とみさわ昭仁

プロコレクター、ライター、ゲームシナリオ、マンガ原作、マニタ書房など、いろいろやってるとみさわ昭仁のnoteです。

とみさわ昭仁

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マガジン

  • フード病

    お酒以外の食べ物に関するエッセイです。毎週土曜日更新で、全60回の予定。

  • ゆりかごから酒場まで

    ぼくが酒と関わりその魅力に没入していく人生を時系列に従って振り返ったエッセイです。

  • 酒の顔

    酒というものを代表する様々な顔についてのエッセイです。

  • マニタ酒房

    ライターとみさわ昭仁による酒エッセイ2021年度版です。酒にまつわる様々なことを楽しんだりボヤいたりします。毎週土曜に更新する予定ですが、酔っ払って休むことも多いだろうことは容易に予想されます。

  • 酔ってるス

    このマガジンは、とみさわ昭仁が2014年12月22日から2015年11月30日にかけてウェブサイト「it-tells」に連載した酒エッセイ「酔ってるス」を再掲したものです。本日(2020年2月2日)より、毎週日曜と木曜に1本ずつアップしていきます。再録の許可をくださった関係各位には、厚くお礼申し上げます。

最近の記事

67 駄バーガー

 母に「今夜はハンバーグにでもしようか?」と問いかけると、必ず「オラ、やんだ」と言う。意味は「私は、嫌です」。どうも母はハンバーグが好きではないらしいのだ。  何かというと煮魚や焼き魚を食べたがる母ではあるが、だからといって肉が嫌いなわけではない。総入れ歯なので固い肉は避けようとしながらも、家で焼き肉をやれば進んで箸を伸ばすし、なんなら「オラの分はちょっとサシの入ったいい肉を買ってこォ」なんて贅沢なことを言ったりもする。ケンタッキーフライドチキンも大好物で、バーレルを買ってく

    • 66 水遁と書いてウォータービジネスと読む

      「水」のことなんて考えたこともなかった。水は水。喉が渇いたら水を飲む。蛇口をひねれば水は絶えずして、築50年近い我が家の水道管からは最初だけ少し錆が出るが、久しく留まりたる試しなし。3秒待てば元の水にあらず。  若い頃は痩せっぽちだったので、あまり汗をかくこともなく、ごくまれに喉が乾けば、台所でコップに水を注いで飲む程度。自分が口にしている水の「質」なんて気にしない。煮沸する必要もなく水道水がそのまま飲める日本という国は、世界でも稀な存在なのだということは、ずいぶん後になって

      • 65 ソウルフードは化学である

         自分のソウルフードは何だろうか? ドコのドレだろうか?  そもそも「ソウルフード」とは何なのかといえば、もちろん「奴隷制時代にアメリカ南部のアフリカ系アメリカ人たちが好んだ料理」という本来の意味はあるけれど、ここではもうひとつのライトな意味、すなわち我が国において自分の血肉となっている懐かしの味、馴染みの店の味、故郷の味、という話をしたい。  まず言っておきたいのは、ソウルフードであることと味の良さには相関関係がないということだ。あくまでも子供の頃から慣れ親しんだ味、昔を思

        • 64 弁当の思い出と歌舞伎町のスケベ弁当

           このところ弁当を作る機会が増えている。  昔は、弁当なんて好きではなかった。そりゃそうだ、言うまでもないが弁当というのは冷えている。マグマ舌のぼくが好んで食べるはずがない。だから、いまも弁当が好きになったわけではないのだが、娘に持たせる弁当をこさえるついでに、ぼくも外出の予定があるときは自分の分を作っている。弁当は、ひとつ作るもふたつ作るも一緒だ。  たとえ冷え切った弁当でも、何度か食べているうちに、温度のことはあまり気にならなくなってきた。最初のうちは、コンビニで買った

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        • フード病
          65本
        • ゆりかごから酒場まで
          50本
        • 酒の顔
          30本
        • マニタ酒房
          50本
        • 酔ってるス
          50本

        記事

          63 機内ショック 飯をとりもどせ!!

