取材でとても嬉しかったこと
今日はある職人さんの取材だった。とっても楽しい取材だっただけでなく、たくさん褒めていただいて嬉しかったので、ここに書いておく。
私は人と話すのが好きなくせに人見知りなので、取材前はいつもお腹が痛くなるくらい緊張する。今日も工房のインターホンを押すときは、自分の心臓の音が聞こえるくらいドキドキしていた。
ドアの向こうに立っていたのは小柄な女性で、年は私と同じくらい。だけど、職人さんだなあと思うのは、人見知りというか初対面の人に対する壁のようなものを感じたからだ。
「職人さんって、けっこう出し惜しみっていうか、取材に対して身構えちゃうところがあると思うんですよね。技術が盗まれるんじゃないかと思う人もいるし、思っていたことと違うように書かれてしまったり、嫌な思いをしてきた人もいる。だから『本当に大事なとこ』は話さないでおこうって思ってしまう人もいると思う」
1時間半くらい取材させていただいて、すっかり仲良くなったその職人さんは、ランチに向かう途中の軽トラのなかで、そんなふうに教えてくれた。
私はメディアで事前に求められない限り、ちゃんとした質問項目は用意しない。下調べだけはめちゃめちゃして(そうすると緊張が和らぐので…)B5のノートに情報をびっしり書いて、気になる!という部分に赤丸をつけて、あとはお喋りしながら質問していくのだ。
私の師匠は自身の取材スタイルを「飲み屋スタイル」と表現していたけれど、私は初めて教わった取材が「飲み屋スタイル」だったのでひな鳥のようにそのやり方に習っているのかもしれない。お喋りスタイル。
気になる!って赤丸をつけたところはだいたい、他の人が書いた記事やご本人のブログを読んで「なんでだろ?」と思ったところ。それを聞くと、職人さんは「えーと、どうだったけなあ…」と資料をたくさん出してきてくれたり、うーんと記憶を辿りながらお喋りしてくれた。
そして要所要所で「いやあ、こんなこと、誰にも話したことないですよ」とか「こんなふうに言語化したことなかったので、しっくり来ました」とか言ってくれ、そのたびに、職人さんとの心の距離が縮まっていくのを感じた。
私は職人ではないし、専門性もないし、どんな業界でも素人なのでわからないことだらけ。最初の頃は、それが恥ずかしくて申し訳なかった。ちょっと知ったかぶりもしちゃってたかもしれない。
でも最近は調べるだけ調べたら、あとは「それってどういうことなんですか?」と聞くようになった。そうすると職人さんも「あ、そうか、そこわかんないか」みたいな感じで丁寧に教えてくれ、そこからおもしろい話が聞けたりもする。ちょっと開き直って、素人の私だからこそ、職人さんの話が新鮮だし、感動するし、聞けることがあるんじゃないかなんて思ったり。
「この仕事、とっても向いてますよ。取材中、嫌な気持ちになったりザラッとした感覚がまったくなかったです。普通に楽しくお喋りしちゃって」
向いてないのかなあ、とたびたび落ち込む私は、取材先のやさしい方々や師匠や上司や、たくさんの人のこういうやさしい言葉を食料にしながら生きながらえている。
今日聞いたお話、ちゃんと記事にしますからね!
そう言ったら
「まったく心配してません。大船に乗った気持ちで待っています」
と言ってくださった。
ああ、私はこういうお人柄まで伝えたい。伝えられるだろうか。私の言葉なんかで、この人が私にだけ教えてくれた人生の一部分、ちゃんと伝わるだろうか。
不安になっている暇はない。職人さんが大船に乗って待っていてくれているのだ。書くぞー!
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