戦力外宣告

会社に入ってから人事に興味があった。

それは人事という仕事に、ではなく、俗にいう人事ネタというものに。

報復人事や縁故採用。漫画で見るならともかく、実際に職場で起きるとなると、それは面白いものだ。

でも、ああいう類の人事ネタは日常茶飯事ではないと思う。一般的にもっとあるのは、戦力外宣告、だ。
上層部から能力不足と判断され、中心ではない部署に配属される、というやつだ。欧米のようにクビになることがほとんどない日本では、仕事の保証という安心感がある一方で、戦力外にされたら、職場が居づらくなる、ということがある。

そう考えると、クビは会社にも、本人にも、良いことかもしれない。

他人事で面白がっていた人事は、ついに自分事になってしまった。

まだ確定ではないが、社名変更に伴って新しく作られた名刺に違う配属先が書かれていた。もちろん、上司から何も聞かされていない。

一瞬目を疑ったが、よく考えると、入社してここ1年のパフォーマンスは、戦力外を告げられても不思議ではないものだ。それを一番分かっているのは私自身だ。だから、会社の判断に異論を唱える気はない。当然の結果だ。

しかし、そんなことを自覚しながらも、今まで誤魔化してきたつもりは今度バレバレになると考えると恥ずかしくてたまらない。どん底に陥っちゃったなぁ、と。そのことだけが脳裏をよぎった。

文章からも私の仕事の態度が読み取れるだろう。それに見合った人事判断がされたのは仕方ないことだ。

だけど、個人的に不思議に思うのは、ここに至るまで度重なる失敗もあったし、一年間やっても全くと言って良いほど仕事に身が入らない。それなのに辞めようとはしない。それが不思議でならない。

好きでもない仕事を落ち込んでまで続けようとする自分。なんの理屈か分からないけど、毎日辞めたいと思いながらもいざと転職活動しようかというときに尻込みしてしまう。

今回は自分を見つめ直して、新しい方向に一歩踏み出すきっかけになれれば。そんな希望を持ちながら肩から重い荷物が下ろされたような気がする。

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