンに玉子とメシを入れ、チャカチャカ混ぜる。あの動作が、いかにも「料理してんなー」という感じがして好きなのだ。  最初は、何も考えずに家にあるテフロンのフライパンで作っていた。炊飯器の中に残りメシがあり、玉子が1個とネギさえあれば、最低限の炒飯が作れる手軽さがいい。さらにハムか、鮭か、しらすでもあれば小躍りしてしまう。味付けは塩と胡

        58 私の愛さなかったスッパイ

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        • フード病
          56本
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          50本
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          30本
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          50本
        • 酔ってるス
          50本

        記事

          54 辛いものの話

          『からいはうまい』というのは椎名誠による辛いものエッセイ──本人曰く「アジア突撃極辛紀行」の書名だが、2001年に初版が出た際に書店で見かけて、なんともいいタイトルを付けたものだと感心した。  が、そのときは手に取っただけで購入はしなかったし、のちに文庫化されたときも読まなかった。なぜなら、辛いものがそこまで好きではないからだ。  ご存知のように、ぼくは熱い食べ物は大好きで、日夜、一度でも温度の高い料理(おもに麺類)を求めて街を徘徊している。  しかし、世の中の皆さんは、ぼく

          54 辛いものの話

          53 対馬のとんちゃん焼きを訪ねて(後編)

           対馬に着き、厳原の町をウロウロしていたときから、一軒の店が気になっていた。「どんぐり」という名の韓国家庭料理の店だ。  ドアには料理の写真がたくさん貼ってあり、店内を覗き込むことができない。おまけに各種の料理名と思しきハングル文字も書いてあって、一見さんには入りにくいオーラがビンビンに出ている。  だが、聞いた話では「対馬とんちゃん」は元々韓国から伝わった料理だという。だとするなら、この店こそ対馬とんちゃんを食べさせてくれるのではないか。そう思えてならない。  ここはひとつ

          53 対馬のとんちゃん焼きを訪ねて(後編)

          52 対馬のとんちゃん焼きを訪ねて(前編)

           2011年の夏、ぼくは博多港と釜山港のちょうど中程に浮かぶ「対馬」へ渡った。とあるゲーム開発の仕事で、対馬料理を取材するためだ。  博多港から九州郵船のジェットフォイルに乗って、対馬の厳原(いづはら)港へ。所要時間は2時間15分。ノートPCで映画でも見ていれば、エンドクレジットが始まる頃には着いてしまう感じの船旅である。  厳原は、対馬全体の下側3分の1くらいのところにある港町で、そこから歩いて行ける距離のホテルを予約しておいた。ホテルに着いて、さて、どうしたもんかと考える

          52 対馬のとんちゃん焼きを訪ねて(前編)

          51 永福町で最後の晩餐を

           つい先日、音楽マニアやレコードコレクターが集まるイベントに参加した際、そこで出た話題のひとつに「無人島レコード」があった。すなわち「無人島に流されるとき1枚だけレコードを持っていけるとしたら、誰のどの盤を持っていくか?」というやつだ。  ぼくだったら、そうねえ、ドノヴァンでもトノバンでもなく、迷わずタンジェリンドリームの『フェードラ』を選ぶだろう。これまでの人生で間違いなく30回はターンテーブルに乗せ、40回はカーステレオに突っ込み、50回はiPodで再生している愛聴盤だ。

          51 永福町で最後の晩餐を

          50 梨とスイカは大根族

           最近見かけた新刊に『日下を、なぜクサカと読むのか』という本があって、非常に興味深い。まだ読んでいないので詳しいことは言えないが、ようするに地名を軸にした日本語(漢字表記)の不思議に言及した本のようだ。  で、この書名を見たときに連想したのが、「果物(くだもの)」って読めねえー! ということだった。事前に知ってなければ、「果」を「くだ」とは普通は読めないよねえ……。  という話はどうでもよくて、今回はフルーツの話。  皆さん、フルーツは食べますか? ぼくは、食べません。いや

          50 梨とスイカは大根族

          49 漆黒の汁にぷかりと浮かぶゲソ天

           立ち食いそばの具では何がいちばん好きかという話をしたい。  ぼくがこれまでにもっともたくさんの杯数を食べてきたのは、数えたことがないので断言はできないが、おそらく「たぬきそば」だろう。断言するほどの話じゃない。  ちなみに、関東と関西では「たぬき」と「きつね」の概念が異なるというのはよく知られた話だ。そして同じ関西でも、大阪と京都ではまた違ったりするのでややこしい。それをここで解説し始めると本題から離れてどんどん話がのびるし(そばだけに)、日本各地の立ち食いそばには、それぞ

