「ぼっち・ざ・ろっく!」が演奏表現を切り拓く!?〜マンドリンと日本のアニメーション、その意外な類似〜〈リミテッド〉な表現手法
マンドリンはイタリア生まれの楽器で、ピックで弦をはじいて演奏する撥弦楽器だ。
分類はギターと同じだが、形はギターのようにひょうたん型ではなく、イチジク型・アーモンド型と言われる。
https://www.soundhouse.co.jp/contents/staff-blog/index?post=784
日本では、特に高度経済成長期に多くの学校でマンドリン部やサークルが活発になった。今はだいぶ演奏者人口も減ってしまったが、世界の中ではいまだに奏者は多い方だとされる。
そのマンドリンの特徴の一つに、トレモロという奏法がある。
具体的には、弦をはじいたあとすぐにまたはじき、ピックを何往復もさせることで、擬似的に音を持続させる奏法だ。
これは、弦をはじいたあと、すぐに音が減衰してしまうマンドリンだからこそ発達したものだといえる。
バイオリンのように弓で弦をこする楽器、フルートのように息で楽器を振動させて音を出す楽器と違い、トレモロは厳密には音が持続しているわけではない。
ターーーーーーーーーっと切れ目なく音が出るのではなく、
ティリティリティリティリティリ…と音量の細かい山と谷が必ず発生する。
このトレモロ奏法と、日本のアニメーションの特徴に意外な類似点があるのではないか、そしてマンドリンは、そのアニメ手法から学べる点があるのではないかと思い、今回記事にしてみた。
要旨
・日本のアニメーションは、フルアニメーションに比べればなめらかではない、リミテッドアニメーションを基本としている。
・マンドリンのトレモロ奏法は、バイオリンのような持続音ではなく、擬似的な持続音である。
・両者は、リアルさやなめらかさへの完全な到達が制限されている手法であるという点で似ている。
・制限された手法を鑑賞する際は、想像による補完を必要とする。そしてその鑑賞法は、日本人の性質と相性が良かった。
・しかし、日本人の主流の鑑賞態度は近年変化してきているから、制限された手法がいつまでも相性が良いかどうかはわからない。
・その状況下でも、制限された手法で新たな試みをしている日本のアニメーションから、マンドリンのトレモロは学べる点がある。
「鉄腕アトム」の省力アニメーション
日本のアニメーションの歴史は古いが、とりあえずは日本初の連続TVアニメである、「鉄腕アトム(1963)」以降の流れを見ていきたいと思う。
ここから先は
よろしければサポートをお願いいたします!