氷上に刻む旋律は、愛と勇気と志
どうしてこの人はこんなに強く美しいのだろう。帰りの新幹線でそう考えた時、頭をよぎったのは昨年末の全日本選手権後のツイートだった。
この気持ちをあの日からずっと心に持ち続いているんだと思う。
これから綴るのは、そんなことを思い出させた2日間の記憶です。
2022年7月1日。2022-23のスケートシーズンはじまりの新年三が日、フィギュア王国・愛知ではローカル大会がありました。私にとって念願のローカル大会観戦デビュー。このような状況でも工夫と努力で観客を受け入れて大会を開催してくださった運営さんにまず感謝申し上げます。
最高気温を更新し続ける毎日で、この日もニュースでは40度というワードが飛び交い、ちょっとびくびくしながら名古屋入り。冷え症で夏場のアイスショーでもレッグウォーマー必須の私が、この日は半袖TシャツでOK。手持ち扇風機や扇子で涼をとる人が続出するほど2階の観客席は熱気で充満していました。
推しの氷上でのスケートを見るのは「普通のカレンダー」新年1月4日に行われた名古屋フィギュアスケートフェスティバル以来、半年ぶり。
あの日も新年早々、大吉お年玉神演技だったので、スケート新年もそんないいスタートになるといいなと心の中で手を合わせながら出番を待っていると、隣に座っていらした紳士に声をかけられました。
「ヤマモトソウタさんを見に来られたのですか?」
(どうしてわかったのだー!)
粗相があってはいけないと、まずは首を縦に振る。
「スケートが滑らかでいいですよね」
粗相があってはいけないと、全力で首を縦に振る。
鞄からバナーを取り出し、ひざ上スタンバイしたらとどめのひと言
「私にかまわずどうぞ広げてくださいね」
(紳士ー!名古屋のフィギュアファン紳士ー!)
きっとこういう人たちが愛知のフィギュアを見守り応援し続けていらっしゃるのですね。他県から来た新米にも親切にしてくださり、本当にありがたかったです。居心地よく過ごせました。
こちらの紳士には試合後、バナーの作り方を聞かれたので、新米ながら自分のやり方や知っていることを全部お話ししてきました。紳士のバナーデビューを密かに熱烈に応援しております。
さて初日、ちょっとしたハプニング?があり……選手権男子のエントリーは1名なので、どうやらひとつ前のジュニア男子後半組と一緒に6分間練習を行うはずが時間になっても現れず、満知子先生が待っていたジュニア選手たちに「ごめんねぇ~~~」と謝る場面を目撃しました。(満知子先生に謝らせるとはっ!)
(そういえば朝の公式練習は選手権女子の前半組と一緒だった。なぜ6分間練習に遅れたかは謎)
そんなわけで本番直前6分間練習は草太選手ひとりの滑走に。後でツイート見ると「SOTA ON ICE」なるワードまで爆誕してましたが、ハプニングがもたらした貴重な時間でした。ダイ○ンに勝てる、ただ唯一の空気清浄機感。あれだけ暑かった観客席に清涼をもたらすスケーティング。贅沢の極みでした(ちなみにフリーの日はジュニア男子後半と一緒に6分間練習やりました)。
SPは「自分の人生が詰め込まれたようなプログラム(2021NHK杯実況より)」という昨シーズンから継続の「Yesterday」。
ピアノの和音が時計の秒針のように彼のスケート人生を刻み始め……たかと思ったら、感慨を吹き飛ばす勢いで先生たちのジャンプ前の気合いの掛け声(叫び声)!これがMichael Boltonの太いボーカルに負けない強さと熱さで、ここはカーネギーホールか!というくらい場内に響き渡って、先生たちも一緒に滑ってるんだな、戦ってるんだなと。あの掛け声はなんていうか……獅子舞に頭を噛んでもらったような気分になれますね(笑)
そんな先生たちの気合いも乗って冒頭の4T3Tが綺麗に決まると、観客ひとりひとりなんとか最小限に抑えて漏れ出た歓声と拍手が合わさって、さらに一体感が高まって。4Sの転倒があったけど、それを忘れてしまう後半のステップ。ルール変更で新しくなったスピン。継続だけど新しい「Yesterday」は、力強さを増して進化していました。光と影、陽と陰を柔と剛で魅せる演技でした!
観客席に手を振って、何度か首をかしげながら戻ってくると、先生たちと大爆笑。大爆笑と書きたくなるくらいの笑顔炸裂。充実してるんやなぁと思わせてくれるいい笑顔でした。
いやホンマに暑かった初日!防寒対策より熱中症対策必須な一日でした。取材おつかれさまでした!