          49 漆黒の汁にぷかりと浮かぶゲソ天

          48 未完成の手裏剣チップス

           遠い昔、遥か彼方のインターネットで、まだSNSがmixiくらいしかなかった時代のこと。飲み仲間のあいだで「ちくわぶ」が流行ったことがある。きっかけを正確には覚えていないが、おでんなどつつきながら、 「ちくわぶって……うまいよねえ」 「大阪の人は食わないらしいね」 「ちくわぶって、おでん以外で食ったりする?」 「そういえば聞いたことない」 「じゃあ、ちくわぶを使った新メニューでも考えてみるか!」  と、そんな些細な会話からだったかもしれない。  それで、我々はちくわぶ愛好会的

          48 未完成の手裏剣チップス

          47 野沢菜と伊藤つかさのおじいちゃん

           ぼく自身は子供の頃から運動とは縁のない──つまり滅多に汗をかかない──人間だったので、人より多く塩分摂取が必要なライフスタイルは送ってこなかった。  ただ、両親がそろって農家の出身だったので、塩分を多めに取る習慣が染み付いていたようだ。子供の頃から家の食卓には、塩がしっかり効かせてある焼き魚と、味が濃いめの味噌汁と、そして数種類の漬物が並んでいた。  子供の味覚だから漬物なんてそんなに好きではないんだけれど、あればあったで食べはする。それなりに漬物というものには馴染んでいた

          47 野沢菜と伊藤つかさのおじいちゃん

          46 「茶」も「漬け」もない茶漬け

           お茶漬けが大好きである。  炊飯器を開けて、ちょっとごはんが残っていたらお茶漬け。朝起きて食欲がなければお茶漬け。いいお漬物があればお茶漬け。飲んだ〆にもお茶漬け。授業をサボって喫茶店でお茶漬け、風呂入ってお茶漬け、クソしてお茶漬け、そいでまたベッドでお茶漬け。  ラーメンを筆頭に、食うものには何かと面倒臭いこだわりがあるぼくのことだから、お茶漬けにも何らかのこだわりがあると思われるかもしれないが、ないのだ。お茶漬けには、ないのだ。  基本は永谷園。冷やめしにあれをサラサラ

          46 「茶」も「漬け」もない茶漬け

          45 寿司屋のタイムサービスの大トロ

           以前、友人たちと飲んでいて、「寿司の〆(シメ)には何を頼む?」という話題になった。 「真鯛でさっぱりとシメたい」 「おれは断然コハダ」 「初心に帰ってマグロかな」 「シメない。ガリをひと切れ口に放り込んでおしまい」 「味噌汁を一杯もらう」  などなど、友人たちは思い思いの〆を答える。おそらく寿司好きが100人いれば、100通りの〆があるのだろう。  そのとき、ぼくがなんと答えたか正確には覚えていないが、当時はよく「納豆巻き」を最後に食べていた気がする。マグロ、真鯛、アジ、イ

          45 寿司屋のタイムサービスの大トロ

          44 はみ出しグルメの世界

           それは2015年のこと。高円寺でのDJイベントを終え、帰りにひとり酒場で一杯ひっかけていた。ホッピーと、つまみはマカロニサラダ。直径10センチほどの皿にこんもりと盛られている。  その状況を写真付きでTwitterに投稿したら、まついなつきさんがそれを見て、こうコメントした。 「はー、おいしそう。はみ出していてたまらない」  その店のマカロニサラダは盛りつけがよく、いつも皿からはみ出している。少食のぼくは、このマカロニサラダさえあればホッピー3杯くらいはイケてしまう。ま

          44 はみ出しグルメの世界

          43 ぼくの東京三大煮込み

           酒飲みの世界で「東京三大煮込み」と言ったらどこだろうか?  パッと検索してみれば、すぐに月島「岸田屋」、北千住「大はし」、森下「山利喜」の名前が挙がる。なんでも酒場ライターの太田和彦氏がこの三軒を東京三大煮込みであると提唱したらしい。あいにくぼくは岸田屋には行ったことがないが、たびたび書いているように山利喜は生家のすぐ近くにあるため、子供の頃から煮込みの味にも馴染んでいる。北千住の大はしは豚もつではなく牛すじの煮込みだが、三大煮込みに顔を並べていてもまったく引けを取らない旨

          43 ぼくの東京三大煮込み