           航空機はもう何度も乗りましたね(マイ・ペース『東京』のメロディ)。しかし、そのほとんどはLCC(ローコストキャリア)だったので機内食なんか出るはずもなく、また、FSC(フルサービスキャリア)で機内食が出たときは社員旅行で行くグアムだったので、選択の余地なく社員みんな同じものを食わされた。  何が言いたいかというと、ぼくは機内食提供時の有名なあのセリフ、『ポプテピピック』にも登場した「ビーフorチキン?」というクエスチョンを投げかけられたことがないのである。問われてみたいなー

          63 機内ショック 飯をとりもどせ!!

          62 豆が好き

          「豆」はみんな好きですよね!!!(大声で言うようなことじゃない)  もちろん、ぼくだって大好きだ。ちょっくら飲みたいけど、ちょうどいいつまみがナンニモないなあ、なんていうときに乾物入れを開けたりすると、じゃこピー作ろうとして買ったのを忘れていたバターピーナッツとか、春日井のグリーン豆の食べ残した袋とかが出てくる。そのときの「やった!」という気分。  喜びとしてはとても小さい。豆のひと粒と同等か、それよりも小さい。でも、豆はゾロゾロと集まってこそ「豆」なので、喜びの総量は大きく

          61 ロメスパの名店ジャポネを食べ尽くす

           初めてその存在を知ったのはいつだったか。SNSで友人の誰かが「ジャポネの大盛り、うまかったー!」とかなんとか、そんな感じのことをつぶやいていたのだと思う。そのときテキストと一緒に上がっていた写真には、安っぽい樹脂製の皿に盛られたスパゲッティが写っていた。なんだ、ラーメンじゃないのか。  具材は豚肉と椎茸と青菜(のちに小松菜と判明)と玉ねぎが確認でき、醤油で味付けされているので全体的に茶色い。そのため、見た目的にはスパゲッティというより焼きそばに近く、洋麺屋五右衛門にさえわ

          61 ロメスパの名店ジャポネを食べ尽くす

          60 熱いぜ、冷え冷えとんかつ!

           マグマ舌なぼくが例外的に好んで食べる冷えた料理。そのふたつめが「冷え冷えとんかつ」である。  とんかつ、わかりますよね?  獣の肉を適度な厚さにスライスし、卵液にくぐらせ、パン粉をまぶして油でカラリと揚げる。フランス語でコートレット、英語ならカットレット。それが訛ってカツレツ。おもに豚肉が使われるのでポーク・カツレツだったものが、日本語のトン(豚)に置き換わって「とんかつ」となった。日本における洋食の定番メニューと言えます。  みんな大好きとんかつ、もちろんぼくも大好き。洋

          60 熱いぜ、冷え冷えとんかつ!

          59 ポテトサラダの責任感

           マグマ舌ということは、冷たい料理が苦手。そのことはこれまでに何度も書いてきた。例外的にざるそばや冷やし中華なんかを好んで食べるということも書いてきた。  しかし、あとふたつ例外があるのを忘れていた。そのうちのひとつが「ポテトサラダ」である。酒場的略称で言うなら「ポテサラ」。  作り方は簡単。蒸(ふか)したジャガイモをマッシュして、塩胡椒して、刻んだ野菜類とマヨネーズと混ぜ合わせるだけ。  作る際のコツといえば、「ジャガイモは皮付きのまま茹でる(旨みを流出させないため)」と

          59 ポテトサラダの責任感

          58 私の愛さなかったスッパイ

           いよいよコイツの話をするときがやってきた。まだ夏が終わらぬうちに語っておかなければならないアイツのこと。年に数えるほどしか食べないソイツのことを、ぼくはココに書かねばならない。  指示代名詞の多いふわふわした文章をこれ以上続けるわけにもいかないので、はっきり書こう。コイツ、アイツ、ソイツとは「冷やし中華」のことである。  ご存知のように冷やし中華の二大特徴といえば「冷たい」と「酸っぱい」だ。これはどちらもぼくが忌み嫌ってきたもので、まったく食欲をそそらない。自分から進んで食