1日空いてフリー。本邦初公開のフリー。アンリムのメンバーシップ交流会で音なしの練習動画と仮縫いの衣装を見せてもらったけど、「整った状態」で見るのははじめて。本当に本当に楽しみにしていました。
高貴な紫色の衣装は仮縫いの時にはなかったストーンが上品に散りばめられていて、背中の美しさをさらに引き立てていました。色も形も全てがぴったりしっくり似合い過ぎる……。
たまたま見つけたページやけど、衣装の色、解釈の一致がすごい。イメージどんぴしゃ、参りました。
スタートポジションに立ち、音楽が鳴り始めると一瞬にしてリンクを、会場を支配するような空気感に。
ボーカルがないクラシック曲だからというわけではないだろうけど、この日の先生たちの掛け声は初日に比べて控えめだったような。でも冒頭の美4Sに私は喉の奥で「んしゃああ」とエア絶叫。表の声には出てなかったはず。
あれ普通のラフマニノフじゃないな?アレンジ入ってる?と気付いたのも束の間、途中から音楽の記憶が飛んでしまい、今も何度思い出そうしても、エレキギターの音がした?という記憶はあれど、そこから先のメロディーはスケートがスーッと流れる音に置き変わっている。
スケートに集中していたと言いたいけど、単に私のポンコツ記憶力で吹っ飛んでしまっただけな気がする。こんな大事なところで発動するな私のポンコツ。脳のメモリー容量空けといてよ。
でも初演の記憶がそれならそれで、今の私の記憶を残しておこう。次に見た時はまた違う感覚が流れ込んでくるだろうから。
私の世界から雑音が、けたたましいノイズが消え、ただ風がふっと流れる感触だけが残り、スケートの軌跡が一筆書きの五線譜を記していく……リンクの東西南北全てをカバーしながら。そのスケーティング超高級A5ランク。重厚なのに重過ぎない。むしろジャンプやスピンの鋭い回転には優雅さすら感じる。圧倒的な気品と風格漂う滑り。衣装の印象も手伝って、王子様というより皇帝。美しいと強いのグラフが枠を飛び出して計測不能。
音の記憶がすっぽり抜け落ちてるのに脳裏に思い出されるのは、音楽を奏でる緩急のついた滑らかなスケーティングと流麗なジャンプ、美しい姿勢のスピン……。音の記憶がないのに旋律が見える。
彼が音楽に寄り添うのか、音楽が彼に溶け込むのか、境目がわからないくらいそこに自然と在る。ずっと前から一緒だったように、初披露というのが信じられないくらい一切の迷いない滑らかさだった。あっという間に最後のポーズだった。
初日に続いて観客総立ち。大げさでもなんでもなくて、衝撃と余韻とで拍手が鳴りやまなかった。マンガで使われる「ザワザワ」という効果音が景色として見えた。あの鳴りやまない拍手は演技中の4分間だけではなく、この半年間のがんばりにも贈られたものだったと私は思う。
ちなみに謎の音源はこれではないかとフォロワーさんのツイートで教えてもらえたので、これを書ききったらご褒美として聞かせていただきます。
ざわめきの中、点数がコールされたら聞き取ってツイートしようとしたけど、「ひゃくはちじゅう」まで聞こえた瞬間に今日一の歓声というか悲鳴でアナウンスがかき消されて聞き取れず、私の手も震えてしまってなんにせよ打ち込めなかった(国内大会だとかルール改正があったとかはとりあえず置いといて)そんな草太選手過去最高得点のフリージャッジシートはこちらです。
あの拍手と歓声、どんな風に聴こえたかな……。
明子さん!素敵なプログラムをありがとうございます!心の中でお中元贈らせていただきますっ!
「ラフマニノフー🍀😭」が完全にこちら側のテンションでじわじわくる(いや気持ちわかるよ、そうやよね)。私も顔を覆うところ好っきゃで!
メ~テレさんも取材ありがとうございます。6日に放送されたそうですが、局の公式YouTubeが動くことを関西から圧をかけ……祈っています……!
ローカル大会でどこまで記事や写真・映像が出てくるのか不安で心細かったのですが、坂上記者が取材に来ているとわかった時の安心感たるや!そう思った草民は私だけではないはずです。
それにしても自分に合う曲を見つけてくる、察知する嗅覚も本当にすごいなぁと思います。曲選びの経緯を知れてうれしかったです。取材ありがとうございました!
試合やこうしたトレーニングでも、心技体が整っている様子が伝わってきて、心の底からうれしいです。ジャッジシートにも表れてたけど、伸びしろしかない!
新年早々大お年玉大吉演技をありがとう!
フリー演技後、リンクサイドで満知子先生がハイタッチスタンバイで両手を手すりから出して待っていて、草太選手とそっと手を合わせて握った瞬間にこみあげてくるものがあったけどなんとか耐えた。まだ早い、12月までとっておくんだ。
まさにその言葉を体現したシーズン初戦でした。8月のげんさんサマーカップが楽しみです!会場かオンラインかどこで見るのかまだわからないけど、次は音楽の記憶もしっかり刻めるよう、ポンコツ脳のメモリー容量を空けておきます(笑)
来週13日(水)20時から草太選手のアンリムメンバーシップのオンライン交流会で、この試合の演技動画(音なし)が見られるとお知らせがありました。
会場に足を運べなかったファンにも、あの熱気を共有できる機会を用意してくれるのは、めちゃくちゃありがたいです。しかも試合の翌週に!
オンライン交流会に参加できるのはプレミアム(有料)会員のみですが、応援のギフティングのお返しをこんなにいただいてしまっていいの?というくらい、これまでの交流会はスケートの話はもちろん、趣味や日常の話題などファンからの幅広い質問に答えてくれる、実はおしゃべり上手な草太選手の一面が垣間見えるとても濃い時間です。「手厚い」という言葉がこれほどしっくりくるサービス・サポートもなかなかないと思います。
実は試合翌日にメンバーシップ限定ページに表彰式の動画をあげてくださってるんです。もうメンバーシップ至れり尽くせりです。こちらはスタンダード(無料)会員でも見られます。高貴な衣装を纏い、美姿勢で表彰台に立つ草太選手をぜひ目撃してください!
生きる情熱をくれるキミのスケートと向き合うたびに、心の背筋が伸びる想いがします。応援できることが幸せです。ファンからの愛をスケートで返し、世界と戦う勇気を込めた構成、スケートをはじめた時からゆるぎない志……強く美しく成長を続ける草太選手のスケートが大好きです。