          58 私の愛さなかったスッパイ

          57 理想を求めて焼きそばロード

           麺類と呼ばれるものは、つけ麺を除いてだいたいみんな好きだ。マグマ舌なので熱い汁に浸った麺類が優先になるが、スパげッティも食べるし、ざるそばも食べる。夏は冷やしたぬきそばや、冷やし中華もよく食べる。  そして焼きそばも例外ではない。  とくに好きなのは、夏祭りの夜店でテキ屋のおっちゃんが作っているようなジャンク焼きそばだ。油をドバッと流した鉄板に少量の豚肉と適当に刻んだキャベツ。デカボトルのソースでビタビタに焼いて、青のりと紅生姜。揚げ玉まで乗っていたら贅沢の極み。そういうの

          57 理想を求めて焼きそばロード

          56 少食の呪い

           何が「食べ放題」だったら嬉しいだろうか、ということはときどき考えてみる。  ぼくの好物のひとつであるケンタッキーフライドチキンは2つで十分ですよだし、回転寿司はいつも4皿食べたら〆に鉄火巻きを頼む。ステーキは 150 グラムもあればもうたくさん。ラーメンでいちばん好きな永福町大勝軒なんて、デフォルトがすでに食べ放題と言っていいような分量だ。つまり、少食の人間にとって食べ放題なんてサービスは何ひとつ嬉しいことではないのだ。  そもそも食べ放題の店に行って「どれだけ食えば元が取

          56 少食の呪い

          55 負けたのは兆徳だけ

           昔から炒飯を作るのは好きだった。食べるのも嫌いではないけど、大好きというほどでもない(熱くないからね)。あくまでも、作ることが好きだった。フライパンに玉子とメシを入れ、チャカチャカ混ぜる。あの動作が、いかにも「料理してんなー」という感じがして好きなのだ。  最初は、何も考えずに家にあるテフロンのフライパンで作っていた。炊飯器の中に残りメシがあり、玉子が1個とネギさえあれば、最低限の炒飯が作れる手軽さがいい。さらにハムか、鮭か、しらすでもあれば小躍りしてしまう。味付けは塩と胡

          55 負けたのは兆徳だけ

          54 辛いものの話

          『からいはうまい』というのは椎名誠による辛いものエッセイ──本人曰く「アジア突撃極辛紀行」の書名だが、2001年に初版が出た際に書店で見かけて、なんともいいタイトルを付けたものだと感心した。  が、そのときは手に取っただけで購入はしなかったし、のちに文庫化されたときも読まなかった。なぜなら、辛いものがそこまで好きではないからだ。  ご存知のように、ぼくは熱い食べ物は大好きで、日夜、一度でも温度の高い料理(おもに麺類)を求めて街を徘徊している。  しかし、世の中の皆さんは、ぼく

          54 辛いものの話

          53 対馬のとんちゃん焼きを訪ねて(後編)

           対馬に着き、厳原の町をウロウロしていたときから、一軒の店が気になっていた。「どんぐり」という名の韓国家庭料理の店だ。  ドアには料理の写真がたくさん貼ってあり、店内を覗き込むことができない。おまけに各種の料理名と思しきハングル文字も書いてあって、一見さんには入りにくいオーラがビンビンに出ている。  だが、聞いた話では「対馬とんちゃん」は元々韓国から伝わった料理だという。だとするなら、この店こそ対馬とんちゃんを食べさせてくれるのではないか。そう思えてならない。  ここはひとつ

          53 対馬のとんちゃん焼きを訪ねて(後編)

          52 対馬のとんちゃん焼きを訪ねて(前編)

           2011年の夏、ぼくは博多港と釜山港のちょうど中程に浮かぶ「対馬」へ渡った。とあるゲーム開発の仕事で、対馬料理を取材するためだ。  博多港から九州郵船のジェットフォイルに乗って、対馬の厳原(いづはら)港へ。所要時間は2時間15分。ノートPCで映画でも見ていれば、エンドクレジットが始まる頃には着いてしまう感じの船旅である。  厳原は、対馬全体の下側3分の1くらいのところにある港町で、そこから歩いて行ける距離のホテルを予約しておいた。ホテルに着いて、さて、どうしたもんかと考える

          52 対馬のとんちゃん焼きを訪ねて(前編)